最強のバトニングナイフはこれだ!!厳選7本をご紹介

2021年9月3日

ナイフ沼 焚火

t f B! P L
バトニングとは、刃物を木の棒などで叩いて、ブレードを力づくで対象物に食い込ませることを指します。ナイフの場合はスパイン(峰)を叩くことになりますし、斧であれば斧頭を叩く行為をバトニングと呼んでいます。


ですから、バトニングは、直径が比較的細い木を切り倒したり、枝に切り込み(ノッチ)を入れたりする時に使われる、汎用性の高いテクニックなのですが、近年のキャンプブームの中、ナイフで薪を割ることをバトニングと呼ぶようになりました。

本当は、薪割りであれば、「ナイフを使ってバトニングで薪を割る」というのが正しい表現なのですが、バトニング=ナイフを使って薪を割る行為として浸透してしまいました。
┐(´д`)┌ヤレヤレ


そんな事で、キャンパーの中にも浸透してきたバトニング、私はナイフを30本以上持っていますから、これまでに使ってきたナイフも含めて、最強と言えるバトニング向きのナイフを厳選してみたいと思います。


バトニングで薪を割る方法

先に、念のためナイフで薪を割るバトニングのテクニックについて簡単に説明しておきます。ご存じの方は、読み飛ばしてください。

バトニングの方法は、説明すると単純です。薪にナイフのブレードを当てて、上からスパイン(峰)を別の薪でぶっ叩くだけです。


スパインが完全に薪にめり込んでしまったら、ポイント(刃先)側を叩きます。



叩いているうちに、ポイント側が下がりすぎてナイフが斜めになることがありますが、そんな時は、ハンドル側を叩いて地面と水平に戻します。
これで、薪が割れます。

薪割り用に、バトン(太い棒)を用意するという方法もありますが、そんなことをしたらナイフ一本で薪を割るというミニマルなやり方に反しますので、手頃な薪や枝を使いましょう。

薪割りは斧よりナイフの方が安全はウソ!?

さて、バトニングですが、本来であれば斧を使うべき場面で、あえてナイフを使って割るということになります。一応、斧の名誉のために言っておくと、「薪割りは斧よりナイフの方がラク」とか「ナイフの方が安全」などと言う間違った知識がネットで横行していますが、それは斧で薪を割ったことが無い人の言っていることなので、絶対に信用しないでください(苦笑)。


ちょっと考えれば解ることですが、斧、特にスプリッティングアックスと呼ばれる薪割り用斧は、薪を割るための専用斧ですから、これが最も安全かつ楽に薪を割ることができます。
斧の薪割りに興味のある方は、下記をご覧ください。


だいたい、斧の厚みは、薄くても2cmはありますから、厚くても6~7mmしかないナイフと比べれば、斧の方が断然薪が割れやすいことは、ちょっと考えればすぐ分かることです。
じゃあ、なぜ薪割りをナイフでするかというと、やっぱりロマンだからでしょうねぇ(笑)。

これだけ、薪割りを斧でやれと言っている私が、キャンプ場ではナイフでガッツンガッツンやっている訳ですから(苦笑)。

ということで、本気でナイフで薪を割るなら、それなりの条件と言う物がありますから、先ずはそこから押さえていきたいと思います。

最強のバトニングナイフの条件

ブレードの形状

まずは、ブレードの形状です。バトニングで重要なことは、ある程度ブレードを打ち込むと、ブレードのポイント付近しか薪の外に出ていない状態になるため、ブレード先端を叩くことになります。ですので、ブレード先端がなるだけ頑丈な構造になっていることが望ましいです。所謂サバイバルナイフに代表されるようなクリップポイントや、突き刺す性能を優先してスウェッジというポイント付近のスパイン側にもエッジ(刃)が付けられているナイフは、バトニングする場合は強度的にも不利ですし、叩く力がブレードにしっかりかからないのでバトニングの効率も悪くなります。


以上の点を踏まえると、スパイン側が直線状で叩きやすい、ドロップポイントと言われる形状が最も向いています。

グラインドの形状

次は、ブレードのグラインド形状です。グラインドとは、ブレードの形状を削り出すことを指し、グラインドによって断面が異なります。


形状を見てもらうと分かる通り、ホローが最もエッジ部分が細く、コンベックスが最も太くなっています。チゼルは、枝払い用の鉈などに見られる片刃のもので、一般的なナイフでは殆ど見られません。


斧はコンベックスグラインドになっています。コンベックスは、エッジが鈍角になっているため、衝撃や硬い物を切断するにあたって、ロール(曲がり)やチップ(欠け)に強いという性質があるためです。また、鈍角であるほど、薪を押し広げる力が強いため、薪を割りやすくなります。
ちなみに、コンベックスは、割り進む時に薪との接点が少ないため、摩擦抵抗が少ないという意見がありますが、はっきり言ってバトニングに関しては都市伝説です。バトニング時は、どんなグラインド形状でも薪にブレード全体が食い込んでいるので、摩擦抵抗が少ないと感じることはありません。

セイバーは、コンベックスに次いで鈍角になります。刃厚にもよりますが、コンベックスに並んで高い強度を誇ります。セイバーとコンベックスどちらにも言えることですが、ブレードの角度がどれぐらい鈍角になっているかが、耐久性に影響を与えます。ナイフは、スパインが最も厚みがあり、エッジに向かって薄くなっていきます。そのため鎬(しのぎ)の幅が広いほど鈍角になるため、耐久性が上がります。


コンベックスといえど、フルハイトグラインドと言われるようなスパインからコンベックスにしてしまうと、耐久性はセイバーより落ちることになります。

出典:UNIFLAME

ちなみに、鉈はセイバーグラインドです。鎬の幅が長く、エッジ付近まで鎬になっているので、ブレードが非常に鈍角になっています。刃厚も5~8mm程度あるので、高い耐久力を誇ります。

フラットグラインドは、刃厚にもよりますが、セイバーよりは刃の先端付近が細くなっているので、強度的には劣ります。但し、その分ブレード全体が鋭いので食い込みは良くなります。

ホローは、ブレード面を削って窪ませているため、強度的に劣ります。但し、食い込みは良く、窪んでいる部分に薪の切断面が当たらないため、理論上は摩擦抵抗に勝ります。

ちなみに、各グラインドとも、セカンダリーベベル(マイクロベベル)というエッジ部分を少し鈍角に研いで、ロールやチップに対処しているのが一般的で、バトニングを行う上でも、しっかりとセカンダリーベベルが付いているのが望ましいです。
また、エッジにロールやチップが発生しても、セカンダリーベベルだけ研げばエッジが復活するので、メンテナンスも楽になります。

刃厚

刃厚は、ブレード全体の強度に一番関係します。当然ですが、厚ければ厚いほど強度が高く、刃欠けやブレードが折れるなどのリスクが低くなります。また、厚いほど割る力が強くなるので、バトニングによる薪割りでは有利となります。薪割りは、エッジの切れ味は関係なく、食い込んだブレードが楔のように薪を左右に押し広げる力が重要となるため、刃厚が厚い方が有利になります。
バトニングするナイフはフルタングが良いと言われますが、モーラナイフのガーバーグはフルタングではありますが、刃厚が3.2mmと薄すぎるため、薪を割る力に劣ります。そのため、市販の広葉樹の薪でバトニング可能なのは6~7割といった所です。

ハルタホースのスプリッティングアックス。
中央部分が膨らんだ独特の形状をしている。

斧(特にスプリッティングアックス)は、エッジが鈍角で耐久性に優れ、厚手のブレードが割る力を最大限に発揮できるように設計されていることからも、刃厚がある方が有利なことが分かります。
但し、ブレードが厚いほど食い込みが悪く、グラインド形状にもよりますが、エッジの角度が鈍角になるので切れ味が悪くなります。また、ナイフ自体も重くなるため、取り回しづらくなります。
ナイフはあくまで汎用的な刃物ですので、良く切れて、刃持ちが良く、手に馴染んで取り回しが良く、錆びに強いというのが理想ですが、バトニング向けナイフは、切れ味と取り回しの点ではマイナスとなることが前提となります。

余談ですが、いくらナイフが汎用的な刃物といっても、やはり各場面にあったナイフというのはあるので、用途によってある程度のわりきりは必要となります。1本のナイフで全てを賄うというのはやはり無理があるので、バトニングやチョッピングなどパワーが必要となる場面と、食材やロープを切ったりフェザースティックを作るなどより繊細な動作が要求される場面では、ナイフを使い分けるのがベターです。
私は、いくつかのパターンでナイフを使い分けていますが、バトニングはブラボー1.5、細かい作業はブラボーEDCという組み合わせが多いです。
それ以外では、ハクスバーナのキャンプ用斧とファルクニーベンF1やモーラコンパニオンヘビーデューティーステンレスなどの組み合わせがあります。あとは、これにレザーマンのスケルツール、スパイダルコやベンチメイドの折り畳みナイフなどが加わります。
まあ、いずれにせよ用途別に使い分けるのが肝心ということです。おかげで、どんどんナイフが増えていきますが・・・。

フルタング

以前詳しく書いていますので(詳しくはこちら)簡単に書きますが、タング構造はフルタング(ブレードの鋼材をハンドルで挟み込んだ形状のナイフ)かそれに近い形がベターです。



バトニングはてこの原理で割るので、ブレードのつけ根周辺に力が集中します。そのため、つけ根付近が細いナイフではぽっきり逝ってしまいます。別にフルタングでなくても、ファルクニーベンF1のように、ブレード鋼材が比較的太いまま、グリップエンドまで通っている形状であれば大丈夫です。
一番気を付けなければならないのは、ブレード長が15cmを超える大型ナイフで、つけ根が細い場合です。ブレード長が長いほど、先端をバトニングした時の力がてこの原理で増幅され、つけ根に集中するので、太いと思っていても折れる場合があります。ボウイナイフ、ランボーナイフなどと言われるタイプのサバイバルナイフは、刃長が長い割にはつけ根付近が細くなっている場合があるので、注意が必要です。

鋼材

バトニングにおいて、最も重要なのが靭性(粘り)です。ナイフは靭性が高いほど、折れ難く、衝撃にも強いです。実は、切れ味や耐摩耗性(刃持ち)を考えると、硬度が高いほど良いのですが、硬度と靭性はトレードオフの関係にあるため、高硬度のナイフほど、脆く折れやすいということになります。そのため、あまり切れ味や刃持ちの良くないナイフの方がバトニングには向いています。
実は、今回取り上げるナイフのうち4本は、1095高炭素鋼が使用されています(BK2のみ改良型の1095Cro-Van鋼)。1095高炭素鋼は、安価な鋼材ですが、熱処理によってロックウェル硬度52~68HRCという広い範囲で硬度調整が可能です。最大硬度の68まで引き出してしまえばとてつもなく良く切れるナイフに仕上がるでしょうが、バトニング一発で、刃がボロボロになってしまうこと間違いなしです。そのため、ナイフ用としてはだいたい56~58HRC程度に調整されています。56~58HRCというのは、現代ナイフ鋼材の中では決して高いとは言えませんが、靭性・耐久力を考慮するとこれぐらいに落ち着くものと言えます。
一方で、ステンレスや工具鋼と言われる特殊鋼などは、近年の技術革新により、高硬度と靭性を両立させた素材が出てきています。ステンレスは、炭素鋼にクロムを添加することで錆びにくくした金属ですが、添加したクロムが炭素と結合するため、鋼材内の炭素量が下がり、硬度が低くなるという欠点がありました。そのため、かつてはステンレスは錆びないが切れ味が悪いと言われていました。しかし、クロム以外に、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、バナジウム(V)など各種の鉱物を加えることで、硬度、靭性、耐摩耗性、耐食性を向上させたステンレスが登場しました。特に、ハイテク鋼材などとも言われる粉末冶金鋼などは、非常に高い性能を発揮し、切れ味、粘り、刃持ち、錆びにくさを高いレベルで実現しています。
粉末冶金鋼は、粉末状の金属を金型に入れて圧縮し、高温で焼結して製造されます。金属が微細な粉末状になっていることで、通常の鋳造インゴットよりも金属成分が均一化されているため、高品質で安定した鋼材となるのが特徴です。また、微細金属であるため、粒子が細かく、ナイフエッジがより細かいギザギザ状になるため、硬度以上の切れ味が出るというメリットがあります。

左が粉末冶金鋼、右が通常の金属の写真。
出典:Crucible Industries

そのため、炭素鋼よりも切れ味と耐久性に優れた素材が多く出てきています。代表的なのが、クルーシブル社が開発したCPM3Vです(CPM:CRUCIBLE PARTICLE METALSの略。クルーシブル社が開発した粉末冶金鋼)。炭素鋼のA2の約2倍の靭性・耐摩耗性があり、切れ味と耐久性を両立しているため、バトニングには最強ともいえる鋼材です。但し、非常に研ぎづらい鋼材でもありますので、万が一にチップしたりすると、回復するのに大変な労力が必要となります。
さて、バトニングに向く鋼材についてですが、理想を言えばCPM3Vのような靭性の高い鋼材ですが、このようなハイテク鋼材は加工に手間がかかり、刃厚が厚くなるほど素材量も多くなるため、コストパフォーマンスが悪い傾向にあります。バトニングは、切れ味よりも割る力が優先されるため、切れ味や耐摩耗性に劣る炭素鋼でも、充分な威力を発揮します。また、炭素鋼は、研ぎやすいという特徴があるため、切れ味が悪くなれば頻繁に研ぐという使い方に向いている点も、バトニング向きと言えます。

刃長

どのような薪を割るのか、あるいは玉切り(丸太を30~40cmの長さに切り揃えた物)から割っていくのかにもよって、必要となる長さは異なってきますが、ここではキャンプユースということをベースに考えていきます。
だいたい市販の薪は、太くても10cm未満ですので、刃長は12cmほどあればバトニングで割ることができます。また、硬い木質のものほど、長さに余裕が無いと割り難いのですが、一般的な薪はナラかクヌギですので、広葉樹としては比較的割りやすい材質となります。ちなみに、杉や松などの針葉樹であれば、2000円程度で売っているモーラナイフのコンパニオンでも十分バトニングできますので、今回は対象外です(笑)。


以上のことから、最強のバトニングナイフに要求される条件は以下の通りとなります。

  • ブレード形状はドロップポイント
  • グラインドは、コンベックスかセイバーで、ポイント付近まで太い物が望ましい
  • 刃厚は、できるだけ分厚いものが良い
  • フルタングに近い構造で、ブレードつけ根が太い
  • 鋼材は炭素鋼でOK
  • 刃長は12cm以上を目安に

では、この条件に合った最強のナイフをご紹介します。
※元スペックがインチ表記のため各スペック値は全て「約」です。誤差があります。

ESEE(エスイー) ESEE‐5

全長:279㎜
刃長:133㎜
刃厚:6.4㎜
刃幅:40㎜
重量:453g
鋼材:1095高炭素鋼(パウダーコーティング)
硬度:55-57HRC
ハンドル材:キャンバスマイカルタ
グラインド:セイバーグラインド

ESEEが販売しているナイフの中で、間違いなく最強のナイフ。
刃厚6.4mmは、このクラスのナイフとしては異常で、しかもセイバーグラインドのため、ナイフとしてはエッジ角が非常に鈍角になっている。構造は当然フルタングで、ハンドル内も肉抜きなどはされていないため、5インチクラスとは思えない重量である。ちなみに、ハンドル中央にある窪みは、bow drill pivot pointという弓錐式火起こしの火錐棒を抑えて固定するための窪みである。
ESEEから販売されているナイフには、より刃長の長い6インチクラスのESEE-6もあるが、こちらは、刃厚約4.8mmと常識的なサイズで(しかも定価も5より安い!)、刃長約213mmのJUNGLAS-IIでさえ刃厚約5.1mmであることからも、ESEE-5が破格の刃厚を誇っていることが判る。
ESEE KNIVESのWEBサイトを調べてみると、ESEE-5は、軍のSERE訓練(Survival,Evasion,Resistance,Escape(生存、回避、抵抗、脱走))インストラクターによって、パイロット向けサバイバルナイフとして設計されたとある。しかし、ESEE社も、この5インチクラスのナイフとしては明らかにオーバースペックであることを認めており、レビューサイトではbehemoth(巨獣)と称されている。
尚、グリップエンドにはグラスブレイカーが装備されている。

【評価】
強 靭 性:★★★★★
バトニング:★★★★★
コ ス パ:★★

KA-BAR(ケイバー) BK2 ベッカーコンパニオン

全長:267mm
刃長:133mm
刃幅:41mm
刃厚:6.4mm
重量:426g
鋼材:1095Cro-Van鋼(パウダーコーティング)
硬度:56-58HRC
ハンドル材:ザイテル
グラインド:セイバーグラインド

ESSE-5とほぼ同等のスペック。そのため、重量も似通っている。違いと言えば、ハンドル内のタングが重量バランス改善のためか、若干肉抜きされている程度。とはいえ、ブレードつけ根まわりはそのままのため、バトニング時の耐久性に問題は無い。
6mmオーバーの刃厚とセイバーグラインドから来る割る力は強烈で、バトニングをするためだけに作られたナイフと言っても過言では無い。
鋼材は、1095高炭素鋼をベースに、クロムとバナジウムを添加して、切れ味と耐摩耗性を向上させた、KA-BAR社オリジナルの鋼材。
パウダーコーティングが厚く、耐久性も高いので剥げ難い。タングが突き出たグリップエンドを、ハンマー替わりに使うこともできる。
難点は、プラスチック製のシースが固すぎてナイフが抜け難い点。ナイロン製シースもあるので、そちらの方が無難。

【評価】
強 靭 性:★★★★★
バトニング:★★★★★
コ ス パ:★★★★

ONTARIO(オンタリオ) RAT-5



全長:265mm
刃長:127mm
刃厚:4.8mm
刃幅:40mm
重量:330g
鋼材:1095高炭素鋼(パウダーコーティング)
硬度:57-59 HRC
ハンドル材:マイカルタ
グラインド:フラットグラインド

オンタリオのRATシリーズは、ESEEを設立したJeff Randallがデザインしたナイフ。当時、RAT(Randall's Adventure & Training) というプロフェッショナル・サバイバル・トレーンング・チームとして活動していたJeff Randallがデザインし、オンタリオから発売された。そのためか、ESEE-5と形状は似ているが、刃厚は約4.8mmと常識的なスペックに抑えられているため、重量も100g以上軽い
グラインドはフラットグラインドで、耐久性とブレードの食い込みのバランスをとったナイフで、HRCもESEE-5やBK2よりやや高め。
バトニング性能もそれなりで、ナイフ単体としての総合力が高いナイフと言える。
パウダーコーティングは、BK2に比べると薄く、耐久性に劣る。
ESEE-5同様、グリップエンドにグラスプレイカーが設けられている。

【評価】
強 靭 性:★★★★
バトニング:★★★
コ ス パ:★★★★

SCHRADE(シュレード) SCHF36 フロンティア


全長:260mm
刃長:110mm
刃厚:6mm
刃幅:不明
重量:376g
鋼材:1095高炭素鋼(パウダーコーティング)
ハンドル材:TPE
グラインド:ホローグラインド

シュレードは、1904年に創業した米国の老舗ナイフメーカーだったが、21世紀に入って倒産。その後復活したが、現在は中国に生産拠点を移している模様。SCHF36は、今回取り上げた炭素鋼モデルの中でも最も安価なナイフである。
刃長は約11cmとやや短いが、刃厚は6mmとバトニング向きの厚さである。ハンドル内も肉抜きされていない本格的なフルタング構造。ホローグラインドである点は、強度的には不利なため、ブレードが欠けるリスクがある。
また、ハンドル材がTPEというポリマー系プラスチックであるため、耐久性には不安がある。

強 靭 性:★★★(外れの場合は★)
バトニング:★★★★
コ ス パ:★★★★★

BarkRiver(バークリバー) ブラボー1.25

全長:250mm
刃長:127mm
刃厚:5.5mm
刃幅:30mm
重量:209g
鋼材:A2鋼
硬度:58~59HRC
ハンドル材:キャンバスマイカルタ
グラインド:コンベックスグラインド

バトニングの代名詞ともなりつつある、バークリバーのブラボーシリーズ。1.25は刃長が127mmと丁度良いサイズで、刃厚も5.5mmと十分。刃幅が他のモデルより10mmほど小さいため軽く、コンベックス角度が鈍角になっているためブレードの強度面でも有利な構造になっている。
当然フルタングで、A2鋼は靭性が高いためバトニングに対する強度も高い。
硬度もそこそこあるため、切れ味も良く、ナイフとしての高い汎用性も両立している。A2は研ぎやすいので、ガンガンバトニングして研いで使うスタイルに向いている。
欠点は、他の炭素鋼と異なりコーティングされていないため錆びやすい点と、値段が高いこと。
ちなみに、A2の2倍の靭性があるCPM3Vという鋼材を使ったモデルもある。

強 靭 性:★★★★★
バトニング:★★★★★
コ ス パ:★

FALLKNIVEN(ファルクニーベン) S1

全長:248mm
刃長:130mm
刃厚:5mm
刃幅:270mm
重量:193g
鋼材:ラミネートVG-10
硬度:59HRC
ハンドル材:サーモラン
グラインド:コンベックスグラインド

スウェーデン空軍に制式採用されているF1よりブレードが長くなったモデル。刃厚が約5mmと十分な厚みがあるので、高いバトニング能力を持っている。
F1同様に、ブレード材には武生特殊鋼材のVG-10(V金10)を420J2で挟み込んだクラッド鋼材を使用。高硬度のVG-10を、より低硬度で粘りのある420J2で挟むことで、耐衝撃性を高めているため、非常にバトニングに強い鋼材。タングもフルタングに近く、グリップエンドまで鋼材がしっかり通っている。
重量も200gを切っているため取り回しが良好で、薪割り以外のクラフト目的としても高い性能を発揮する。
唯一の弱点は、ポイント付近がスウェッジ状に削られているため、バトニングには若干不利な形状となっていること。

強 靭 性:★★★★★
バトニング:★★★★
コ ス パ:★★★

FirstEdge(ファーストエッジ) 5050

米国の海軍特殊部隊NAVY SEALSに採用されているサバイバルナイフ。
靭性、耐摩耗性、耐食性に優れた粉末冶金鋼ELMAXを採用。そのため、バトニング程度では殆ど研ぐ必要が無い。
グローブを着用して使用すること前提としているようで、グリップがかなり大ぶりに作られている。
ESEE-5を意識て設計されており、そのためか重量が約500gと更に増加している。
グリップエンドにはグラスブレイカーが設けられている。

全長:290mm
刃長:133mm
刃厚:6mm
刃幅:不明
重量:500g
鋼材:ELMAX steel
硬度:60-61HRC
ハンドル材:G-10
グラインド:セイバーグラインド

強 靭 性:★★★★★★
バトニング:★★★★★
コ ス パ:★★★

総評

今回選んだナイフの中で最も重いのは、453gのESEE-5です(5050を除く)。だいたい、パイロット向けのサバイバルナイフとして設計されているにも関わらず、なぜ同じくパイロット向けのファルクニーベンF1の3倍の重量になるのか、理解に苦しみます。グラスブレイカーでキャノピーを叩き割って脱出し、戦闘機の鋼板を切り抜いてシェルターでも作るつもりなのでしょうか?

次いで426gのBK2。ESEE-5との差は、ハンドル内を肉抜きしているからかもしれません。
この2本は、最早ナイフと言うより炭素鋼の塊です。いずれもセイバーグラインドで、刃幅も約40mmあるので、バトニングで最も力がかかるブレードつけ根が太く、その耐久性は恐らくブラボーを凌ぎます。

RAT-5は、フラットグラインドということもあって、今回取り上げたナイフの中で最もおとなしいスペックですが、普通のナイフに比べれば十分ごっついナイフです。
バトニング専用となると刃厚などの面では他のナイフに軍配が上がりますが、この中では私はRAT-5を一番おススメします。実用性の面では、やはり刃厚が非常識なほど厚くなく、ブレード形状も含めて、切れ味は明らかにBK2などより上です。ただ、RAT-5ですら、ハンドルは日本人の手には大きすぎるため、ファルクニーベンなどに比べれば握りにくいです。

SCHF36は、アマゾンでも5千円前後とコスパは最強ですが、品質に不安があります。最近はだいぶ良くなってきたとは言え、中華製ナイフは製造時のばらつきが多く、当たりはずれがあります。特に炭素鋼は、焼き入れ・焼き戻しの温度管理がシビアなため、温度や時間管理を間違うと、脆くて折れやすいナイフになります。アマゾンのレビューを見ていると、外れと思われる個体を引いたらしい折れ具合のナイフが散見されるので、強度的にも不利なホローグラインドと相まって、バトニングに積極的に使うには不安が残ります。

さて、正直いずれのナイフも甲乙つけ難いのですが、コスパ面では5千円から3万円以上と大きな差が出ています。
ESEE-5はコスパの良い1095高炭素鋼にも係わらず、2.5万円程度するのでコスパは悪いです。
BK2はアマゾンでも1万ちょいで常時販売されており、かなりコスパの良いナイフです。
RAT-5も、1万円~1.5万円で買えるのでコスパは良いです。
SCHF36は、5千円前後と最安値です。

1095高炭素鋼以外では、定番のバークリバーとファルクニーベンを入れていますが、コスパではBK2に劣ります。S1が最近少し安くなっており2万円ほどで購入可能ですが、それでもBK2は半額近いので、バトニング専用と考えるとBK2に軍配が上がります。
ブラボー1.25はやっぱり高くて軽く3万オーバーなので、バトニング用ナイフとして購入するには高すぎます。もっとも、ブラボーは汎用性の高いナイフですので、バトニングもできるナイフとして購入するのであれば価値はあると思いますが・・・。
一つだけ、決定的な差は、ファルクニーベンやバークリバーは、ハンドルが握りやすいという点です。今回はバトニングに特化して評価しているので、総合力としての使い勝手は評価していませんが、ESEE-5、BK2、RAT-5は、いずれもハンドルが大きく、握りやすくはないので、ナイフとしては決して使いやすいとは言えません。

最後の5050ですが、価格は3万円以上しますが、最新の粉末冶金鋼であるELMAXを使ったナイフとしては、破格の値段です。ELMAXは最近のバークリバーのナイフでも多く採用されていますが、500g近く使ってこの値段ならお得感があります(笑)。
ELMAXは耐食性にも優れるため、SEALSが採用したのもうなずけます。錆に強いだけでなく、耐摩耗性にも優れることから、とても刃持ちが良く、米国のナイフレビューサイトでも、殆ど研ぐ必要が無いと評されていますので、バトニングはしたいけどメンテナンスは面倒という人には向いています。
それにしても、ESEE-5をベンチマークにするなんて、米軍はよっぽどマッチョで重いナイフが大好きなんですね~。
あ、ひょっとすると、5050はダイビングウェイトの代わりかもしれません。重量が500gというのは、ほぼ1ポンド(453g)のダイビングウェイト1個分に相当します。流石はSEALS!?

以上、総合的評価としては、KA-BARBK2最強のバトニングナイフの称号を贈りたいと思います。恐らく、このナイフでバトニングして折れるようなことはまず無いと思います。刃厚がブラボーの5.5mmより約1mmも厚く、重量差217gと倍以上の差があるので、このナイフを折るというのは、よっぽどの使い方をしないと無理だと思います。勿論、バトニングについても、分厚いセイバーグラインドから生み出されるパワーは凄まじく、メリメリと薪を割っていきます。
次点は、FirstEdge5050です。約6mmの刃厚といい、500gの重量といい、おそらく今回取り上げたナイフの中で強靭性(狂人性?)は一番です。錆に強く刃持ちが良いELMAXの塊と思えば、3万円強の値段にも納得できます。ただ、バトニングだけで言うとコスパではBK2に負けます。車の解体なら勝つと思いますが(笑)。

5インチクラスの炭素鋼ナイフの中では、ESEE-5とBK2のガチンコ対決になりますが、刃厚・刃長・刃幅が拮抗しているので、強靭性とバトニング力は全くの互角と言えるでしょう。
BK2はザイテルのハンドルが滑りやすく、独特の膨らみのあるデザインも好みの分かれるところですし、全体的な作りではESEEに負けます。
ESEE-5のハンドルは、キャンバスマイカルタですが、ざらっとした表面加工がされているので、素手でも滑りにくくなっています。また、ESEEは、鋼材の熱処理(焼き入れ、焼き戻し)に定評があり、品質面ではやはりESEE-5が上だと言えます(RAT-5もBK2同様値段相応の品質)。ただ、その品質が2倍以上の値段差を埋めるだけあるかと言われると微妙です。
絶対に使わないと断言できるbow drill pivot pointと、キャンプ場ではやっぱり使うことのないグラスブレイカーがどうしても必要と言うのでなければ、値段が半額以下のBK2を買うことをおススメします。どうしてもグラスブレイカーが必要なら、BK2とRAT-5を買うという手もあります。2本買ってもお釣りがくるはずです(笑)。
もちろん、ESEEと言うブランドを買うという選択肢もアリですが・・・。

ちなみに、それでも強度に心配がある方は、下記の動画をご覧ください。



ハチャメチャなアメリカ人が、バトニングはおろか、レンガみたいなのを砕いたり、スチールフレームをバトニングで切断したりと、とんでもないことをやってますが、BK2はビクともしません(笑)。

ESEE-5との対決も見ものですので、興味がある方はこちらもどうぞ。



以上、最強のバトニングナイフについていかがでしょうか。
気に入ったナイフがあれば、是非使ってみてください。

紹介したナイフを実際にバトニングしてみました!!
最強のバトニングナイフ厳選4本を試す!!





















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