薪割りをするならフルタング?バトニング方法とおすすめナイフ7本

2021年9月11日

キャンプtips ナイフ沼 焚火

t f B! P L

キャンプと言えば焚火、焚火と言えばが必要になります。

薪は、キャンプ場だけでなく、ホームセンターやアウトドアショップなどでも売っています。ただ、薪に火を点けるためには、燃えやすいように小割にする必要があります。そこで登場するのが、ナイフを使って薪を割るバトニングの出番となります。


バトニングで薪を割る方法

一言で「薪」と言っても、杉などの針葉樹と、ナラ(楢)やクヌギ(椚)などの広葉樹の薪があります。特に広葉樹の薪は、火持ちが良く、煙も少ないので焚火に向いています。
一方、広葉樹は火が付き難いため、着火剤を使うとしても最初は太さ2~3cmの小割の薪を使う必要があります。そこで、ナイフを使って薪を適当な太さになるまで割って聞きます。この、ナイフを使った薪を割るテクニックの事をバトニングと呼んでいます。

バトニングで薪を割るのは、意外と簡単です。薪にナイフのブレードを当てて、上からスパイン(峰)を別の薪でぶっ叩くだけです。

薪割台に薪を立ててナイフのブレードを当てて、スパインを別の薪で叩く

更に叩いてナイフを薪に食い込ませる

ここまで食い込むとスパインを叩いても進まない

ポイント側を叩いて、更に薪に食い込ませていく

グリップをしっかり持って、グリップ側が跳ね上がらないように注意

叩き割っていく

ここまで来るとほぼ割れている

最後は自然と割れる

割進めている時に、刃が薪に挟まって進まなくなったら、無理せず、上から楔(クサビ)を打ち込んでください。小枝を削って楔にしても良いですが、適当なものが無ければ、薪の中で割れ目にハマりそうな大きさのものを選んで、上の割れ目に差し込み、強引にこじれば薪が開くのでナイフを救出できます。

私がバトニングで薪を割ることをおすすめしない理由

実は、私は、ナイフを使ったバトニングによる薪割りは否定派です。
はっきり言って、斧の方が安全かつ確実に割れますし、市販の薪を小割にする程度なら手斧(ハチェット)で十分ですので、ごっついナイフより安価です。
ですから、一番安価で使い倒せる組み合わせは下記の組み合わせになります。

ハスクバーナのヤンキーと、モーラナイフのコンパニオンヘビーデューティーMG

手斧であれば、堅い広葉樹の薪を簡単に割ることができますし、モーラナイフのCompanion Heavy Dutyでも、針葉樹の薪であれば、バトニングで割れます。
※モーラCompanion Heavy Dutyに関する詳しいレビューはこちら

では、ナイフでの薪割りに私が否定的な理由は何かというと、本格的な焚火に使う広葉樹の薪は、とても堅くて割れ難いからです。特に、カエデ(楓)やケヤキ(欅)などの繊維質な木材は、薪割り専用のスプリッティングアックスでも、まともに割れないぐらい堅いので、ナイフで割ることは非常に困難です(詳しくはこちら)。

私がバトニングによる薪割りに否定的な理由が、もう一つあります。そもそも、ナイフは薪を割るための道具ではないからです。確かに「ブッシュクラフトの教科書(デイブ・カンタベリー著)」でも、バトニングで木材を割る方法が紹介されていますが、同書では斧を使った薪割りも紹介されており、「斧でできる作業にナイフを使うのは厳禁、と心得よう」と書かれています。

ナイフは、汎用性の高い刃物ですので、確かに薪割りも含めてなんでもできてしまう道具です。しかし、物理的な構造上の限界はあるので、それを分かった上で使わないと、ナイフを破損するだけでなく自分の身を傷つけることになります。

薪が割れるメカニズム

薪が割れるメカニズムは、斧とナイフでは全然違います。斧は遠心力、ナイフはてこの原理で割れます。

斧による薪割り

斧は、図のように長い柄の先に斧頭がついており、それを円形に振り下ろすことで回転エネルギー(と位置エネルギー)を斧頭に集中して薪に当てます。斧が薪に当たった瞬間、斧のエネルギーが薪に伝わって、薪が割れます。

厳密にいうと、斧が薪に当たる瞬間に薪が斧を押し返す力が働くのですが、そのエネルギーは全て斧頭に伝わります(作用・反作用)。そのため、薪が固くて割れなかった場合は、斧が跳ね返されたように感じるのですが、これはまさに、斧のエネルギーを薪が跳ね返したために起こる現象です。
つまり、薪を割る時のエネルギー負荷は、ほぼ全てが斧頭に集中します。斧頭は鉄の塊ですので、人間の力で生み出したエネルギー程度では潰れることは無いので、普通に薪割りをしていれば斧を破損することはありません。
もちろん、柄の部分を薪にぶつけたり、斧頭がそれて石にあたったりすれば、柄が折れたり、刃がかけたりするので、確実に薪に当てるように注意しましょう。

一方、ナイフでバトニングをする場合は、てこの原理で割っていくことになります。
ナイフのバトニングでの薪割り

図のように、ナイフがある程度薪に食い込むと、ナイフのポイント(先端)近くを叩くことになります。バトニングによってナイフのブレードが薪を割ろうとしている時、ハンドルをもって押さえつけているため、ブレードの付け根にエネルギーが集中します。
叩くポイントが力点、ブレードが作用点、ブレードの付け根が支点となります。てこの原理では、支点が力点と作用点のエネルギーを全て支えることになるので、ナイフを叩いた力+ブレードが薪を割る力が支点に集中します。このように、てこの原理で支点にかかる負荷は、薪でナイフを叩いている以上の力がかかるため、ブレード付け根には予想以上の負荷がかかっています。これが、無理をしてバトニングするとナイフが破壊されてしまうメカニズムです。
よくあるサバイバルナイフで、ハンドル内に釣り針やワイヤーソーなどが入っているようなタイプがありますが、ブレードとハンドルの固定部分が弱いので、バトニングすると折れる危険性が高いです。

以上のように、てこの力で割るナイフでのバトニングは、思わぬ力がブレード付け根にかかることが、最大のリスクであることがお分かりいただけたかと思います。ブレード付け根以外でも、薪で叩くブレード先端近くも力が集中するので、薪から出ているブレード先端の長さが短ければ、負荷が集中しすぎて曲がったりする可能性があります。また、あまりに固い木だと、ブレードが薪に負けて欠けたり折れたり(割れたり)します。

バトニングにフルタングが必要な理由

薪が割れるメカニズムでもご説明した通り、バトニング時には、力がナイフのつけ根に集中します。これに耐えるために必要となるのが、フルタングです。

フルタングとは、ナイフのブレードからハンドルまで一体となっている構造のことを指します。


このような構造のナイフであれば、ブレードのつけ根にかかる力を全体で分散できるため、バトニングでも折れない強度を発揮します。

厳密に言うと、物理的には必ずしもフルタングである必要はありません。グリップをもってナイフを押さえつけられるだけのタングの長さがあれば、グリップエンドまで鋼材が通っていなくても良いです。これは、最大の負荷がかかる支点は、あくまでブレードの付け根だからです。ただ、ナイフを叩いた時の衝撃は、タングからグリップ全体で受け止めることになるため、フルタングの方が耐久性が高く、グリップ全体の消耗を抑えることができます。
むしろ、フルタングと言えどもブレードつけ根の強度が低いとぽっきり逝きます。ですので、ブレード付近が細くなっているデザインのものは注意が必要です。

バトニングナイフの選び方

刃厚

バトニングは、ナイフを使って楔のように薪を割り拡げていくため、刃厚が最も重要となります。また、刃が分厚いほど、強度も増すので、欠けたり折れたりしにくくなります。
最低でも3mm以上、できれば4mm以上を目安にしてください。

ブレードの形状

ブレードの形状は、ナイフによって様々ですが、ドロップポイントが一番です。

バトニングでは、ナイフの先端の叩くので、スパイン(峰)が根元から先端まで平たい形状のものがベストです。突き刺したりするのに有利な、先端が細く尖った形状のものは、叩き難いだけでなく、刃先を破損することにもつながります。


ブレードの長さ

薪を割るのですから、薪の直径より長いものが必要となります。
市販の薪は、だいたい直径10cm未満ですので、ブレードの長さは、10cm~12cmぐらいを目安としてください。
バトニングについては、長ければ長いほど薪を割りやすいのですが、長すぎるとナイフとして他の用途に使いづらくなるのと、キャンプ場で持ち歩くのには見た目にも威圧感が出てしまうのでご注意ください。

鋼材

ナイフの切れ味には、硬度が関係しています。硬度が高いほど切れ味が良くなりますが、その分、欠け易くなります。バトニングでは、切れ味はあまり重要ではなく、耐久性の方が重要となります。刃が鋭い方が、最初の刺さりは良いのですが、薪を割り拡げるためには刃厚が重要で、切れ味は関係ありません。
一般的には、炭素鋼の方が硬度が高く切れ味に優れます。一方で、ステンレスの方が粘りがあり耐久性があるので、バトニングにはおすすめです。また、ステンレスは錆びにくく、研ぐ頻度も少なくて済むため、メンテナンス面でも有利です。
但し、炭素鋼のナイフでも、耐久性を考慮して意図的に硬度を低くしているもの(HRC56~58)があり、上級者にはそういった炭素鋼モデルを選ぶ人もいます。

バトニングにおすすめのナイフ

モーラナイフ ガーバーグ(ステンレス)

キャンプでもポピュラーなモーラナイフのラインアップ中で、唯一フルタング構造を持つガーバーグ。刃長109mm、刃厚3.2mmとバトニングに必要なラインを一通りクリアしている。

鋼材も、他のモーラナイフと異なり、14C28Nという上位鋼材を使用している。取り回しも良く、バトニングから調理まで、高い汎用性を誇る点も大きな魅力。
(詳細はこちら
  • 全長:約229mm
  • 刃長:約109mm
  • 刃厚:約3.2mm
  • 重量:約170g(ナイフのみ)

ユニフレーム UFブッシュクラフトナイフ

様々なキャンプギアを発売しているユニフレームが、本格的なブッシュクラフトを目的に制作したナイフ。刃長110mm、刃厚3.5mmと、ガーバーグに拮抗する一方、価格が安くコスパに優れる。構造は、ハーフタング(ナイフの柄の中に通っている鋼材が少し細くなっている)だが、実用上は問題無い。
鋼材は、愛知製鋼の刃物用ステンレス鋼材の8Aが採用されており、切れ味と耐久性に優れる。
ナイフとしての様々な要素が、高次元でバランスしているおすすめの逸品。
(詳細はこちら

  • 全長:約230mm
  • 刃長:約110mm
  • 刃厚:3.5mm
  • 重量:約150g(ナイフのみ)


ファルクニーベン F1


武生特殊鋼材のVG10をステンレスでサンドイッチしたクラッド鋼で作られたナイフ。
高い硬度のVG10を粘りのあるステンレス鋼で挟み込んでいるため、耐衝撃性が高くバトニングに向いている。
ブレードが97mmと少し短いため、太い薪をバトニングするのには向かないが、刃厚があるので、モーラナイフなどに比べて薪を割る力に優れている。
(詳細はこちら
  • 全長:210mm
  • 刃長:97mm
  • 刃厚:4.5mm
  • 重量:150g

コールドスチール マスターハンター サンマイ三


ファルクニーベンF1同様、武生特殊鋼材のVG1をステンレスでサンドイッチしたクラッド鋼で作られたナイフ。ブレードがF1より長いため、バトニングでは有利。
VG1はVG10より切れ味では勝るが、耐摩耗性では劣る。
  • 全長:235mm
  • 刃長:117mm
  • 刃厚:4.7mm
  • 重量:175g

リアルスチール ブッシュクラフト プラス


ガーバーグ同様、スウェーデンのサンドヴィッグ社が開発したステンレス鋼である14C28Nを使用。14C28Nは、モーラの安価なモデルに使用されている12C27よりも、エッジ保持力、硬度、耐食性に優れる。
ブレードのグラインドは、フラット、スカンジ、コンベックスの3種類があるが、おすすめはコンベックスグラインド。
  • 全長:240mm
  • 刃長:113mm
  • 刃厚:4.3mm
  • 重量:195g

ケイバー ベッカーBK2 コンパニオン


鋼材は1095高炭素鋼だが、刃厚が6.35mmと厚いため、強度は十分。1095は鋼材の性質としては、切れ味が良く、耐摩耗性に優れ、研ぎやすい。しかし、ベッカーBK2はエッジがかなり鈍角に研がれており、硬度も低めに調整されているため、切れ味はあまり良くない。一方、炭素鋼は耐食性に劣るが、ベッカーBK2はブラックパウダーコーティングが施されているので、錆びにくい仕様になっている。
シースは、プラスチックシースはとても固く、ナイフを抜くのが大変なので、ナイロンシースがおすすめ。
欠点は、刃厚とトレードオフの重さ。
(詳細はこちら
  • 全長:273mm
  • 刃長:121mm
  • 刃厚:6.5mm
  • 重量:426g

バークリバー ブラボー1.25


バトニングナイフの本命と言えるナイフ。刃厚5.5mmから繰り出される破壊力は凄まじく、固い広葉樹でもメリメリと割っていくのは圧巻。一方で、バークリバーの職人によって丁寧に仕上げられたコンベックスグラインドは、見事に切れ味と耐久性を両立している。
1.25は、刃長が127mmとやや長いため、太めの薪でも余裕を持って割ることが可能。

鋼材は、様々あるが、CPM3Vが最もおすすめ。CPM3Vは、米国のクルーシブル社が開発した粉末冶金工具鋼で、靭性が異常に高く、ブラボー標準のA2(炭素鋼)の約2倍、S35VN(ステンレス)の約3.5倍に達する。本来、粉末冶金鋼は、炭素鋼や一般的なステンレスに比べて脆いという欠点があったが、バークリバー社は、焼き入れ焼き戻しの熱処理において硬度よりも靭性を優先しているようで、チップ(刃欠け)の心配も無い。但し、粉末冶金鋼全般に言えることではあるが、とても研ぎ難い鋼材である。また、工具鋼のため耐食性はステンレスに劣る(油断すると錆びる)。
研ぎやすさを優先するのであれば、コスト的にも安いA2がおすすめ。CPM3Vほどの靭性は無いが、キャンプでのバトニングなら必要十分な性能を持つ。但し、炭素鋼であるため錆びには注意が必要。
(ブラボーの詳細はこちら

全長:250mm
刃長:127mm
刃厚:5.5mm
重量:289g

薪が割れないときは、引き返す勇気も必要

上記に挙げたナイフでも、時に割れない薪が出てくることがあります。バトニングの方法を説明したところでも書きましたが、いくら叩いてもナイフが進まなくなったら、無理せずナイフを取り出して、その薪は割るのを諦めましょう。無理をするとナイフを痛めるだけでなく、怪我にもつながり危険です。

販売されている薪は、一般的にはしっかり乾燥されており、木の繊維が締まった状態で堅くなっています。ですから、全ての薪がバトニングで割れるとは思わない方が良いです。特に、フシ(節)がある物は、絶対と言って良いほど割れません。薪が割れるのは、あくまで繊維に沿ってですから、繊維が複雑に絡み合っているフシは斧でも割るのが困難です。

以上、ナイフを使ったバトニングでの薪割りは、ナイフの限界に十分に注意しながら楽しんでください。


更にバトニングを深く楽しみたい方はこちらもご覧ください。











プライバシーポリシー及び免責事項

QooQ