なぜフルタングが必要なのか?バトニングで薪割りをする方法とおすすめのナイフ

キャンプtips ナイフ沼 焚火

t f B! P L

私は、こちらの記事でも書いたように、ナイフを使ったバトニングによる薪割りは否定派です。はっきり言って、斧の方が安全かつ確実に割れます。それに、市販の薪を小割にする程度なら手斧で十分ですので、ごっついナイフより安価です。ですから、一番安価で使い倒せる組み合わせは下記の組み合わせになります。






この組み合わせであれば、広葉樹の楢(ナラ)や椚(クヌギ)でも斧で割れますし、中割以下になれば、Companion Heavy Dutyでのバトニングでも比較的安全に割ることができます。
また、Companion Heavy Dutyでも、杉や松の薪であれば、バトニングで簡単に割れます。
※モーラCompanion Heavy Dutyに関する詳しいレビューはこちら

では、ナイフでの薪割りに私が否定的な理由は何かというと、広葉樹は固く、繊維も複雑に絡み合っているため、ナイフで割るには非常に負荷がかかるためです。特に、楓(カエデ)や欅(ケヤキ)などの固く繊維質な木材は、薪割り専用のスプリッティングアックスでも、まともに割れないぐらい固いので、間違いなくナイフを痛めることになります(詳しくはこちら

私がバトニングによる薪割りに否定的な理由が、もう一つあります。そもそも、ナイフは薪を割るための道具ではないからです。ナイフは、汎用性の高い刃物ですので、確かに薪割りも含めてなんでもできてしまうという道具です。しかし、物理的な構造上の限界はあるので、それを分かった上で使わないと、ナイフを破損するだけでなく自分の身を傷つけることになります。

さて、あまり否定的なことを言っていても話が進みませんので、まずはバトニングのやり方をご説明します。

バトニングで薪を割る方法

バトニングで薪を割るのは、意外と簡単です。薪にナイフのブレードを当てて、上からスパイン(峰)を別の薪でぶっ叩くだけです。

薪割台に薪を立ててナイフのブレードを当てて、スパインを別の薪で叩く

更に叩いてナイフを薪に食い込ませる

ここまで食い込むとスパインを叩いても進まない

ポイント側を叩いて、更に薪に食い込ませていく

グリップをしっかり持って、グリップ側が跳ね上がらないように注意

叩き割っていく

ここまで来るとほぼ割れている

最後は自然と割れる

割進めている時に、刃が薪に挟まって進まなくなったら、無理せず、上から楔を打ち込んでください。小枝を削って楔にしても良いですが、適当なものが無ければ、薪の中で割れ目にハマりそうな大きさのものを選んで、上の割れ目に差し込み、強引にこじれば薪が開くのでナイフを救出できます。
実際は、これよりもっと大きな丸太状の薪を周囲から割っていく方法もありますが、ここでは、市販の薪を割ることを中心に解説します。

薪が割れるメカニズム

薪が割れるメカニズムは、斧とナイフでは全然違います。斧は遠心力、ナイフはてこの原理で割れます。

斧による薪割

斧は、図のように長い柄の先に斧頭がついており、それを円形に振り下ろすことで回転エネルギー(と位置エネルギー)を斧頭に集中して薪に当てます。斧が薪に当たった瞬間、斧のエネルギーが薪に伝わって、薪が割れます。

厳密にいうと、斧が薪に当たる瞬間に薪が斧を押し返す力が働くのですが、そのエネルギーは全て斧頭に伝わります(作用・反作用)。そのため、薪が固くて割れなかった場合は、斧が跳ね返されたように感じるのですが、これはまさに、斧のエネルギーを薪が跳ね返したために起こる現象です。
つまり、薪を割る時のエネルギー負荷は、ほぼ全てが斧頭に集中します。斧頭は鉄の塊ですので、人間の力で生み出したエネルギー程度では潰れることは無いので、普通に薪割りをしていれば斧を破損することはありません。
もちろん、柄の部分を薪にぶつけたり、斧頭がそれて石にあたったりすれば、柄が折れたり、刃がかけたりするので、確実に薪に当てるように注意しましょう。

一方、ナイフでバトニングをする場合は、てこの原理で割っていくことになります。
ナイフのバトニングでの薪割

図のように、ナイフがある程度薪に食い込むと、ナイフのポイント(先端)近くを叩くことになります。バトニングによってナイフのブレードが薪を割ろうとしている時、ハンドルをもって押さえつけているため、ブレードの付け根にエネルギーが集中します。
叩くポイントが力点、ブレードが作用点、ブレードの付け根が支点となります。てこの原理では、支点が力点と作用点のエネルギーを全て支えることになるので、ナイフを叩いた力+ブレードが薪を割る力が支点に集中します。このように、てこの原理で支点にかかる負荷は、薪でナイフを叩いている以上の力がかかるため、ブレード付け根には予想以上の負荷がかかっています。これが、無理をしてバトニングするとナイフが破壊されてしまうメカニズムです。
よくあるサバイバルナイフで、ハンドル内に釣り針やワイヤーソーなどが入っているようなタイプがありますが、ブレードとハンドルの固定部分が弱いので、バトニングすると折れる危険性が高いです。

さて、バトニングではフルタングが必要と言われますが、物理的には必ずしもフルタングは必要では無いです。グリップをもってナイフを押さえつけられるだけのタングの長さがあれば、グリップエンドまで鋼材が通っていなくても良いです。最大の負荷がかかる支点は、あくまでブレードの付け根に当たるためです。ただ、ナイフを叩いた時の衝撃は、タングからグリップ全体で受け止めることになるため、フルタングの方が耐久性が高く、グリップ全体の消耗を抑えることができます。
むしろ、フルタングと言えどもブレードつけ根の強度が低いとぽっきり逝きます。ですので、ブレード付近が細くなっているデザインのものは注意が必要です。

以上のように、てこの力で割るナイフでのバトニングは、思わぬ力がブレード付け根にかかることが、最大のリスクであることがお分かりいただけたかと思います。ブレード付け根以外でも、薪で叩くブレード先端近くも力が集中するので、薪から出ているブレード先端の長さが短ければ、負荷が集中しすぎて曲がったりする可能性があります。また、あまりに固い木だと、ブレードが薪に負けて欠けたり折れたり(割れたり)します。

それでもナイフで薪を割りたい方へ

私が使っている、バークリバーのブラボー1.5は、刃長が153mmと長いため、市販の薪なら余裕をもって割ることができる長さです。刃厚も5.5㎜あるので、耐久性に優れています(詳細はこちら)。そんなナイフでも、やっぱりバトニングするときはビビります。隠れた節などがあれば、強力なナイフでも欠けたり曲がったりする可能性は否定できないからです。
また、バトニングは、とにかく力任せにぶっ叩くことになるので、ナイフの靭性(ねばり)と耐衝撃性が重要になります。炭素鋼や工具鋼系の鋼材は、硬度が高く切れ味は良いですが、靭性と耐衝撃性はステンレスに比べて低いため、一層の注意が必要です。そのため、ファルクニーベンF1のように、靭性の高いステンレスで硬度の高いエッジ鋼材を挟み込んだ構造のナイフは、切れ味と靭性・耐衝撃性が両立しているため、バトニングに向いています。そういった意味では、コールドスチールのマスターハンターサンマイも同様です。
また、金属は極低温下では、靭性が落ちるため割れやすくなりますので、真冬の北海道でのバトニングは注意した方が良いです(まあそんなことする人はこの記事を読む必要は無いでしょうが)。
ナイフの形状ですが、ドロップポイントや直刀などといわれるストレートなタイプが良いです。刺すことに向いているクリップポイントや、タクティカルナイフなどのようにスパイン側にも刃がついている物などは、ナイフの先端をバトニングするのに不向きです。
では、私のおススメのバトニングができるナイフをご紹介しましょう。

ファルクニーベン F1

武生特殊鋼材のVG10をステンレスでサンドイッチしたクラッド鋼で作られたナイフ。
高い硬度のVG10を粘りのあるステンレス鋼で挟み込んでいるため、耐衝撃性が高くバトニングに向いている。
(詳細はこちら
全長:210mm
刃長:97mm
刃厚:4.5mm
重さ:150g



コールドスチール マスターハンター サンマイ三

ファルクニーベンF1同様、武生特殊鋼材のVG1をステンレスでサンドイッチしたクラッド鋼で作られたナイフ。
VG1はVG10より若干硬度が高いが、耐摩耗性では劣る。
全長:235mm
刃長:117mm
刃厚:4.7mm
重さ:175g



リアルスチール ブッシュクラフト プラス

スウェーデンのサンドヴィッグ社が開発したステンレス鋼である14C28Nを使用。
モーラのコンパニオンヘビーデューティーステンレスに使用されている12C27よりもエッジ保持力、硬度、耐食性がアップされている。
ブレードのグラインドは、フラット、スカンジ、コンベックスの3種類があるが、おすすめはコンベックスグラインド。
全長:240mm
刃長:113mm
刃厚:4.3mm
重さ:195g



ケーバー ベッカーBK2 コンパニオン

鋼材は1095高炭素鋼だが、刃厚が6.5mmと厚いため、強度は十分。1095は鋼材の性質としては、切れ味が良く、耐摩耗性に優れ、研ぎやすい。しかし、ベッカーBK2はエッジがかなり鈍角に研がれているため、切れ味はあまり良くない。一方、炭素鋼は耐食性に劣るが、ベッカーBK2はブラックパウダーコーティングが施されているので、錆びにくい仕様になっている。
シースは、プラスチックシースはとても固く、ナイフを抜くのが大変なので、ナイロンシースがおすすめ。
欠点は、刃厚とトレードオフの重さ。
(詳細はこちら
全長:273mm
刃長:121mm
刃厚:6.6mm
重さ:426g



バークリバー ブラボー1.5 CPM3V

バトニングナイフの本命と言えるナイフ。特に1.5は刃長に余裕があるため、太めの薪もバトニングしやすい。
CPM3Vは、米国のクルーシブル社が開発した粉末冶金工具鋼で、靭性が異常に高くブラボー標準のA2の約2倍、粉末冶金ステンレス鋼のS35VNの約3.5倍に達する。本来、粉末冶金鋼は、炭素鋼やステンレスに比べて脆いという欠点があったが、バークリバー社は、焼き入れ焼き戻しの熱処理において硬度よりも靭性を優先しているようで、チップ(刃欠け)の心配も無い。但し、粉末冶金鋼全般に言えることではあるが、とても研ぎ難い鋼材である。
工具鋼であるため、ステンレスほどの耐食性は無いが、実用性の面では問題ない。
唯一の欠点は、他のナイフに比べて価格が高いこと。
(ブラボー1.5の詳細はこちら
全長:279mm
刃長:147mm
刃厚:5.5mm
重さ:262g




以上、ナイフを使ったバトニングでの薪割は、ナイフの限界に十分に注意しながら楽しみましょう。


バトニングに向いているナイフの中でも、最強といえるナイフについて考察してみましたので、ご興味があればお読みください。
最強のバトニングナイフを考える

関連記事

このブログを検索

自己紹介

自分の写真
沼にハマると抜け出せなくなる性格の40代おっさん。関西出身で現在は東京都在住。嫁と小学生の娘の3人で年間30泊ほどキャンプに行って飲んだくれている。

このサイトについてのご質問・ご連絡

名前

メール *

メッセージ *

QooQ