KA-BAR(ケイバー) BK2 ベッカーコンパニオン【切れ味を犠牲にした最強ナイフ】

ナイフ沼

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※KA-BARは、Amazon等ではケーバーと表記されていますが、発音表記はケイバーが正しいため、本サイトではケイバーに統一しています。

KA-BAR(ケイバー)は、ニューヨーク州オーリアンの刃物メーカーであるユニオン・カトラリー社に端を発します。先ずは、ユニオン・カトラリーが、KA-BARという変わった名前になった経緯から紐解いていきましょう。


昔、アラスカのハンターが、コディアック熊(ヒグマの亜種)に遭遇した時のことです。ハンターは、コディアック熊を傷つけましたが、致命傷には至らず、熊を怒らせてしまいました。怒った熊に襲い掛かられたハンターは、ライフルを落としてしまいます。しかし、ハンターは、持っていたユニオン・カトラリー社のナイフで対抗し、コディアック熊を見事に仕留めました。
一命をとりとめたハンターは、感謝の気持ちを伝えるために手紙を書き、ユニオン・カトラリー社に熊の毛皮と共に送りました。その手紙には、自分が“K’d A Bar”した様子についても書かれていたそうです。
“K’d A Bar”はアラスカのハンター言葉で“Killed a bear(熊を殺した)“という意味で、この“K’d A Bar”から派生して、KA-BARという商標が生まれました。
KA-BAR 2020 Product Catalogより筆者訳)

1219C2 出典:ウィキペディア

KA-BARの名は、第二次世界大戦によって広く知れ渡ることになります。当時、米国海兵隊に採用された軍用ナイフ1219C2は、海兵隊協力の下、ユニオン・カトラリーにより開発されました。1219C2は、軍用品として短期間で大量に必要となったため、ユニオン・カトラリー以外のメーカーからも多く納品されましたが、ユニオン・カトラリーは、自社製造のナイフのリカッソにKA-BARの名を刻んで出荷しました。
1219C2が採用される以前は、汎用性が高く、戦闘にも使える優秀なナイフが無かったため、1219C2は多くの兵士から支持されます。そして、その兵士たちは、その優秀なナイフのことをKA-BARと呼んだため、その名が知れ渡ることになりました。1219C2は、戦後は軍用以外のハンティングなどの場面でも多く使われるようになり、KA-BARの名もそれと共に広がっていきました。その結果、ユニオン・カトラリーは1952年に社名をKA-BARへと変更することになります。
KA-BARは、今でも多くの軍用ナイフを開発・製造しており、米国海兵隊を始めとする様々な部隊で使われています。KA-BARのカタログを見ると、多くのタクティカルナイフが掲載されています。

さて、今回取り上げるBK2 ベッカーコンパニオンは、KA-BARがデザインしたのではなく、BECKER KNIFE & TOOLという会社がデザインし、KA-BARが製造・販売しているナイフです。


BK2の紹介サイトには、「キャンプや狩り、野外で長時間過ごす時に最適」と書いてあります。


そして、「キャンプファイヤー・チリの玉ねぎを刻むことは言うまでもなく、狩猟した獲物の皮をはいだり、関節を外したりするのと同じように、薪割をハッピーにさせます!」だそうです。
まあ、つまりは、料理から薪割まで何でもこなせますよと言うことらしいですが、そんなことは全くありません(笑)!!


既に、こちらの記事でも書いている通り、確かに薪割はハッピーに出来ます。非常識なまでに分厚いブレードは、エッジ角15度のセイバーグラインドと相まって、薪を割り広げるパワーは伊達ではありません。
しかし、それがために、切れ味、コントロール性、携帯性などの他の面では全て落第点です。
流石に私も狩猟はしないので、シカやイノシシが解体しやすいのかは分かりませんが、まあ、キャンプではそんな機会は無いので評価対象外としておきます(笑)。

鋼材は、アメリカ人が大好きな、1095ハイカーボンスチール。これにクロムとバナジウムを添加した、KA-BAR社オリジナルの1095Cro-Van鋼が使われています。
クロムは耐食性が向上しますが、添加量によっては炭素量が減るので、硬度が低下し切れ味が悪くなります。ちなみに、クロムを10.5%以上添加し、炭素含有量が1.2%以下になった鋼材がステンレスです。バナジウムは、耐摩耗性と靭性をアップしつつ、金属粒子を微細化することで切れ味を向上させることができるので、高性能なステンレス鋼材などで使われています。
1095Cro-Van鋼は、元となる1095にクロムとバナジウムを添加することで、切れ味と耐摩耗性を向上しているようです。ただ、あくまで炭素鋼ですので、ステンレス系の鋼材ほどは添加されていないようですから、効果は限定的と言えるでしょう。
炭素鋼ですので、当然錆びやすく、その対策としてブラックパウダーコーティングが施されています。このコーティングがまた曲者で、厚みはあって強度もそれなりなのですが、汚れ落ちが悪く、料理などの場面ではとても使いづらいです。また、バトニングをすると、コーティングに木屑が貼りついて取れなくなります。

とまあ、色々と厄介な面があるBK2ですが、全体的な評価をしていきたいと思います。

切れ味


まあ、切れ味は炭素鋼ですので、研げばそれなりに切れます。箱出しではダメダメですが、しっかり研いでやれば、コピー用紙もそこそこ切れるようになります。問題は、セカンダリーエッジの角度です。箱出しでは約37度とかなり鈍角で、この角度ではお世辞にも切れ味が良いとは言えません。私は、だいたい30度ぐらいが耐久性と切れ味のバランスが良いと思っているので、BK2は箱出しでは鈍角過ぎます。
ただ、この刃厚が7mm近くに達する、重量426gというべらぼうに重いナイフの利用方法を考えると、40度前後の角度にしておいた方が、遠慮なく何でも切れて刃持ちも良いナイフになるので、切れ味を追求するナイフでは無いと考えれば妥当です。それに、たとえセカンダリーエッジを研ぎ上げても、プライマリーエッジが約15度もあるので、ブレード全体の食い込みが悪く、よく切れるナイフを目指すには無理があります。
硬度は56-58HRCと、最近のナイフとしては少し低めですが、これも、耐久性重視であまり硬度を上げていないのだと思います。

耐久性

BK2とONTARIOのRAT-5の比較。
どちらも5インチクラスのナイフ。

刃厚はRAT-5が実測5mm弱、BK2が約7mmと、差は2mmほどだが、それ以上の差に感じる。

分厚いセイバーグラインドですから、セカンダリーエッジさえしっかり付けておけば、十分な耐久性を発揮してくれます。カタログスペック上は、刃厚0.25インチ(6.35mm)ですが、私の持っている物をノギスで測ると、ほぼ7mmあります。分厚いコーティングのせいかもしれませんが、いずれにせよ物凄い厚みです。厚みだけでなく、ブレード付け根の幅も42.5mmと、かなり太いので、バトニングで折れる心配もありません。おそらく、折れ・割れというようなブレードを破壊するような衝撃や曲げに対しては、世界最高レベルの耐久性を誇っていると思います。
刃もちについては炭素鋼なのでそれなりですが、研ぎやすいので、多少エッジが痛んでも、すぐに研いで直すという使い方が向いています。

握りやすさ・取り回し


ザイテルのハンドルですが、ブレード付け根とエンドの部分が丸く膨らんだ独特の形状をしており、ここが一番好みの分かれるところでしょう。私にとっては正直あまり握りやすくありません。また、ハンドルにはチェッカー等が入っていないため滑りやすく、このおデブなナイフを振り回すには不安があります。


ハンドル自体の留めも、ボルトで固定されているのですが、そのボルト周辺が大きく窪んでいるため、ゴミがたまりやすく衛生面でも料理に使うのは憚られます。


フルタングですが、ハンドル内の一部が肉抜きされており、重量バランスは、ちょうどブレード付け根付近に調整されています。

使い勝手


ブレード形状は、スパイン側がやや直線的なドロップポイントで、刃厚もあるため、ポイントの刺さりはかなり悪いです。そのため、出刃包丁替わりに使うのは躊躇します。また、パウダーコーティングが荒いため、コーティングに引っかかって身離れが悪く、汚れも落ちにくいので、調理には向かないナイフです。
とにかく、デカくて重いので、フェザースティック作りや、リンゴの皮むきというような繊細さを要求される場面は滅法不得意です。もちろんナイフですので、やろうと思えばやれますが、BK2を使うぐらいなら、スパイダルコのデリカなど小型のフォールディングナイフを併用した方が遥かに幸せになれます。


バトニングによる薪割りは得意分野ですので、大雑把なクラフトや、穴掘りなどであればその威力を遺憾なく発揮してくれます。


グリップエンドもごっつい鋼材がむき出しになっていますので、ペグを打ち込むこともできると思います。


シースは、プラスチック製(BK2)と、ナイロン製(BK22)がありますが、プラスチック製は固すぎて抜くのが大変なので、ナイロン製シースをおすすめします。

総評

繰り返えしになりますが、とにかくデカくて重いナイフですので、汎用性の高いバークリバーブラボーやファルクニーベンF1に比べると、同じナイフとはとても思えません。重量426gというのは、最早計量に失敗した格闘家のようなもので、いくら強靭とはいえ、切れ味は悪く、ナイフとしては極めて使いどころが難しいナイフです。
YouTubeには、アメリカ人がBK2をレビューしている動画が多数アップされていますが、その中でBK2をBeast(野獣)と評しているのを見ていると、妙に納得してしまいます。BK2以外には、ESSE-5という同等のスペックのナイフがありますが、そちらもアメリカのナイフレビューサイトではbehemoth(巨獣)と称されています。

最後に、BK2の紹介サイトから引用します。

Devastating cutting power – proven in the world's most challenging environments
壊滅的な切断力 – 世界で最も困難な環境で実証済み

そらそうやろ!!



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沼にハマると抜け出せなくなる性格の40代おっさん。関西出身で現在は東京都在住。嫁と娘の3人家族で年間30泊ほどキャンプに行って飲んだくれている。

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