テント内でのストーブ使用は危険?一酸化炭素中毒について考えてみよう

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幕内でストーブ類を使う場合、多くのサイトで一酸化炭素に対する注意が書かれていますが本当にそうでしょうか。
冬のキャンプでは、最も気温が下がる深夜こそストーブを使いたい訳ですが、寝る時はストーブを消しましょうと書かれています。
今回は、テント内でストーブを使う場合の一酸化炭素問題を掘り下げてみます。


石油ストーブやガスストーブは一酸化炭素を出す?

結論から言うと、石油ストーブやガスストーブは、それほど多くの一酸化炭素を出しません。古い対流式のトーブはある程度発生しますが、それでも数時間で中毒になるほどは発生しないので、そこまで神経質になることは無いです。近年の住宅は密閉性が高いので、簡単に一酸化炭素中毒になるようなストーブなど、そもそも初めから販売が出来ません。
ではなぜ、一酸化炭素中毒に気をつけるように言われるかと言うと、酸欠によって不完全燃焼になると、一酸化炭素が発生するからです。

一酸化炭素って何だ?

そもそも、一酸化炭素とは何かを中学校の化学で思い出してみましょう。
(いらねーよ、と言う方は読み飛ばしてください)

まずは、燃焼の基本式です。
燃焼とは、炭素と酸素が結合する酸化反応です。

C+O2=CO2

炭素と酸素が結合することで、二酸化炭素が排出されます。
また、この酸化反応の過程で、熱を出します。

一酸化炭素は、酸欠などが原因で酸化反応が十分でなかった場合に発生します。

2C+O2=2CO

一酸化炭素(CO)は、燃焼時に酸素が少なかったために二酸化炭素になりそこなったものと言えます。
また、一酸化炭素(CO)は、窒素(N2)とほぼ同じ分子量であるため、空気中では滞留し続けます(空気中の78%は窒素)。
二酸化炭素は空気より重いので、下に溜まりますが、一酸化炭素は空気と同じ重さなので、そのままでは上下に移動しません。

一酸化炭素中毒とは

一酸化炭素は、呼吸によって体内に入ると、血液中のヘモグロビンと結合します。ヘモグロビンは、体内で酸素を運んで二酸化炭素を取り込み、肺から体外へ排出する性質を持っていますが、一酸化炭素と結合したヘモグロビンは、結合した酸素を放出することができなくなります。ヘモグロビンが酸素を放出しなくなると、体中で酸欠状態となります。これが一酸化炭素中毒です。
特に脳は、常に大量の酸素を必要としてるため、一酸化炭素中毒になると最も大きなダメージを受けるため、死に至らなかったとしても重篤な後遺症が残る場合があります。
一酸化炭素は、無色無臭ですので、吸引しても気が付きません。そのため、塩素ガスなどよりも気が付きにくい点も、一酸化炭素が恐れられる理由と言えます。
一酸化炭素中毒になると、まず頭痛が起こります。更に進むとめまいがして、吐き気なども起こり、最期には失神します。屋内やテントなどの閉鎖空間で一酸化炭素が発生した場合、失神してしまうとそのまま一酸化炭素を吸い続けてしまうため、最終的には死に至ることになります。
一酸化炭素中毒の自覚症状として、初期の頭痛というのが呑み助には「飲みすぎたかな?」と思ってしまう場合がありますが、閉鎖空間でストーブを使っている場合は、まず一酸化炭素中毒を疑いましょう。
一酸化炭素は、吸引してしまっても、数時間で体内から消えてしまうので、頭痛の症状が出たからと言って、すぐに病院に行く必要はありません。

1時間あたりのストーブの酸素消費量を計算しよう

酸欠が原因で不完全燃焼になると、一酸化炭素が発生することはご理解頂いたかと思います。通常の空気中の酸素量は21%ほどですが、ストーブやガス器具を使用していると酸素が消費され、18%を切ると酸欠となり、急激に一酸化炭素が発生します。

では、どれぐらいの時間、ストーブを焚いていると酸欠になるのでしょうか?
一般社団法人日本ガス石油機器工業会が発行している「石油燃焼機器のQ&A」には、石油ストーブ1.16kW(1,000kcal)あたり約1㎥程度の空気量が必要と記載されています。

2.5kWのトヨトミレインボーで考えると、1時間あたり約2.15㎥の空気が必要ということになります。

スノーピークのランドロックの容積をアバウトに計算すると、6m×4m×2m=48㎥ですので、空気を使い切るには約22時間かかることになります。しかし実際には、不完全燃焼が起きない下限値は18%ですので、通常の酸素濃度21%から3%低下すると酸欠で危険な状態になります。
これを考慮すると、ランドロックを締め切ってトヨトミレインボーを使用すると、3時間程度で酸欠になる計算となります。
やっぱり、締め切った環境で長時間使うのはリスクが高いことがお分かり頂けると思います。

酸欠を防ぐにはどれぐらい空気を入れ替える必用があるか

酸欠にならないようにするためには、テント内の空気を入れ替える必要があります。
トヨトミレインボーであれば、1時間あたり約2.15㎥の空気を消費します。正確に言うと、約2.15㎥の空気中に含まれる酸素を消費するということですので、単純に2.15㎥の空気を入れ替えればOKという訳ではありません。空気を入れ替えると言っても、酸素量が減った空気だけを入れ替えることはできないので、仮に1時間当たりに必要な空気量の10倍の量を入れ替えたとすると、21.5㎥となります。ランドロックの体積の半分弱を1時間で入れ替えることになります。
では、そのためにはどれぐらいの大きさの窓を開けておけば良いかを計算してみましょう。計算に当たっては、建築工学で使用されている「温度差換気の換気量の公式」というのを使います。

Qt = αA√{2gh(θi – θo)/Ti} × 60²
(Qt:温度差換気による換気量[m³/h]、aA:実行面積[m²]、g:重力加速度[m/s²]、h:開口高さ[m]、θi:室内空気温度[℃]、θo:外気温度[℃]、Ti:室内絶対温度[K])
こちらのページを参考にさせていただきました。

この公式は、窓などを開けて換気する時に、室内と室外の温度差で、冷たく重い空気が流れ込んでくることを利用して換気する方法を式で表しています。
この公式を使って、冬のキャンプ場で、外気温0度、テント内気温20度として計算してみます。換気窓の高さは、地面から1mとしてみます。

今回求めたいのは、aA:実行面積ですので、以下になります。

αA = Qt ÷ √{2gh(θi – θo)/Ti} × 60²

αA = 21.5 ÷ √{2×9.8×1(20–0)/20} × 3600

αA = 0.001349㎡

平方センチに直すと、約13.5㎠となり、地面から1mの高さに4cm×4cm程度の大きさの窓が空いていれば換気可能ということになります。あくまでも理論値ではありますが、意外と小さくて済むことが解ります。
参考までに、レインボーストーブより高出力な、トヨトミKS-67HやコロナSL-6619であれば、約35.6㎠(約6cm×6cm)ぐらいの大きさの窓で良い計算になります。

酸欠以外に注意が必要なNOxやVOCについて

ストーブは燃料を燃やして幕内の空気を暖めているため、酸欠以外に、NOx(窒素酸化物)やVOC(揮発性有機化合物)にも注意が必要です。NOxやVOCは、燃焼過程で発生するため酸欠に関係なく、ストーブを使っている間は排出し続けます。
特にNOxは、6畳洋間で石油ストーブを使ってテストしたところ、10分で健康規準を超えたという報告があります。NOxはぜんそくなどの原因となるため、自動車ではディーゼル規制に代表されるように厳しく規制されています。特に石油ストーブは、ガスストーブに比べてNOxの排出量がだいたい2倍程度と高く、数時間高濃度下で生活すると、肺や気管に悪影響を与えるため、充分な換気が必要となります。
VOCは、シックハウスの原因とも言われる化学物質で、NOxほどではありませんが、やはり燃焼時に発生します。ストーブの種類にも左右されるので、数時間焚いても基準値に満たない場合もあるそうですが、過敏なお子さんの場合は、目のかゆみや喉の痛みを訴える場合があるかもしれません。
もしも、そのような異常がある場合は、大きく幕を開けて換気するなど、工夫してみてください。

テント内でストーブを使う場合の換気方法

換気で重要になってくるのは、いかに空気の流れを作るかということになります。
一般的なテントは、天井部にベンチレーターがあるはずです。暖かい空気は上昇するので、ストーブによって暖められた空気は、自然とベンチレーターから外に放出されます。この流れを更に良くするために、入口のジッパーを少し開けておけば、冷たい外気がテント内に流れ込みます。開ける大きさは、既に計算した通り、小型ストーブなら4cm四方、大型ストーブなら6cm四方を目安にしてください。こうすることで、冷たい外気が再びストーブで暖められ、ベンチレーターから排出されるという空気の循環が生まれます。


図のように、下から上へと空気の流れを作ることで、スムーズに換気することができます。
ちなみに、ストーブファンなどで、空気をテント内で撹拌していても、暖かい空気は自然とベンチレーターから出ていきますので、問題ありません。たとえ一酸化炭素が発生しても、空気の循環があれば暖かい空気と共に自動的に排気されます。

古い灯油を使うとダメ?

私は、メインランタンがケロシン(灯油)なので、1年中灯油を使っていますが、普通は石油ストーブを使う冬のシーズンのみだと思います。そうすると、去年の灯油が余っているという状態によくなります。灯油は、長期間保存すると自然と酸化して変質してしまいます。特に、高温多湿な環境では変質が進みます。また、光にも多少反応するため、白いポリタンクなどで長期保存すると変質します。変質した灯油は、不完全燃焼につながり、一酸化炭素を出すだけでなく、煤が出てストーブの故障に繋がりますので注意が必要です。但し、赤い灯油缶に入れて、冷暗所に保管しておけば、1シーズンぐらいであれば問題なく使えます。
変質した灯油は、黄色に変色しますので、使い捨てプラコップなどに入れて確認してください。場合によっては、酸っぱい匂いがする場合もあるそうです(そこまで灯油を悪くしたことが無いので私は経験ありませんが)。
また、結露などで水が混入してしまった灯油もトラブルの元になります。水が混入した灯油をストーブで使うと、水分が灯油が燃えるのを邪魔するため、不完全燃焼が起こり、一酸化炭素や煤を出します。水は灯油と混ざることがなく、底に溜まるので、灯油が少なくなったら、一度灯油缶を空けて水が溜まっていないか確認するなど、日頃のメンテナンスを心掛けましょう(といってもシーズン最初に確認する程度でOKです)。

炭、練炭、豆炭は厳禁

よく、石油ストーブと同じように書かれることが多い炭ですが、これだけはテント内で絶対に使用してはいけません。私の友人の話ですが、子供の頃に家でかくれんぼをしていた時「やぐら炬燵の中は隠れちゃだめよー、死ぬよー」と言われたそうです。昔のやぐら炬燵は、練炭や豆炭を使っていたからです。
炭や、それを原料とする練炭、豆炭は、燃焼時に大量の酸素を消費するだけでなく、大量の一酸化炭素を放出します。詳細は省きますが、石油ストーブとはそもそも燃焼構造が化学的に異なりますので、酸欠でなくても一酸化炭素が出ます。
例外的に、豆炭あんかは比較的安全です。豆炭あんかは、豆炭をケースの中に閉じ込めて燃焼させるのですが、中に触媒が入っており、この働きで、一酸化炭素が更に燃えて炭素と二酸化炭素になるためです。
最近は放送が減りましたが、時代劇などで屋内で火鉢を使って炭を焚いている場面がありますが、昔の日本家屋は板と紙でできており、すけすけだったので一酸化炭素中毒にならなかっただけです。それに、炭は高価だったので、部屋全体を暖めるほど焚くことはできず、手先などを暖める程度でした。炭を現代の密閉性の高いテントの中で使うと、5分ぐらいで中毒症状が出ますので、絶対に使用しないでください。どうしても使う場合は、全スクリーンをフルオープンにしましょう(^_^;)。

まとめ

テント内でストーブを使う場合は、換気にさえ気を付けていれば、問題なく使用できることがお解り頂けたかと思います。寝ている間でも、換気が十分であればストーブは使えます。あとは、火事だけは大変なことになるので、燃える物がストーブ近くに無いか、寝ぼけてストーブを倒したりしないかなど、自宅でもやっていることをしっかり注意しましょう。

  • ベンチレーターを空けてスムーズな空気循環を生み出そう
  • 小型ストーブなら4cm四方、大型ストーブなら6cm四方の空気窓を基本に考えよう
  • NOx(窒素酸化物)やVOC(揮発性有機化合物)にも気をつけよう
  • 火事にはくれぐれもご注意を!
  • 古い灯油は要確認

最後になりましたが、万が一がありますので、一酸化炭素メーターは用意しておきましょう。


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沼にハマると抜け出せなくなる性格の40代おっさん。関西出身で現在は東京都在住。嫁と娘の3人家族で年間30泊ほどキャンプに行って飲んだくれている。

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