キャンプの焚火準備に欠かせない道具の一つが、斧です。
何故、キャンプで斧がおすすめかということについては、こちらをご覧いただくとして、今回は、斧の研ぎ方について解説したいと思います。
斧も刃物ですから、切れ味が落ちれば研ぐ必要があります。キャンプで使用する斧の主目的は、薪を小割にすることですから、ナイフのような切れ味は必要ありませんが、鋭いエッジが付いていると、薪に対する食い込みが良く、効率よく割ることができます。
また、鋭い刃付けを行っている斧であれば、ナイフ代わりにフェザースティックを作ることも可能で、ブッシュクラフト的な遊びの幅が広がります。
斧を研ぐと言うと、難しいように感じるかも知れませんが、ナイフを研ぐよりも遥かに簡単です。斧は、ナイフほどはエッジ角やブレード面を気にする必要が無く、アバウトな研ぎ方でも実用上は問題無いからです。
用意する物
砥石
斧も刃物ですから、基本的には砥石で研ぎます。砥石は、斧専用のディスクストーンが市販されていますが、包丁やナイフを研ぐ普通の砥石でも充分研ぐことができます。
砥石の番手は、800番ぐらいの中砥がおすすめです。シャプトンの刃の黒幕であれば、オレンジ(1000)が良いでしょう。
鉄工用ヤスリ
斧は、ナイフよりハードに使用することが多いため、酷い刃こぼれ(チップ)が起こることも多々あります。キャンプ場で売っている薪は、針金で括っていることが多く、私はいつも斧で断ち切っていますから、尚更です。
こういったチップは、砥石で整えるのはタイヘンなので、鉄鋼用ヤスリを使うのがベターです。
耐水サンドペーパー
耐水サンドペーパーは、斧のブレード面に溜まった木くずやヤニ(樹液)を落とすのに使います。番手は1500番ぐらいが綺麗に仕上げることができます。
また、ナイフ並みの切れ味に仕上げたいときは、2000番以上を使用して仕上げ研ぎを行います。
斧の研ぎ方
耐水サンドペーパーで全体の汚れを落とす
最初に、ブレード全体のサビや汚れを耐水サンドペーパーで落とします。この時に、エッジを擦らないように注意しましょう。切れ味が落ちているとは言え、下手にブレードに触ると怪我の元ですし、エッジが削れてしまうと更に切れ味が落ちてしまいます。
鉄工用ヤスリでエッジを調える
次に、鉄鋼用ヤスリを使って、大きくチップしたエッジを修正します。一般的な鉄工用ヤスリは、押したときに削れますので、斧を台の端に手で押さえつけて削っていきます。
削る前のチップした状態。 |
削った後。チップした部分を中心に、エッジだけを削る。 白くなっている部分がヤスリで削った跡。 |
削る時は、横(斧の上側)からエッジ角を確認しながら削ります。斧はコンベックスグラインド(蛤刃)と言われるように、エッジがカーブを描いていますので、このカーブの最終角度が変わらないように注意します。実際には、コンベックスに研ぐのは難しいので、エッジの角度が購入時と同じぐらいに研ぎます。角度がよく分からない場合は、40度前後(片側20度)を意識すればOKです。
チップしたところだけを削ると、エッジ全体の形が変わってしまうので、チップ部分以外もまんべんなく削ります。とは言っても正確に削る必要は無く、見た目で明らかにヘンな形になっていなければOKです。
砥石でエッジを研ぎ上げる
鉄工用ヤスリでエッジが整ったら、砥石でエッジを付けていきます。砥石は、予め10~20分ほど水に漬け、十分に水を吸わせておきます(シャプトンの刃の黒幕は水漬け不要)。
研ぎ方は、鉄工用ヤスリ同様、斧を押さえて、砥石を手に持って研いでいきます。
砥石は、ブレードのカーブに対して、垂直に動かして研いでいきます。ディスクストーンであれば円を描くように研いでいくのですが、長方形の砥石は、前後に動かす方が研ぎやすいです。
研ぐ前に、エッジに沿って5mmほどの幅でマジックインキを塗っておくと、研げていない部分に色が残って分かりやすいです。
この時、5往復程度研いだら5mmほど横にずらすということを繰り返していくとムラなく研ぐことができます。
※あまり厳密にやる必要は無く、あくまで目安と考えてください。
ヘッド重量が軽いハチェットであれば、包丁やナイフのような研ぎ方でもOKです。研ぎやすい姿勢で、できるだけ同じエッジ角で均一に研ぐのが基本です。
これを繰り返していくと、エッジにカエリが出ます。研いでいるエッジの裏側を指で触って、指に引っかかりが出ていれば研ぎ上がりのサインですから、裏側も同じように研ぎ上げます。
裏側も研ぎ上がったら、表側にできたカエリを落とすために、軽く砥石をあてる程度で研ぎます。
爪を軽くエッジにあてて食い込むのを感じることができれば、フェザースティックが作れるぐらいの切れ味に仕上がっています。
ここで、更に耐水サンドペーパーでコンベックスエッジを研ぎ上げると、ナイフ並みの切れ味に仕上げることも可能ですが、斧ですからそこまでする必要はありません。
ナイフ並みの切れ味に斧を研ぎ上げる方法
一応、スネ毛が剃れるほどピンピンにしたい変態さん(笑)向けに説明しておきます。
先ず、厚さ1cm程度の手の内に収まるサイズのゴムシートに2000番程度の耐水サンドペーパーを両面テープで張り付けた物を用意してください。
これを使って、コンベックスエッジに沿って、砥石で研ぐように動かして研ぎます。
研ぐ時の注意点として、柄の方向からエッジに向かって研いでください。エッジ側から柄の方向へ研いでしまうと、エッジを削ってしまいかえって切れ味が落ちます。
研いでいくと、だんだんと鏡面のようなてかりが出てきます。そこまでやればかなりの切れ味になります。特に、炭素鋼の鍛造斧であれば、モーラナイフ並みの切れ味が手に入ります。
仕上げ
完全に研ぎ上がったら、水で洗い流して、固く絞った濡れ雑巾で金属粉を拭き取ります。ナイフと同様ですが、金属粉が残っているとそこから錆びますので、綺麗に落としておきます。
最後に、錆止めにオリーブオイルを塗って完成です。亜麻仁油などの乾性油や椿油を塗るのが良いと言われていますが、オリーブオイルで充分です。私は、ナイフでも斧でも全部オリーブオイルです。乾性油も使ったことがありますが、ブレードに固着した油がゴミをくっつけてしまったりと、あまり具合が良くありませんでした。
オリーブオイルであれば、口にしても問題ありませんから、オピネルなどの炭素鋼のナイフにもおすすめです。
写真を撮影した時は、手持ちの斧3本をまとめて研ぎ上げました。
研ぐ前。左からバーコの手斧、ハスクバーナのキャンプ用斧、ハルタホースのスプリット50。 |
研いだ後 |
一番使い込んでいた、ハスクバーナのキャンプ用斧は、チップが酷く、エッジがガタガタでしたが、15分程でフェザースティックが作れるほど切れ味が復活しました。
エッジ角は、耐久性を考えて購入時より若干鈍角にしてあるため、切れ味はあまり良くありませんが、それでもこの程度には削ることができます。
流石は、スウェーデン製の鍛造斧です。500年近くに及ぶ、斧の歴史は伊達ではありません!
バーコの手斧は、工具鋼を使っていることもあり、エッジの切れ味は研ぎ上げてもイマイチでした。どうやら焼き入れの熱処理がいい加減なようで、研いでいるとブレードの上2/3はカエリが出るのですが、下1/3はどんなに研いでもカエリが出ずナマクラ状態でした。
まあ、薪割りに切れ味は不要なので使用上の問題は無いのですが、気分的には微妙です(苦笑)。
ハルタホースのスプリット50は、伝統的なスカンジナビアンスタイルの薪割り用斧ですから、軽く目立てをする程度の研ぎで抑えてあります。
これも、スウェーデン製の鍛造斧ですから、研ぎ上げれば抜群の切れ味を発揮してくれますが、完全に利用目的から外れてしまうので、軽く研いで終了。
斧も、ナイフ同様に、それぞれ個性がありますから、それに合わせて研ぎ上げていくのがベストです。ピンピンに研ぎ上げてナイフ代わりに使うもよし、薪割り用と割り切って、耐久性重視で研ぐもよし。
冒頭で簡単とは言いましたが、これはこれで奥が深いです(笑)。
おすすめの斧についてはこちらもご覧ください!