キャンプの薪割りにベストな斧の選び方とおすすめ16選

2023年6月4日

キャンプtips 焚火

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キャンプに欠かせない焚火。その焚火に欠かせないのが、斧や鉈などの薪割り用の刃物類。フルタングナイフでガッツリ割ることも可能ですが、無理せず安全に割ることを考えると、斧や鉈がおすすめです。

では、斧と鉈のどちらが薪割りに向いているかというと、私は敢えて斧をおすすめしたいと思います。



私は、長年キャンプで様々な刃物を使ってきましたが、薪割りは斧が一番割りやすいです。杉などの針葉樹であれば、鉈でも充分に割ることができますが、直径が10cmを超える固い広葉樹の薪は、鉈ではパワー不足となります。斧であれば、鉈よりパワーがあり、慣れれば子供でも太い薪を簡単に割ることができます。

※斧で薪を割るテクニックについてはこちら



今回は、キャンプ向けの斧の選び方から、おすすめの斧まで詳細に解説していきたいと思います。


薪割りには鉈より斧が向いている理由

鉈は、直線の刃が付いており、刃と柄の長さが同じぐらいですが、斧は刃が短く、鉈よりもぶ厚い斧頭(ヘッド)に、長い柄が付いています。そのため、斧は重量が斧頭に集中しており、パワーが1点に集まる構造になっています。また、鉈は振り下ろす力で割るのに対して、斧は遠心力を使って割るため、より小さな力で威力を発揮するようにできています。



この構造は、特に太い広葉樹薪を割る時に有利で、鉈では割ることが難しいような薪でも、斧であれば難なく割ることが可能です。地方のホームセンターでは、薪ストーブ向けに無選別のMIX薪などが安く売られていることがありますが、そういった薪の中には、直径10cmオーバーの太い薪が混じっていたりします。太い薪は、普通に焚火台などで燃やすのは難易度が高く、半分に割るのがベターなのですが、こういう薪に限って割り難かったりします。そういう難物は、鉈でも割るのが難しく、斧の出番ということになります。


キャンプ向けの斧の種類

では、どんな斧が良いかといえば、本格的な薪割りをする訳ではありませんから、玉切り(丸太を30~40cmの長さで切った物)を割るためのスプリッティングアックス(薪割り斧)は不要でしょう。


全長80cmのヘルコ ヘリテイジスプリッティングアックス
全長80cmのヘルコ ヘリテイジスプリッティングアックス HR-1

この手の本格的な薪割り斧は、柄が長くて重いので、言うまでもなくキャンプで持ち歩くのには不向きです。ですから、キャンプには、長さが40cm前後の物がおすすめとなります。

この40cm前後の斧は、手斧(ハチェット)と呼ばれる種類になります。手斧は、木の枝を払ったり、小割の薪を割るための斧ですから、キャンプに適しています。


写真右がハチェット、中央が柄の短い薪割り斧、左が玉切りを割るための大型薪割り斧。


一方、薪割り斧の中にも、比較的コンパクトな物があり、これもキャンプに向いています。長さが50cm前後と、手斧より少し長いですが、斧頭が厚く楔のようなデザインになっており、より薪が割りやすくなっています。


スプリッティングアックス(左)とハチェット(右)の比較。
ヘッド幅が厚く、ブレードにも張り出しがある。


選んではいけない斧

最近は、フルタング斧なる意味の分からない斧なども発売されていますが、この手の斧は絶対に止めた方が良いです。ヘッドが軽く、刃も薄いため、薪を割る力が弱いからです。

薪割りは、斧のヘッドの重量を利用して割るため、重心がヘッド寄りにないと安定して振り下ろすことができません。

また、薪を割るためには、割り拡げる力が必要となりますから、前述の通り楔のような形状をしていないと割る力が不足します。

フルタング斧と言われる部類の斧は、斧からハンドルまで同一の厚さの鋼材を使って作られているため、ヘッドの重量も厚みも中途半端です。それなら、コントロール性を考慮して鉈を買うべきです。

勿論、杉などの柔らかい木材であれば割ることはできますが、ナラやクヌギといった広葉樹の薪を割るのは大変です。いっそのこと、それならごっついフルタングナイフを買うべきです。

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斧メーカーの歴史、ブランドについて

では、おすすめの斧を紹介していきたいと思いますが、先にブランドについて簡単にご説明させていただきます。

今回取り上げるのは、ハスクバーナ、ハルタホース、ヘルコ、バーコ、フィスカースの5種類です。


ハスクバーナ(Husqvarna)

スウェーデンのストックホルムに本社を置く、チェーンソー、芝刈り機などの農林・造園機器や、建設機械のメーカー。その歴史は古く、1689年にマスケット銃の製造を開始したことに遡る。


ハルタホース(Hultafors)

スウェーデンのBollebygdに本社を置く、建築・大工道具メーカー。1883年に、インチとセンチの両方が記載された折り畳み定規を開発したことに端を発する。斧に関しては、スウェーデンの伝統的な鍛造を行っているHULTS BRUKが製造している。HULTS BRUKは、1697年創業の斧メーカーで、現在はハルタホースグループに属し、ハクスバーナの斧も製造している。

http://hultsbruk1697.se/company/


ヘルコ(Helko)

ドイツのルール地方にあるヴッパータール市という職人の街に本社を置く、斧を主軸とする林業メーカー。そのルーツは、1844年創業のHelsperツール製作所という小さな鍛冶屋に遡る。斧作りに関しては、伝統的な鍛造工法を採りながらも、厳しいドイツDIN製造規格をクリアしており、世界中の薪ストーブ愛好家から高い評価を得ている。


バーコ(BAHCO)

モンキーレンチなどを発明した、スウェーデンの発明家ヨハン・ペッター・ヨハンソンをルーツに持つ工具メーカー。現在は、世界最大級の工具メーカー米国スナップオン社のグループ会社である。


フィスカース(FISKARS)

フィンランドの刃物・工具メーカーで、1649年にフィスカース村で操業を開始した製鉄所をルーツに持つ。斧については、人間工学に基づいた、使いやすさと安全性が特徴で、多くの林業従事者から高い信頼を得ている。


キャンプに最適なおすすめの斧16選

では、各社のおすすめの斧をご紹介します。

表記しているスペックについては、ブランドによって多少の差異がありますが、極力統一して記載してあります。

定価は、2024年1月現在のものですので、取り扱い状況によって上下します。


ハスクバーナ ハイキングハチェット

出典:ハスクバーナ・ゼノア

全長:20cm

ヘッド重量:500g

定価:¥9,240

2021年に新しくラインアップに加わった、小型の手斧。全長が20cmと短く、腰から提げて持ち歩くのにも向いている。

全長が短い分、パワー不足であることは否めず、樹種にもよるが10cmオーバーの広葉樹薪を割るにはやや難がある。

尚、この斧は、ハスクバーナブランドではあるが、ドイツ製となっている。


ハルタホース オーゲルファン ミニハチェット

出典:飯塚カンパニー

全長:23.5cm

刃長:約75mm

ヘッド重量/総重量:500g/775g

定価:¥19,800

ハルタホースのキャンプやハイキング向けの最小モデル。ハスクバーナのハイキングハチェット同様、全長が20cm程度なので、パワーでは劣る。

付属の本革製エッジカバーは、ベルトループ付きで、腰から提げられるようになっている。


ヘルコ ヘリテイジ ハンドアックス HR-7

出典:ダッチウェストジャパン

全長:36cm

ヘッド重量:600g

定価:¥14,520

ヘルコの伝統的なスタイルで作られたハチェット。美しく仕上げられたヘッドは、単なるスタイルだけでなく、実用性も抜群。

ブレードが少し長めのため、他のハチェットに比べて扱いやすい。


バーコ 手斧

出典:バーコ

全長:36cm

ヘッド重量:不明

定価:オープン

今回紹介する中で、最も安価なハチェット。工具メーカーらしい作りで、安全性も兼ねてオレンジ色に塗装されている。鋼材は、工具鋼が使われているため、切れ味の面では、他のハチェットに劣るが、実用上は問題ない。

ブレードも比較的に長いので、取り扱いしやすく、最初の1本にもおすすめ。工具鋼は、鍛造よりは錆びにくいが、雨などで濡れたままにしておくと錆びるので注意が必要。


ハスクバーナ 手斧

出典:ハスクバーナ・ゼノア

全長:38cm

ヘッド重量:600g

定価:¥8,800

多くのキャンパーから支持されている、定番ハチェット。スウェーデン製の鍛造ヘッドは、切れ味抜群で、薪割りからフェザースティック作りまでこなせるため大人気。

ハルタホース スカウト

出典:飯塚カンパニー

全長:38cm

ヘッド重量/総重量:600g/900g

定価:¥13,200

ハルタホースの手斧。ハスクバーナとスペックは全く同様で、製造元も同じため、どちらのブランドが好みかが購入の分かれ目か。


ハスクバーナ キャンプ用斧

出典:ハスクバーナ・ゼノア

全長:38cm

ヘッド重量:500g

定価:¥10,010

手斧より100g軽い、キャンプ向けのハチェット。軽いとは言っても、そのパワーは必要十分で、枝払いから薪割まで難なくこなす。

付属の本革製エッジカバーは、ハルタホース同様にベルトループ付きで、腰から提げられるようになっている。


ハルタホース フルトンハチェット

出典:飯塚カンパニー

全長:37.5cm

刃長:約75mm

ヘッド重量/総重量:500g/805g

定価:¥20,900

オーゲルファン ミニハチェットの柄が長いバージョン。ハクスバーナのキャンプ用斧とスペック上は全く同じで、見た目も同じだが、価格はこちらの方が倍以上する。

いずれも、HULTS BRUK製なので、HBマークの有無がこの価格差か。


フィスカース X7

出典:フィスカース

全長:35.5cm

ヘッド重量/総重量:581g/748g

定価:オープン

ヘッドは、フッ素コーティングされた炭素鋼、柄はグラスファイバー製で、ハンドル部分は握りやすさと滑り難さを両立させた強化ナイロン樹脂という、現代的なハチェット。ヘッド重量の割に総重量は軽く、耐久性、パワーも申し分ない。プラスチック製のエッジカバーは、キャリーハンドルが付いており、運搬時の利便性・安全性も考慮されている。

実用性で言えば、このハチェットが最も高い性能を持っている。


ヘルコ クラシックライン マークI CL-1

出典:ダッチウェストジャパン

全長:38cm

ヘッド重量:600g

定価:¥15,620

伝統的な鍛造技術で作られた斧に、芸術性を加えた「クラシックライン」のハチェット。

全面鏡面仕上げで、他の斧とは一線を画すデザインが魅力的。ヘルコの高い技術力と、職人技で生み出された斧は、見た目だけでなく性能も折り紙付き。

グリップには、同じくドイツの名門銃器メーカー「モーゼル」との技術提携により実現した、ローレット加工が施されている。

他人とは違うモノを持ちたい、拘りキャンパーにおすすめの逸品。


ハクスバーナ ヤンキー

出典:ハスクバーナ・ゼノア

全長:37.5cm

ヘッド重量:700g

定価:¥7,150

40cm以下のハチェットとしては、ヘッドが今回紹介する中で最も重く、パワーがあるため、キャンプでの薪割りに向いている。ハイキングハチェット同様、ドイツ製ではあるが、炭素鋼の鍛造で、ブレードの切れ味は申し分なく、スウェーデン製の他の斧と比べても遜色は無い。


ハルタホース オールラウンド

出典:飯塚カンパニー

全長:44cm

ヘッド重量/総重量:800g/1,010g

定価:生産終了

スカウトより柄の長さが6cm長く、ヘッド重量も200g重い。柄が長い分、遠心力のパワーをより絞り出せるようになっている。残念ながら、生産が終了してしまったため、現在の流通在庫が無くなり次第終売となる。


ハスクバーナ 小型薪割り斧

出典:ハスクバーナ・ゼノア

全長:50cm

ヘッド重量:900g

定価:¥10,450

スプリッティングアックスと呼ばれる薪割り専用の斧。ヘッドが、スカンジナビアンスタイルと言われる楔のような形をしており、薪を割り広げる力が大きい。慣れれば、20cm程度の玉切りでも割ることができる。


ハルタホース スプリット50

出典:飯塚カンパニー

全長:50cm

ヘッド重量/総重量:900g/1,400g

定価:¥15,400

ハスクバーナ同様、スカンジナビアンスタイルが特徴の薪割り専用の斧。ハチェットでは味わえない、薪を割る力が魅力。


ヘルコ ライトスプリッティングアックス HR-6

出典:ダッチウェストジャパン

全長:50cm

ヘッド重量:1.0kg

定価:¥17,380

大きく張り出した「えら」のような膨らみが特徴のスプリッティングアックス。この「えら」によって、固い薪でもメリメリと割っていくことができる、正に薪割り専用の名に恥じない斧。

ヘッド重量も1kgに達するため、より本格的な薪割りを楽しめる。


フィスカース X11

出典:フィスカース

全長:43cm

ヘッド重量/総重量:839g/1,100g

定価:オープン

ヘッドが非常に鈍角になっており、効果的に薪を割ることができるスプリッティングアックス。炭素鋼のヘッドはフッ素コーティングされており、柄はグラスファイバー製で、ハンドル部分は握りやすさと滑り難さを両立させた強化ナイロン樹脂。プラスチック製のエッジカバーは、キャリーハンドルが付いており、運搬時の利便性・安全性も考慮されている。

全長が43cmと短く、キャンプに持っていくのにも丁度良いサイズ。この斧があれば、キャンプ場で薪割りに困ることは皆無と言えるだろう。



以上、キャンプ向けの斧の選び方と、おすすめの斧をご紹介しましたが、いかがでしょうか。


私のおすすめは、ハスクバーナのキャンプ用斧です。比較的軽くて、取り回しも良いので、小・中学生でも使うことができます。実際に、私の娘が小学生の頃よく使っていました。



腕力(特に握力)に自信がある方は、ヤンキーがおすすめです。少し重いのでコントロールは難しくなりますが、両手で振り抜けば、欅(ケヤキ)などの固い薪でも1発で割れるパワーがあります。



最近、ハスクバーナの斧は、最もメジャーな手斧が値上がりしており、キャンプ用斧も値段が安定していないので、価格面でもヤンキーが一番安くなっています。


ハルタホースは、伝統的な鍛造製法で、職人が1本づつ手作業で仕上げています。また、表面がサンドブラスト加工されており、クリアラッカーで錆止め処理されているなど、高い品質を誇っています。

スペック上は似ているので、本稿でもハスクバーナと比較してきましたが、品質の差が値段の差と思えば納得できます。



ここで、ベルトループ付きのエッジカバーについて、解説しておきます。




ハスクバーナとハルタホースの一部のモデルに付属のこのカバーですが、実用面では微妙です。エッジカバーを直接ベルトに通してホールドする訳ですが、取り外しが結構面倒で、使い勝手も悪いので、個人的には見掛け倒しでした。
斧を腰から提げるなら、別途斧ホルダーを購入するのがベターです。



コスパで言えば、バーコの手斧が一番です。実売価格は2,500~3,000円で、価格も安定していますから、安心して買うことができます。



実は、薪割りという性能面では、ハチェットはどれもあまり変わらないので、バーコでも充分です。薪割りは、斧頭の重さをパワー源として、薪に楔のように打ち込み、割れ目を拡げるようにして割るので、切れ味はあまり必要ありません。ですから、鍛造であれ工具鋼であれ、実用上はそれほど変わらないのです。


最も使いやすくて安全なのは、フィスカースになります。見た目が現代的なので、映え的にはアレですが、軽くて握りやすく、非常に使いやすいです。特に、X11は薪割りに最適で、軽量・コンパクトですから、最もキャンプでの薪割りに適した斧です。

性能面も含めた総合的なコスパでは、フィスカースが最強と言えるでしょう。


出典:フィスカース

フィスカースは、大型のホームセンターなどでも取り扱っていますので、一度手に取ってみることをおすすめします。


さて、ハチェットとスプリッティングアックスのどちらを選ぶかとなると、これはもう好みの問題と言うしかありません(笑)。


上からスプリット50、ヤンキー、キャンプ用斧、手斧


ここまで書いておいて何ですが、私は長年キャンプ用斧を愛用しており、これで割れない薪は殆どありませんでした。ガッツリ節が入っているような曲者でない限り、大抵はキャンプ用斧で割れますし、逆にこれで割れない薪はスプリッティングアックスでも割るのがタイヘンなので、諦めてそのまま燃やしてしまいます(苦笑)。

とまあ、実用面で言うと、50cm程のスプリッティングアックスは、玉切りを割るような本格的な薪割りではパワー不足で、私にとっては正直微妙なのですが、ハチェットに比べれば当然こちらの方が割りやすいので、おすすめではあります。

結局、スプリッティングアックスを持つ最大の理由は、玄人っぽいからです(笑)。


さて、斧に関して色々とまとめてみましたが、こうなってくると、ヘルコのクラシックラインが欲しくなってきました。ナイフでも斧でも、ピカピカに光っているのはカッコいいですから(苦笑)。





















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