保冷剤と氷はどっちが冷える!?クーラーボックス活用術

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夏のキャンプに欠かせないアイテムが、クーラーボックスです。
デイキャンプや、夕方からキャンプ場に入る短い1泊2日のキャンプであれば、発砲スチロールの箱や、ソフトクーラーなどでも賄えなくはないですが、キャンプ場でまる一日以上過ごすような本格的なキャンプでは、それなりのクーラーボックスが必要となります。


一方、ある意味、クーラーボックス以上に重要なのが、保冷剤や氷を使った保冷方法ですが、最も誤解が多いのも事実です。

今回は、クーラーボックスと保冷の関係について、私の活用術も踏まえてお伝えしたいと思います。

クーラーボックスの役割

ちょっと、高校物理あたりを思い出して頂きたいのですが、熱力学には、エントロピー増大の法則というのがあります。これは、周辺より高いエネルギーの物体は、エネルギーを周囲に放出して、均一化しようとする法則です。例えば、部屋の中に、100度の熱湯をコップに入れて置いておくと、次第に熱湯の熱エネルギーが、より温度の低い空気中に移動し、最後は室温と同じになります。この時、熱湯から空気中に移動した熱エネルギーによって、室温は僅かに上昇します。
逆に言えば、キンキンに冷やしたペットボトルをそのまま放置しておくと、部屋の空気中の熱エネルギーがペットボトルに移動して、室温と同じ温度にしようと働きます。そのため、物を冷えた状態で保つためには、断熱して周囲を一定の温度に保つ必要があります。この、断熱の役割をしているのが、クーラーボックスです。

断熱とは、エントロピー増大の法則によって、熱エネルギーが高い所から低い所に移動しようとするのを防ぐことですが、物理学上、100%断熱することはできません。ですから、熱エネルギーが移動しようとするのを、如何に遅らせるかがキモになります。ここで活躍するのが、断熱材です。

断熱材と熱伝導率の関係

断熱材には、できるだけ熱伝導率の低い(熱が伝わりにくい)物質を選ぶ必要がありますが、熱伝導率は、個体>液体>気体の順で低くなります。
熱伝導率の例を挙げると以下の通りです。

鉄:83.5
氷:2.2
水:0.582
乾燥空気:0.0241
※水は10°C、それ以外は0°Cの場合

断熱材として、空気がいかに優秀か分かります。
ところが、空気にも欠点があります。空気は常に移動してしまうため、温まった空気が冷たい空気の方へと対流してしまいます。冷たい物質に触れた温かい空気は、熱エネルギーを放出して、再び暖かい空気と入れ替わります。これを繰り返していると、いかに空気が優秀な熱伝導率を誇っていても、冷たいもが直ぐ温まってしまいます。部屋の中に置いたコップの中の熱湯が、直ぐに冷めてしまうのは、空気が対流することで、熱エネルギーを放出する手助けをしてしまうからです。
そこで、開発されたのが、発泡スチロールや、発砲ウレタンなどの、空気を大量に含んだ物質です。発泡スチロールは、ポリスチレンの中に無数の空気の粒を閉じ込めた物で、体積の98%が空気でできています。この、「閉じ込めた」というのがミソで、ポリスチレン内で小さな粒として閉じ込められた空気は、動くことができないため、対流が起こらず、本来の熱伝導率の低さを発揮することができます。分かりやすく言えば、空気の気体の特性をもったまま個体化させたものが、発泡スチロールや発泡ウレタンということになります。

断熱性の面では真空が一番

さて、実は断熱で理論上一番効率の良いのが真空です。熱エネルギーは、空気などの物質を媒介して移動するので、真空状態にすると媒介物が無くなり、簡単に移動できなくなります。但し、熱エネルギーは赤外線としても発散されるため、真空状態でもエネルギーを放射することができます。太陽の熱が、真空の宇宙を通って地球に降り注いているのと同じことです。
断熱性の面では、発泡スチロール<発泡ウレタン<真空パネルの順で高くなります。しかし、真空パネルは加工が難しく、価格も高価になるため、アウトドア系のクーラーボックスでは採用されておらず、シマノやダイワなどの釣り具メーカーのクーラーボックスでのみ採用されています。これには、理由があります。釣り、特に磯釣りは、クーラーボックスだけでなく、釣り具一式を自力で運ばなければなりません。特に、地磯と言われる地続きの磯場は、駐車場などから30分以上歩くことも珍しくなく、その行程もクライマー顔負けの断崖を超えていく場合もあるぐらいですから、できる限り軽く、コンパクトにする必要があります。関東在住の方であれば、東伊豆の城ヶ崎海岸に行ったことがある方も多いと思いますが、あの溶岩でできた切り立った崖を登り降りしながら釣り座に入るのですから、かなり大変なことがお分かりいただけると思います。しかも、夏の夜釣りとなれば、午前中から翌日昼頃まで24時間以上にわたって磯の上で過ごすこともありますので、30度以上の気温と直射日光に耐えられるスペックが求められます。
そこで、行きついたのが真空パネルという訳です。断熱性を高めるだけなら、YETIのように、発泡ウレタンの量を増やすことでも解決できますが、そうすると、本体が大きく、重くなってしまいます。釣り具メーカーのクーラーボックスで、ハイスペックモデルに真空パネルが使われているのは、断熱性と軽量・コンパクト性を両立するためです。

保冷剤と氷のどちらの方が良く冷えるの?

さて、どんなに高性能なクーラーボックスを使っても、100%断熱することは不可能なため、冷蔵品を入れていると、だんだんと温度が上がってしまいます。これを防ぐために必要
となるのが、保冷剤や氷などです。保冷剤などから冷気を出す(厳密には熱エネルギーを吸収させる)ことによって、クーラーボックス内の温度上昇を防ぐことができます。
では、保冷剤と氷はどちらが優秀なのでしょうか。
先に答えを言ってしまうと、保冷力は、比熱と体積によるため、大きい方が能力が高いです。保冷材の中身は殆ど水ですので、成分的には氷と変わりません(詳細は後述)。ですから、保冷剤を使うより、より大きな板氷を使う方が保冷力に優れます。
中学校理科を思い出していただきたいのですが、下記は氷が溶ける時の温度変化を表したグラフになります。


水は、0°Cで氷になりますが、氷は更に冷やし続けると、どんどん温度が下がります。家庭用冷凍庫は-18~20°C程度ですから、冷凍庫で水を凍らせると、氷の温度は-18°C以下まで下がります。
その氷を取り出して、室内に放置すると、氷の温度が上昇し、0°Cになります。その後、氷が解けていきますが、氷が解けきるまでは0°Cのままです。これは、解けた水の温度を上昇させるためのエネルギーが、全て氷を解かすエネルギーとして使われるからです。その後、全ての氷が解けるまで、温度は上昇しません。
以上の通り、氷の体積が大きいほど、長時間保冷することができます。

細かい話をすると、氷の温度は、冷凍庫から出した時点の-18°C以下を保ち続けます。氷が熱エネルギーを吸収して、周囲から溶け出すため、周囲の温度は0°Cまで上昇しますが、芯の方は元の温度のままです。


そのため、氷を冷やせば冷やすほど、保冷力は高まります。理想を言えば、冷凍マグロの業務用冷凍庫であれば-60°Cまで冷やせるので、家庭用冷蔵庫の3倍長持ちする氷を作ることができます(笑)。
業務用冷蔵庫欲しい~。

さて、ここまで来て反論する方もいらっしゃると思います。氷と保冷剤を入れていたら、保冷材の方が長持ちしたという経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。では、なぜ氷より保冷剤の方が長持ちするのでしょうか。
保冷剤の中身は、殆どが水で、ゲル状にするために高分子ポリマー(おむつの材料)などが添加されています。つまり、成分としては保冷材も氷も水が主成分ということになります。氷より保冷材の方が長持ちするのは、水がゲル状になっていることがポイントになります。ゲル状の保冷剤を冷凍庫で凍らすと、氷と同じく-18°C程度になります。成分は殆ど氷と同じですので、同じ容積の氷と同時に取り出せば、ほぼ同時に解けきりそうですが、保冷剤の方が長持ちします。これは、ゲル状にすることで、水の流動性を抑えているためです。クーラーボックスの所で空気の断熱性の話をしましたが、それと同じことで、水も対流することで熱交換率(熱エネルギーの移動効率)が上がり、冷気を放出しやすくなります。水をゲル状にすれば、対流しにくくなるため、熱交換率が低下し、結果として溶けにくくなるのです。
保冷材の持っている冷やす力は、容積に準じますので、同じ容積の氷と能力は変わりません。ただし、溶けにくくすることで、より長時間持つようにはなります。言い方を変えれば、保冷材は氷より冷えにくいということです。ですから、クーラーの保冷のために保冷剤を使うのは、実はあまり意味がありません。

冷凍食品を保冷し続けるためには保冷剤が必要

さて、氷と保冷力が変わらない保冷剤ですが、唯一使うメリットがあります。より、低温にしたい場合は、-14~16°Cの氷点下対応の保冷剤が有効です。


氷の溶ける温度は0°Cですから、理論上は氷を使って保冷すると、クーラーボックス内は0°Cまで下がります。実際には熱交換効率や対流の問題で、5°C程度となります。この温度では、アイスクリームや冷凍食品などが溶け出してしまいます。アイスクリームなどは、氷と密着させておくことで、0°C付近に保つことはできますが、肉などの冷凍食材については注意が必要です。
冷凍庫の温度は、-18°C以下とするよういJIS規格で決められています。これは、細菌などの活動を抑えることができるのが-18°C以下だからで、0°C近くになると、細菌などの微生物が活動しだすため、食材の傷みにつながります。そのため、肉などの冷凍食材を氷で長時間保存するのは、食中毒の原因になりかねないため注意が必要となります。
そこで登場するのが、氷点下対応の保冷剤です。氷点下対応の保冷剤は、水と高分子ポリマーに、添加剤を加えて、氷点(凍り始める温度)を-15°C前後に調整してあります。氷が解ける温度の説明をしたグラフを思い出してもらいたいのですが、氷が0°で溶けるのに対し、氷点下対応の保冷剤は-15°C前後で溶けます。分かりやすく言えば、氷に塩を加えると温度が下がるのと同じです。氷に塩を加えることで、水の氷点が下がり、温度がマイナスに下がるのです。
この、より低温で溶けるという性質によって、周囲の温度をさらに下げることが可能なため、氷点下対応の保冷剤を使えば、最大-10°C以下に食材を保つことができます。ですから、2泊以上のキャンプであれば、2日目以降に使う食材は、氷点下対応の保冷剤と抱き合わせにしておけば、傷むことなく新鮮さを保つことができます。

しつこいようで恐縮ですが、氷点下対応の保冷剤でも保冷能力は同じ容積の氷と変わりません。よりクーラーボックス内の温度を下げたい時には有効ですが、吸収できる熱エネルギーは、同じ冷凍庫で凍らせた氷と変わらないということを覚えておいてください。

私のクーラーボックス活用術

単純に保冷力の面から言えば、容量が大きいほど、体積あたりの表面積が小さくなるので有利なのですが、あまり大きすぎると積載面で問題になるのと、中身が減ると冷却効率がかえって悪くなります。そのため、家族3人のファミリーキャンプがメインの我が家では、20L前後のクーラーボックスを使っています。

また、クーラーボックスを頻繁に開けると、その都度冷気が逃げて、保冷力が失われます。そこで、頻繁に開け閉めするようなドリンク類は、別のクーラーボックスを使っています。ジュースやビールなどは、サブとメインのクーラーボックスに分けて入れておき、サブのクーラーボックスの中身が減ったら、メインから補充するような使い方にすることで、より長持ちさせることができます。

必要な温度によって、クーラーボックスを分けることも重要です。野菜など、あまり低温で冷やす必要の無い食材は、発泡スチロールの箱やソフトクーラーに入れ、凍らせたペットボトルなどと一緒に入れておくだけでも十分です。
お茶のペットボトルを凍らせて、ソフトクーラーで野菜等を冷やすのに使っていれば、野菜の鮮度を保ちつつ、溶けたお茶は飲めるので、一石二鳥です。

クーラーボックスを使う上で、もう一つ心掛けたいのが、予冷することです。どんなに高性能なクーラーボックスでも、暑い部屋の空気のまま使用を開始すれば、入れた保冷剤や氷の冷気をクーラーボックス自体を冷やすことに使ってしまうので、無駄が発生します。


できれば、ペットボトルなどで氷を余分に作っておき、前日からクーラーボックスに入れて予冷することで、更に保冷効果を高めることができます。

クーラーボックス内のレイアウト

高い保冷力を維持するためには、レイアウトというか、上下の順番が重要になります。冷気は下に溜まるので、より冷やしたい物を下に、それほど冷やす必要の無いものを上に入れ、一番上に氷などの保冷剤を入れると効果的です。

先ず、一番下に冷凍食品を入れます。その上に、氷点下対応の保冷剤を入れ、マイナスの温度を保つようにします。クーラーボックスの中に冷凍庫を作るイメージです。
より厳密にやるのであれば、小型のソフトクーラーや発泡スチロールの箱を使うと、冷気が逃げず効果的です。


次に、生ものや、なるだけ冷たく冷やしておきたい物を入れます。肉や刺身など、冷蔵庫であればチルドに入れるような食材を入れておきます。
その上や空いたスペースには、牛乳やドリンクなど、5°C以上でも大丈夫なものを入れておきます。


板氷を入れて、保冷します。


この上や周辺に、野菜など、冷やしすぎない方が良い物を入れておきます。入れる時には、板氷との間に銀色の断熱シートなどを挟んでおくと更によいです。野菜が氷と直接触れていると、そこが局所的に凍ることがあります。


釣り具メーカーのクーラーボックスは、トレーが付いているモデルが多いので、このトレーを、野菜室感覚で使うと、食材の管理がしやすいです。
また、バター、ケチャップ・マヨネーズなど、クーラーボックスにそのまま入れると行方不明になる物を、整理して収納するのにも役立ちます。


シマノ FIXCELシリーズについて

釣りをする私は、クーラーボックスも釣り具メーカーの物を使っています。最近流行りのYETIやイグルーに比べると、見た目は貧弱ですが、保冷力に関しては高い性能を誇ります。既に述べたように、釣り場は、直射日光がガンガン当たる過酷な現場です。波止場であれば、50°C以上に熱せられたコンクリート上に直接置くわけですから、かなりの保冷力が要求されます。


最近、私が愛用しているクーラーは、シマノのFIXCEL PREMIUM(フィクセル・プレミアム)の22Lモデルです。6面真空パネル採用で、高い断熱力を誇ります。スペック上は、4.4Kgの氷を、31°Cの温度下で65時間キープできる能力があります。
実際の使用感としても、食材やドリンクを満載した状態で、1.7kgの板氷2枚で保冷した場合、24時間で3~4割程度、48時間で7~8割が溶けている印象です。開け閉めを1日数回にする、常温の飲料などを追加しないなど、ある程度の管理は必要ですが、板氷2枚で丸2日間持つならキャンプ用途としても十分です。

シマノのFIXCELシリーズには、BASIS(ベイシス)という6面発砲ウレタンのモデルと、LIMITED(リミテッド)という3面(底と側面2面)に真空パネルを使ったモデルもあり、それぞれ、4.4Kgの氷を45時間、55時間キープできます(いずれも22Lモデル)。
価格は、22Lモデルで、BASISが16,000円程度、LIMITEDが24,000円程度、PREMIUMが32,000円程度と、保冷スペックが10時間毎に約8,000円高くなります。

更に極厚の真空パネルを採用し、4.4Kgの氷を78時間キープできる、ULTRA PREMIUM(ウルトラプレミアム)というモデルもあるのですが、いささかオーバースペックなのと4万5千円前後とお高いので、私にとっては購入対象外です。

コスパ的には、BASISでも十分だと思います。板氷2~3枚で2日近く持ちますので、夏場のキャンプでも、安心して使うことができるはずです。







釣り具メーカーのクーラーボックスは、魚を保冷することが主目的なので、高さがあまりなく、2Lのペットボトルを立てて入れることはできません。そういった用途であれば、アウトドアメーカーのクーラーボックスしか選択の余地は無くなると思います。
私がクーラーボックスの大きさに拘っているのは、できる限り、車の車内にクーラーボックスを置いておきたいからです。車内2列目以降の足元などに置いておけば、トランクなどに置いておくより、気温を低く抑えることができるため、保冷の面で有利となります。
そういった意味では、シマノの17~22L程度のクーラーボックスは、丁度シートの間に置けるので重宝しています。

無骨な、アウトドアメーカーのクーラーボックスも魅力的ですが、スリムで高性能な釣り具メーカーのクーラーボックスも一度活用してみてください。


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沼にハマると抜け出せなくなる性格の40代おっさん。関西出身で現在は東京都在住。嫁と娘の3人家族で年間30泊ほどキャンプに行って飲んだくれている。

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