作家の椎名誠が、全国でキャンプをしながら釣りをした時のオモシロエピソードをまとめた「わしらは怪しい雑魚釣り隊」という本があります。その中で、「西川屋のホットサンド」なるものが出てくるのですが、それをキャンプの朝食に、椎名誠がウマいウマいと食べるくだりが出てきます。「西川屋のホットサンド」とは、雑魚釣り隊メンバーの西川良が作るホットサンドのことなのですが、肝心のホットサンドの中身について殆ど言及が無いので、一体何を挟んでいるのかわかりません(笑)。
西川屋はさておき、ホットサンドはお手軽でボリュームもあるので、キャンプの朝食にピッタリのメニューです。バーナーや焚火でトーストをきれいに焼くのは至難ですが、ホットサンドであれば、缶詰や余った野菜などをパンに適当に挟んで、ホットサンドメーカーで焼くだけなので、失敗もなく美味しいサンドを作ることができます。また、ホットサンドメーカーは、クッカーとしても優秀で、様々なアレンジレシピがあり、ホットサンド以外も楽しめます。
そんなことで、ホットサンドメーカーと言っても、色々と個性のある製品が多いので、種類や使い勝手について詳細に解説していきたいと思います。
これだけは覚えておきたいホットサンドメーカーの選び方
一言でホットサンドメーカーと言っても、色々なバリエーションがあります。
基本は、6~8枚切りの食パン2枚で具材を挟んで作るのですが、形状によって具材の量や、仕上がりに差が出てきます。
また、一部には、耳を切り落とさないと入らないタイプの物もあります。耳まで食べたいか、あえて耳を切り落として、パンをきれいに圧着して食べたいかなど、好みが分かれる所です。
素材は、アルミが主流ですが、一部には鉄の製品もあります。後ほど詳しく説明しますが、アルミの方が熱伝導率に優れるため、全体をムラなく焼きやすいです。一方鉄は、蓄熱性が高いため、予熱さえしっかりしておけば、よりカリッと焼き上げることができます。
ホットサンドメーカーによっては、本体が分離できないものがあります。分離できる方が、クッカーとして使いやすく、調理の幅が広がります。また、洗ったり乾かしたりする時も、分離できた方が便利です。
今回ご紹介しているホットサンドメーカーは、全て分離できるタイプですが、他の製品を選ぶ時は、分離できるかどうかも注目してみてください。
あと、IHで使える物も一部にはあるので、ご家庭でIHを使いたい場合は考慮してみてください。
ホットサンドメーカーの種類
ホットサンドメーカーは、大きく分けて、スタンダード(シングル)、分割型(ダブル)、2枚焼き、1枚焼きの4種類があります。
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左から、シングル、ダブル、2枚焼。 |
シングルは、普通に2枚の食パンを挟んで焼くタイプです。
ダブルは、本体に間仕切りが設けられており、圧着して焼く際に切れ目が入るタイプです。
2枚焼きは、ホットサンドを2個同時に焼けるように、本体が横長に大きく作られているタイプです。
1枚焼きは、最近登場したモデルで、食パン1枚を折り畳んで焼きます。
では、各タイプの特徴について解説します。
スタンダード(シングル)
シングルは、四角い形で深さに余裕があり、大きめの具材でも入れられる物が多いです。
また、耳をしっかり圧着できるように、わざと周囲の縁の部分をプレスするような構造になっているものもあります。
あと、スキレットやグリルパンの代わりにもなるなど、調理器具としての幅が広いのが特徴です。
分割型(ダブル)
本体に間仕切りが設けられており、プレスすることで2つに分割できるホットサンドメーカーです。一般的に、容量がスタンダードな物より小さいので、あまり多くの具材は入りませんが、圧力がかかりやすいので、全体をカリッと焼くことができる傾向にあります。
分割型と言っても、押さえつけるだけなので、完全に分離するには、焼き上がってからナイフで切る必要があります。
形状から、調理器具としての使い勝手は、スタンダード(シングル)に劣ります。
2枚焼き
ホットサンドを同時に2つ作れる大型のタイプです。6枚切り4枚を使って一気に作れるなど、特に食べ盛りのお子さんのいるファミリーなら重宝すること間違ありません。また、大型のため、グリルパンとしても使えるので、肉などを焼くのにも向いています。
1枚焼き
近年登場したのが、1枚のパンを折り畳んで、間に具材を挟み込んで焼けるタイプです。通常のホットサンドメーカーでは、8枚切りでも2枚使うとそれなりのボリュームになりますが、これなら軽く朝食を食べるのに向いているということで、ソロキャンパーを中心に広がっています。
耳の圧着、クッカーとして使う、どちらを選ぶ?
ホットサンドメーカーは、調理器具(クッカー)としても優秀で、特に、ソロキャンプでは、グリルパンとしても丁度良いサイズですから、これとメスティンだけというミニマルなスタイルにも向いています。
最近は、様々なレシピがネットやSNSで紹介されていますので、益々使い勝手が上がっています。
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ソーセージと野菜のカレー炒め焼き(玉子入り) |
単にソーセージや餃子を焼くだけでなく、玉子や野菜などを加えてアレンジしたり、お好み焼きやグラタンなんかも作れちゃいます。
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ホットサンドメーカーで作ったモダン焼き。 ひっくり返すのが簡単なので、フライパンより作りやすい。 |
このように、クッカーとしても優秀なホットサンドメーカーですが、クッカーとしての使い勝手を考えると、いくつかポイントがあります。
- 耳を圧着できるタイプは、クッカーとしては使い難い
- ロゴやイラストが入っているタイプは、食材が引っかかるので、シンプルなデザインの方が良い
- 分離できるタイプでないと、グリルパンとして使えない
ホットサンドに拘るなら、耳が圧着できてカリカリに仕上がるタイプの方が良いですが、クッカーとしても使いたいなら、耳の圧着に拘らない方が良いです。
素材は、鉄とアルミニウムの2種類
素材は、アルミが主流ですが、一部には鉄の製品もあります。鉄は、アルミより熱伝導率に劣りますが、蓄熱性が高いため、しっかりとプレヒート(予熱)しておけば、短時間でカリカリのホットサンドが出来上がります。
逆に、プレヒートを怠ると、真ん中だけ焦げてしまいますので、注意が必要です。
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左がアルミ、右が鉄製。プレヒート無しで同時に焼くと、鉄の方は真ん中が焦げる。 |
プレヒートは、各製品にもよりますが、だいたい片面1分づつは必要です。プレヒートのメリットとしては、綺麗に焼ける以外に、パンを挟む前にバターを溶かして全体によく馴染ませやすいということが挙げられますが、同時に、パンや具材を挟む時に火傷に注意しなければならないというデメリットも生じます。
一方、アルミ製の場合は、熱伝導率が高いため、プレヒート無しでも中火で綺麗に焼き上げることができます。但し、火が強すぎると焦げますし、風が強いと焼きムラができやすいなど、鉄に劣る面もあります。
おすすめのホットサンドメーカー19選
コールマン(Coleman) ホットサンドイッチクッカー
斜めに分割するタイプのホットサンドメーカー。分割型にしては、深さに余裕があるので、耳までカリッといくタイプではない。
焼き上がりは、コールマンのランタンマークが入ってキャンプ気分を盛り上げてくれる。
今回紹介する中で、唯一ハンドルが分解可能で、コンパクトに収納できるのも大きな特徴。
チャムス(CHUMS) ホットサンドウィッチ クッカー
チャムスのスタンダードタイプのホットサンドクッカー。深さも標準的で使いやすい。
焼き上がりは、チャムスのロゴと、ブービーバードがキレイに入る。
値段が少し高めに感じるが、日本製のため品質は折り紙付き。
チャムス(CHUMS) ダブル ホットサンドウィッチ クッカー
上記のダブル版。中央の溝でしっかり2分割してくれるので、切り離しても、具材がこぼれにくい。
スタンダードと両方買って、挟みたい具材に合わせて使い分けるのもおすすめ。
こちらも日本製。
キャプテンスタッグ キャストアルミホットサンドトースター
様々なキャンプ用品をリーズナブルに提供しているキャプテンスタッグ。ホットサンドメーカーも、シンプルながら、基本を押さえた造りに仕上がっている。本体の結合部分が、ピン状のため、使用中に外れることがなく、使いやすいのが特徴。
焼き面は、無地のノーマル以外に、斜めにラインの入った「ウェーブ」もリリースされている。
TSBBQ ホットサンドメーカー
新潟県燕三条の杉山金属が製造しているホットサンドメーカー。
TSBBQは、Tsubame Sanjyou BBQの頭文字からきている。
特徴は、具材の入る窪みが食パンより一回り小さく作られている点。薄くなった縁の部分で、パンの耳の部分をしっかりとプレスできるので、ぴっちり具材を閉じ込めることができ、耳までカリカリに仕上がる。
ベルモント ホットサンドメーカー
近年、ソロ向け焚火台「TABI」で人気を博しているベルモント。TSBBQと同様、耳の部分をしっかりプレスできるタイプと、フラットなタイプの2種類を販売している。
耳カリを優先するか、クッカーとしての使い勝手を優先するかが選択のポイント。
何れも、コミカルなロゴ入りで、見た目も楽しめる。
ハイマウント ホットサンドメーカーシングルIH
今回紹介する中で、唯一IH対応のホットサンドメーカー。
ハイマウントのホットサンドメーカーは、2022年モデルから本体が分離できるようになり、IHにも対応した。
アイリスオーヤマ 具だくさんホットサンドメーカー
近年、ジェネリック家電などで、注目されているアイリスオーヤマのホットサンドメーカー。
TSBBQのように、パンの耳全体を押しつぶすのではなく、耳の周囲に沿って押さえつけて閉じる構造。本体も深さ4cmと少し深めになっているため、具材を豊富に挟むことができる。
ダブルもリリースされているが、両方買っても5,000円を切る激安ぶりは流石。
テンマクデザイン マルチホットサンドメーカーⅡ
アウトドアショップWILD-1のオリジナルブランド「テンマクデザイン」のホットサンドメーカー。
考案者の堀田貴之(ほったたかゆき)さんの拘りで、ホットサンドだけでなく、クッカーとしても使いたいということから、深さが18mmと28mmの2種類のクッカーがセットになっている。
実は、フタと、クッカーという他には無い構造によって、通常のホットサンドも作りやすくなっている。
ホットサンドメーカーには珍しく、収納袋も付いており、2011年モデルからハンドルが木製に変わり、「Ⅱ」となった。
SOTO ミニマルホットサンドメーカー ST-952
ガスバーナーで有名なSOTOから、2022年に満を持して発売されたホットサンドメーカー。
独自のハンドルデザインと、折り畳み機構により、とてもコンパクトに収納可能。
本体はアルミダイキャスト製で、フッ素樹脂コーティングもされている。当然、本体は分離可能で、クッカーとしても活躍するなど、スキが無い製品に仕上げられている。
ホットサンドメーカーとしては、本体周囲が浅くなっており、耳を圧着して焼くタイプ。
及源(OIGEN) 南部鉄ホットサンドメーカー
岩手県にある、嘉永5年創業の約160年の歴史を持つ南部鉄器メーカーが作ったホットサンドメーカー。看板に違わず高品質な鋳鉄製で、カリッと全体が焼き上がったホットサンドには感動すら覚える。
耳ありでも焼けるが、縁をきれいに密着するためには、耳を取る方がベター。
最初にシーズニングが必要だが、使い込むことによって味が出てくるのも楽しみの一つ。
欠点は、1.5kgと、ホットサンドメーカーとしてはかなり重いこと。
ダブル以外に、シングルの「ホットサンドクッカー」もある。
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シングル、ダブル共にこんがり焼き上げることができる。 |
ペトロマックス(PETROMAX) サンドイッチアイアン
ケロシンランタンで有名なペトロマックスのホットサンドメーカー。焚火での使用を前提に設計されているため、柄が長いのが特徴。流石に長すぎたのか、2021年モデルからは、全長が71.5cmから49cmに縮小されている。もちろん鋳鉄製で、焚火に突っ込んでカリッと焼き上げることができる。
スタンダードなタイプで、大きさも少し余裕があるので、具材もたっぷり入る。
耳まですっぽり入るタイプなので、耳の圧着はできない。
本体は分離可能だが、柄は分解できない。
コフラン A&F ホットサンドクッカー
海外のアウトドア製品を輸入・販売しているA&Fが、コフランに特注で製造を依頼した逸品。
海外に比べて、日本の一般的な食パンは、一回り大きいため、日本サイズに合わせてある。
鋳鉄製のため、カリッと仕上げることができ、値段が手ごろなのも魅力。
4w1h ホットサンドソロ
4w1hは、新潟県燕三条発のキッチンブランド。
ソロ用ということで、1枚の食パンを2つ折りにしてプレスする珍しい構造。
耳はしっかりプレスされ、カリカリに焼ける。
ホットサンドというより、ラップドサンド風なため、6~8枚切りが向いている。
2022年モデルから、本体が分離できるようになった。
※お買い求めに当たっては、Amazon・楽天等では正規販売されておらず、定価以上で販売されていることが多いため、4w1hのサイトで販売店等を確認してください。
https://4w1h.jp/store/
ラヴァ(LAVA) ホットサンド トースター
2枚並べて焼ける、鋳鉄製のホットサンドメーカー。鋳鉄製ではあるが、ホーロー加工が施されているため、汚れが付き難くシーズニングも不要。
LAVAは、トルコの鋳物メーカーで、日本ではあまり知られていないが、世界100か国以上に鋳物やホーローの製品を輸出している。
縁の圧着はできないが、2枚同時に焼ける大きさが魅力。
フランスパンを使って、キューバンサンドも作れる。
勿論本体は分離可能で、グリルパンとしても重宝する。
キャプテンスタッグ キャストアルミ ダブルサンドトースター
前出のキャストアルミホットサンドトースターを、2枚並べて焼けるように大型化した製品。
縦に焼き目が入り、キューバンサンドも作れる。LAVAと同様、本格的なグリルパンとしても使え、ステーキを焼くことも可能。
ハイマウント キューバサンドメーカーIH
ホットサンドメーカーシングルIHと同様、2022年の新作モデル。
こちらもIHに対応しつつ、2枚焼ができる。
また、シングルと違って斜めにラインが入っており、グリルパンとしても使いやすくなっている。
ダイソー ホットサンドメーカー
100円ショップのダイソーで販売されているホットサンドメーカー。
価格は1,100円(税込)と100円ショップとしては高めだが、他の製品と比べると半額以下の価格。
素材はアルミで、フッ素樹脂加工が施されている。
本体は、以前は以前は分離できなかったが、現在販売されている物は分離可能となっており、益々アウトドアブランドとの差が無くなってきた。
ダイソー 1枚焼き用ホットサンドメーカー
2023年に追加された、ダイソーの1枚焼きバージョン。
作りも、フッ素樹脂加工や本体の分離など、基本的な点が押さえられているので、他のメーカーの物と比べて遜色は無い。
こちらも、価格は1,100円(税込)と、リーズナブル。
ホットサンドメーカーで作る焼きおにぎり
私が、ホットサンド以外で是非おすすめしたいのが、焼きおにぎりです。
作り方は簡単。コンビニで売っているおにぎりを焼くだけです。ポイントは、のりを付けずにおにぎりだけ取り出して焼き上げることです。のりは、お好みで食べる直前に巻いてください。
キャンプに行く日の朝御飯は、コンビニのおにぎりやパンで済ませている方も多いと思います。我が家も、毎回コンビニでおにぎりを買うのですが、よく余らせてしまうことがありました。おにぎりは常温ではあまり持たないので、無理に食べたり、勿体ないとは思いながら捨てることもありました。
でも、このホットサンドメーカーのおかげで、余ったおにぎりはクーラーボックスに入れておき、お腹が空いたら焼きおにぎりにして食べることで、美味しく無駄なく食べられるようになりました。
まとめ
縁を完全に圧着して、耳までカリカリに焼きたいのであれば、TSBBQ、ベルモント、SOTO、OIGENのシングルモデルになります。
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OIGENホットサンドクッカーで作ったホットサンド。耳の部分がしっかり圧着されている。 |
コスパで選ぶのであれば、アイリスオーヤマがおススメです。単に安いだけでなく、耳の周囲を圧着できるため、中身がこぼれず食べやすいなど、機能的にもしっかりしています。2021年6月にはダブルも追加されましたので、両方買って使い分けるのもアリです。
コスパと言う点では、ダイソーも負けていません(と言うか勝っている?)。細かい部分の作りは値段相応ですが、実用面では問題ありません。あえて難点を上げれば、コーティングの強度でしょうか。1年程使用していますが、若干コーティングに剥げが見られます。同時期から使い出したテンマクデザインには、コーティング剥がれは見られませんので、ダイソーの方が耐久面では劣ります。尤も、値段が6倍以上違いますから、最早比べるのもどうかと思うぐらいです。
焚火で楽しむのであれば、ペトロマックスかOIGENがおすすめです。どちらも柄が長く、焚火でも使いやすいです。
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OIGENのホットサンドメーカー。 |
特にOIGENは、焚火台周りに吊るしておけば、映えもバッチリで、テンションが上がります(笑)
調理器具として見た場合は、テンマクデザインが秀逸です。
深さの異なるクッカー本体が2つセットになっており、形状も、クッカーとフタというように非対称となっているため、よりクッカーとして使いやすくなっています。
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深底のクッカーなら玉子焼きも焼ける。 |
また、クッカーが2つあることで、ホットサンドとベーコンエッグなど、2種類の料理が同時に調理可能です。特にソロであれば、スキレットやフライパン代わりにもなるため、これ一つで完結することもできます。
調理器具として考えると、LAVAも優秀です。
ホットサンドが2枚同時に焼けるだけのサイズがあり、鋳鉄製ですからグリルパンやスキレットの代わりとしても使えます。
焼き面には溝が入っているので、肉などを焼いたときに余分な脂が落とせ、きれいな縞の焼き目が入るので、見た目にもおいしそうに仕上がります。
ホットサンドメーカーは、それぞれに個性があるので、いくつか使ってみることをおすすめします。
特に、ファミリーキャンプでは、2~3個持っていれば、同時に調理できて便利ですから、複数あっても無駄にはなりません。
最後に、私が所有しているホットサンドメーカーについてレビューしていますので、参考にしていただければ幸いです。
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