武井バーナー|パープルストーブ【コンパクトで高火力な冬キャン向け最強ストーブ】

2020年1月17日

キャンプ沼 バーナー

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武井バーナー

キャンプ歴がある程度ある方であれば、この名を一度は聞いたことがあると思います。一見するとランタンにも見えるこのバーナーこそ、武井バーナーの俗称で愛されるパープルストーブです。

私の301A。かなり煤だらけになっているが、性能に影響は無い。
ブリキのケースが付属している。

パープルストーブは、東京都葛飾区にある武井バーナー製造株式会社が製造しているケロシン(灯油)バーナーです。その最大の特徴は、ヒーターアタッチメントが付いており、石油ストーブとしても強力な暖房器具になる点です。

強力な火力でツールームテント内を温めることができる武井バーナー。
これのおかげで、真冬にキンキンに冷えたハイボールを楽しむことができる。

パープルストーブは、タンク容量が2.8リットルの501Aと1.2リットルの301Aの2種類があり、501Aには圧力計が付いています。どちらも出力は同じで、501Aが連続8時間、301Aが連続4時間の運転が可能となっています。

タンクは真鍮製。コーティングされていないので汚れが目立つが、ピカールなどで磨いてやれば、新品の美しさを取り戻すことができる。

パープルストーブは、加圧式バーナーですので、灯油を気化して燃焼させるため、高効率・高出力というのが特徴です。そのため、同じく灯油を使う一般的な対流型ストーブよりもはるかに高い出力を誇っています。


キャンプでよく使われているトヨトミのレインボーストーブは、約2150kcal/hですが、パープルストーブはその倍ぐらいの暖かさがあります。大きさは、301Aで直径160mm、高さ330mmなのに対し、トヨトミレインボーが直径388mm高さ485.7mmと、容積比にして約35分の1と比較にならないぐらいの小ささにも関わらず、この出力差は流石というしかありません。


ちなみに、灯油を使うキャンプギアとしては、ペトロマックスHK500に代表されるケロシンランタンがありますが、こちらも同様に高い出力(光量)を誇っています(詳しくはこちら)。

ケロシン(灯油)バーナーとは

現在、アウトドア用に作られたバーナーといえば、手軽なガスカートリッジ式かガソリンのどちらかだと言ってよいでしょう。昔は、これに加えて灯油バーナーの3種類がしのぎを削っていました。特に灯油バーナーは、最も火力が高く、燃料代も安価だったため、山岳用バーナーとして重宝されていました。
しかし、やはりプレヒートに時間がかかる、こぼすと匂いが気になる、揮発性が低いので手につくときれいに拭き取れないなど、灯油に特有の欠点が目立つためか、次第に利用する人が減っていきました。そんなこともあり、現在国内で流通しているケロシンバーナーは、武井バーナーとマナスルの2社のみになってしまいました。
※マルチフューエルバーナー(ガソリンとケロシンの両方が使えるバーナー)としては、MSRやOptimusなどから現在も販売されている。

何故、ケロシン(灯油)なのか

ケロシンバーナーは、ガソリンよりも火力が強いため、暖をとるためのストーブとして使うのに適していると言えます。ケロシンバーナーの高い出力に目を付けて、強力なヒーターアタッチメントを開発した武井バーナーの慧眼には、ただ驚くばかりです。

ヒーターの心臓部と言える2段になったコイル。
高火力なバーナーで赤熱したコイルからは強力な遠赤外線が放射される。

現在販売されているパープルストーブは、全てヒーターアタッチメントが付いた状態で販売されていることからも、バーナーとしてよりストーブ機能に重点を置いているのが分かります。

ゴトクと風防が同梱されている

もちろん、ヒーターアタッチメントを外せば、普通のケロシンバーナーとして使用できるので、その強力な火力を調理に活用することができます。夏場であれば、1リットルの水を2分で沸騰させてしまうほどの火力ですから、キャンプでチャーハンなどの本格中華を作るのにも威力を発揮してくれます。

加圧式ケロシン器具の中でも群を抜いて気難しいプレヒート


武井バーナーで検索すると、プレヒートに失敗して炎上している写真を多く見つけることができます。確かに、パープルストーブはプレヒートに時間がかかるバーナーで、同じく手のかかることで有名なペトロマックスHK500以上に気難しいバーナーです。

煤で黒くなったパイプから灯油を吸い上げ、皿状のジェネレーターを経て気化した灯油がバルブに抜けていく。

原因は、出力の割に小さなジェネレーターにあり、小さいので気化効率が悪く、プレヒートでかなり温度を上げてやらないと灯油が十分気化せず、炎上してしまうという訳です。
当然、ストーブを使う時期は寒い冬の季節ですので、プレヒート効率は夏場より落ちます。

バルブの下の皿がプレヒート皿
アルコールでプレヒート中の写真。僅かに青い炎が見える。

だいたい、気温が5度前後の場合、アルコールでのプレヒートでは3回は必要になります。


パープルストーブには、予熱用のバーナーが付いていますのでこれを使う手もありますが、それでも冬場は5分以上かかります。予熱バーナーは、ポンピングしてタンク内の圧力を上げ、液体の灯油を極細ノズルから霧状に噴射する仕組みですので、予熱中は圧力が下がらないようにしょっちゅうポンピングしなければなりません。また、圧力が下がると、温度が低下して炎が赤くなり、煤も多くなるのでバーナーが汚れます。そのため、私はアルコールでプレヒートし、それでも足りない場合だけ予熱バーナーを使うようにしています。

炎上してしまった時の対処法

パープルストーブは、炎上前提と考えた方が良いです。私も未だに、2回に1回は軽く炎上させています。炎上すると、大量の煤が出ますので、速やかにバルブを閉じて、プレヒートを再開しましょう。
その後、再度点火して問題内容でしたら、そのまま全開運転を続けてください。

煤で真っ黒になったパープルストーブ
正常運転していれば煤が焼き切れていく
底近くを除いてキレイに焼き切れる

ヒーターが煤だらけになっていても、20分もすればきれいに焼き切れます。

点火のコツ


このように手間のかかるパープルストーブですが、点火してしまえば、圧倒的な火力を遺憾なく発揮してくれます。
点火については、プレヒートの炎が残っている状態でバルブを開けば点火します。ヒータの下部には空気取り入れ口として丸い穴が空いていますので、ここからマッチ等で火をつけても良いですが、やりにくいので、プレヒートの炎か、予熱バーナーの炎で着火するのがお勧めです。


ポンピングですが、501Aは圧力計が付いているので0.15MPaを基準に、圧力計の無い301Aは50回を基準にポンピングします。圧力を上げれば出力も上がると思いがちですが、一定以上の圧力に上げても火力はそれほど変わらないので、上げすぎには注意してください。パープルストーブで良くある改造で、自転車用の空気入れが使えるアタッチメントに交換してポンピングするというのがあるのですが、圧力を上げすぎてタンクを破壊してしまうことがありますので、特に圧力計の無い301Aではおすすめしません。圧力計が無くても、ポンピングしているうちに硬くて押しづらくなってきますので、だいたいの感覚で覚えていきましょう。まあ、ポンピングがめんどくさいという人には、そもそも加圧式バーナーは向いていませんが(苦笑)。
話が前後してしまいますが、灯油は入れすぎに注意しましょう。加圧式バーナーはタンク内の空気の気圧を上げて圧力をかける仕組みですので、タンク内には多少の空間が無いとまともに圧力がかからなくなります。パープルストーブには簡単な燃料計が付いているので、それを目安に入れると失敗無くポンピングできます。

針が右側に着たら満タン。

この燃料計ですが、たまに灯油を入れても針が動かないことがあります。そんな場合は、タンクを軽くゆすると針が動き出しますので、怪しい場合は試してください。ギリギリまで入れてしまうと、灯油を抜くのに手間がかかるので注意が必要です。

点火時のポイントとしては、バルブハンドルの角度が時計で3時の方向(右側水平)でバルブ全閉、1時の方向でバルブ全開となります。



12時の方向(上向き)は、クリーンニードルが出てきてニップル(燃料の噴射口)を塞ぐため、全開位置はそれより少し手前となります。

写真中央の小さい穴がニップル。ここから気化したガスが吹き出す。

まあ、徐々に左に回していき、炎が少し弱まる手前が全開となりますので、細かく回しながら全開位置を探るのがコツです。
あと、これも慣れが必要ですが、全開しても少し火が弱いと感じる場合は、クリーンニードルでニップルを掃除すると、詰まった煤がとれて火力が上がります。やり方は、2時から12時の間でハンドルをぐりぐりと3~5回程度往復するだけで、こうすることでクリーンニードルが上下してニップルを掃除してくれます。

点火したら、炎がきれいに全周に出ているか確認します。

上から見て青い炎が全周に均等に出ているのが理想的

パープルストーブのホヤは、固定されていないためキャンプ場までの運搬中にずれてしまう場合があります。ずれてしまうと、ガスが上手くホヤ全体に回らないため、火が均一にならず、一部に黄色い炎が出たりします。

正常な炎。
ホヤがずれていると黄色い炎が出る。
一見きれいに見えるが、右上部分に黄色い炎が確認できる。
ホヤが少し偏っているので、反対側から叩くなどして微調整する。

この場合は、ホヤの位置を付属のゴトクなどで微調整してやることで戻すことが出来ます。まあ極端に寄ってしまわない限り大丈夫ですので、炎の色が均一でない場合はホヤの位置が悪いと覚えておいてください。

点火後の注意点

点火後は、まずはバルブハンドルを外しましょう。外さないと、バルブハンドルの黒いノブが溶けてしまいます。


また、とてつもなく熱くなるので、握ることができなくなります。運転中は、輻射熱でタンクも持てなくなるぐらい熱くなりますので、置き場所にも注意が必要です。テント内で使う場合は、板を敷くなどして、フロアシートを傷めないような対処が必要です。私は、自作のゴトク兼ストーブガードを使っています(詳しくはこちら)。
パープルストーブは、加圧式バーナーですので、30分~1時間に1回ぐらいポンピングしてやる必要があります。慣れてくれば音で分かるのですが、ゴーッという燃焼音が小さくなったと感じた時に、ポンピングしてやります。ポンピング量ですが、301Aは圧力計が付いていませんが、ポンピングしていればどんどん音が大きくなっていきますので、ポンピングしても音の変化が殆ど無くなったらポンピング終了です。そうそう、ポンピングに手袋は必須です。運転中は、加圧ポンプも熱くなっているので、手袋をしないと熱くてとても無理です。
出力調整ですが、基本的には常に全開運転することが推奨されています。これはおそらく、弱火状態ではジェネレーターが冷えて灯油の気化が不十分になり、不完全燃焼などが起こるためだと思います。まあ、基本ストーブとして使うので、全開運転で構わないと思います。

消火について

消火は、バルブを閉じて消火し、その後圧力バルブを開けてタンク内の圧力を抜くという手順が推奨されていますが、私は圧力バルブを開けて圧力を抜き、充分に冷めてからバルブを閉じています。こうすることで、ジェネレーターの中に気化した灯油が溜まるのを防ぎ、煤の発生やニップルの詰まりを防止することができるからです。この方法は、加圧式ランタンのペトロマックスHK500でも推奨されているやり方です。
あと、持ち運び時ですが、ハンドルを閉にして圧力バルブを開けておけば灯油が噴き出すことはありませんが、万が一があるので、キャンプ場への行き帰りの時は灯油を抜いておくことをお薦めします。特に、抜く時は園芸用の水差しか、小型の石油ストーブ用ポンプがあると便利です。タンクを傾けて抜くこともできますが、パープルストーブの給油口はほぼ上向きになっているので、こぼさずに抜くのは至難です。

まとめ

とにかく、コンパクトで高出力なパープルストーブは、収納スペースもランタン1個分で済むので、何かとギアが多く車載容量に悩まされているキャンパーにはうってつけのストーブと言えます。
唯一の難点は、30分に1回程度のポンピングが必要なことで、スクリーンタープの中にほったらかしにしておくことが出来ないことでしょうか。でもまあ、暖をとったり食事をしたりする時に使うのであれば、常に周りに人がいる訳ですし、ポンピングのひと手間もギアを使いこなしているという満足感に変わること間違いナシ!?


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