Petromax(ペトロマックス)|HK500【工業国ドイツが生み出した最強ランタンはティーガーIだった】

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ペトロマックス HK500ケロシンランタンについて

ペトロマックス(Petromax)は1910年にドイツのベルリンで操業を開始したアウトドアメーカーです。操業当時は加圧式灯油ランタンの製造・販売でしたが、現在は焚火台やダッチオーブン、薪ストーブなど様々なアウトドア商品を販売しています。今回取り上げるのは、そんな老舗メーカーの看板商品であるHK500です。


加圧式ランタンとキャンドルパワー(明るさ)の関係

加圧式灯油ランタンとは、燃料タンクを加圧することで燃料となる灯油(ケロシン)を噴出・着火するランタンのことです(詳細はこちら)。

なぜこんな面倒な構造になっているかと言うと、灯油を気化(ガス化)することで直接燃やすよりも高いエネルギーを取り出すことができるからです。ストーブで言えば、昔ながらの石油ストーブと石油ファンヒーターの違いです。
灯油などのオイルを使うランタンとして、代表的なものにハリケーンランタンがあります。これは、灯油を芯で吸い上げて、それに火を着けて燃やすランタンです。ランタンの明るさを表す単位に、CP(キャンドルパワー 1CPがロウソク1本分に相当)という単位がありますのでこれで比較すると、ハリケーンランタンでは5~10CP程度ですが、HK500は500CPもあります。
燃焼とは、C(炭素)とO2(酸素)が結合してCO2(二酸化炭素)ができる時に熱エネルギーと光を出す化学現象ですので、灯油(C)を燃やすには空気(O2)が必要となります。ハリケーンランタンは、構造的には液体状の灯油を燃やすことになるため、燃焼効率が悪いです。正確に言うと、芯に含まれた液体の灯油が、火の熱で気化し、芯の周囲の空気と混ざって燃えている現象ですので、芯の周りしか火が着きません。また、芯を多く出しても、芯の周りで気化した灯油が空気とうまく混ざらないため、不完全燃焼を起こします。そのため、大量の煤を出すだけで、あまり光量は上がりません。
これを解決したのが、加圧式ランタンです。加圧式ランタンは、液体の灯油を気化し、空気と混合したガスを作ることで、はるかに効率よく燃焼させることが出来ます。更に、このガスでマントル(セリウムとトリウムの混合物)を燃焼させることで、熱エネルギーを光エネルギーに変換し、明るい光を出すことができるのです。このような複雑なメカニズムで灯油を燃焼させることで、普通に燃やすのに比べて約100倍の光量が得られるというわけです。

ペトロマックスHK500の明るさの秘密


さて、HK500の500CPは、他の加圧式ランタンと比較しても驚異的で、コールマンの標準的なホワイトガソリンランタンの286Aで200CP、最高出力のノーススターでも360CPと、HK500には及びません(それでも十分明るいですが)。将に、世界最強のケロシンランタンと言えます。
この高出力を生み出しているのが、200点以上のパーツを組み合わせて作られているHK500特有の複雑な構造です。象徴的なのが、上部に円形のパイプが付いているジェネレーター(ヴァポライザー)で、500CPを生み出すため、いかに効率よく灯油を気化させるか考え抜いた開発者の苦労が偲ばれます。


最強の明るさと引き換えになったメンテナンス性

しかし、パーツ点数の多さは、故障の発生とメンテナンスの煩雑さを招き、稼働率の低下につながります。私も、これまでのキャンプで、突然点灯しなくなったことが何回かありますので、これ1台に頼るのはやはり不安があります。まあ、テント内でこのランタンは使えないのでLEDランタンを2台常備しており、HK500の調子が悪い時はLEDの出番となります。
最も多いトラブルが、ニップルというジェネレーターから気化した灯油が噴き出す小さい穴の開いた部品で、この穴が煤で詰まります。

ジェネレーターの上に付いているのがニップル。穴からクリーンニードルが出ている。

この詰まりを解消するためにクリーンニードルが仕込まれており、燃料バルブのグリップを回すとニードルが上下に動き、ニップルの穴を掃除してくれます。このニードルがまた、とても細いため、ちょっと触ると曲がってしまい、私も元に戻そうとして折ってしまったことがあります。

クリーンニードル。トラブル対策として必ず予備が必要。

他にも、燃料漏れやマントル内にガスを噴き出すノズルの緩みなど、HK500特有のトラブルがありますので、とにかく手間のかかるランタンです。

緩んで落下すると不評のセラミック製ノズル。

ステンレス製ノズルに変更。セラミック製よりは緩みにくいが、使用前には増し締めが必要。

中でも私を一番悩ましてくれるのが、ポンプのパッキンです。加圧するためのポンプですが、ポンプ内に革製のパッキンが使用されており、これが具合が悪いのです。ポンピング中に、たまにスカッとなって空気が入らないことがあるのですが、革パッキンが中で変形してしまって空気圧がうまくかからない状態になっているのが原因です。

革製のカップを金属板の羽で開くことでシリンダー内の壁面に密着させている。

その度に、ポンプをばらして、革パッキンの変形を指で直してやります。ポンプ専用のリュブリカントオイルというのがあるので、それをさしてやるのですが、根本治療にはならず、持病としてあきらめ気味です。

以上、色々と手のかかるHK500ではありますが、交換用のパーツ類は豊富に流通しているので助かります。マントルについては、純正がベターですが、コールマンのマントル#11が使えます。#11は純正に比べて少し小ぶりですが、問題なく使えるので、純正が手に入り難い場合は、こちらをお勧めします。


※最近(2020年6月現在)、#11の値段が上がっており、品質も低下しているため、#11を使用するメリットが無くなってきました。詳しくはこちらを参照ください。

HK500の使い方のコツ

さて、良くも悪くも500CPを生み出すHK500ですが、とにかく明るいです。オプションで笠状のリフレクターがあるのですが、これを付けると更に効率よくサイト内を照らすことができます。


ランプの色も、ケロシンランタン特有の少し黄色がかった色で、コーッというガスの噴出音と共にわずかに揺らめく暖かい光は、見ているだけで和みます。

使い勝手としては、ケロシンランタンですので、作法を踏まないと点灯できない点は、好きでないと使い続けられないと思います。うちでも、私以外は、嫁も子供も使おうとせず、点灯・消火は私の役目となっています。


ポンピングは、タンクに灯油を適量(7割)入れた状態で、150~200ほど必要ですので結構大変です。しかし、このポンピングは、加圧式ランタンだけでなく加圧式バーナーなどでもおなじみの儀式ですので、私はこのポンピングが気に入っています。ポンピングで圧力が上がっているのに応じて、私の気分も点火に向けて上がっていきます(笑)。
HK500は圧力計が付いているため、それを目安にポンピングできます。圧力計には適正値の赤線が引いてあるので、そこまでポンピングします。赤線を超えてポンピングしたことがあるのですが、予熱バーナーから灯油が漏れましたので、圧力の上げすぎは禁物です。

給油キャップに圧力計が付いている。右側の丸いつまみは圧力バルブ。消火時は、このバルブを開いてタンク内の圧力を抜く。

プレヒートについては、予熱バーナーがありますが、私はアルコールを使っています。予熱バーナーは、液体の灯油を霧状に噴いてそれに火を着けているので、バーナーを使用している間はポンピングが欠かせません。


実はこれが結構大変で、ちょっとサボるとすぐに圧力が下がってしまうので、予熱中はずーっとポンピングしていることになります。いくら私が物好きと言っても、2分ほどポンピングし続けるのは流石に疲れるので、使い始めて早々にアルコール予熱に切り替えました。

U字状の予熱皿。右から突き出しているパイプは、マントル着火用の種火口。
余熱皿にアルコールが残っていれば、そのまま点火に使えるという凝った作り。

アルコールでの予熱にもコツがあります。アルコールを使った予熱は、予熱皿にアルコールを注いで点火します。付属のアルコールボトルは使い難いため、100円ショップなどで売っている先が曲がった水差しが使いやすいです。気温が低い場合は、1回では足りず、2~3回行います。この時、絶対に予熱の火が消えてからアルコールを入れてください。私は、点火中に強引にアルコールを追加したため、ボトル内にまで引火して爆発的にアルコールが噴き出して、辺りが火の海になったことがあります。幸い火事にはなりませんでしたが、キャンプチェアの座面が燃えて1脚ダメにしてしまいました。
予熱バーナーの使いどころですが、アルコールで十分プレヒートしたと思っても炎上することがよくありますので、そんな時は予熱バーナーを使います。マントルが炎上している状態で予熱バーナーを開けると、バーナーに引火するので、一旦バルブを閉じて予熱します。その後、頃合いを見計らってバルブを開き、通常運転になったら予熱バーナーを閉じます。

さて、点火できたからといって、まだまだ安心できません。点火しても暗かったり、光が安定しない場合があります。大抵は、ニップルに煤が溜まって気化した灯油がうまく噴き出していないことが原因です。そんな時は、バルブハンドルをぐるぐる回すと、クリーンニードルが上下して汚れを取ってくれます。


写真の状態は、閉状態で、クリーンニードルがニップルから上に出ている状態です。グリップに△の突起があるので分かりやすいです。

ちなみに、消火はバルブを閉じるのではなく、圧力バルブを開けてタンク内の圧力を抜いて消火します。これは、ジェネレーター内の気化した灯油を抜くためで、灯油が残っていると、次回の使用時の不完全燃焼につながるためです。

このように手間のかかるHK500ですが、だからこそ愛着が湧くというものです。

現在発売されているHK500について

ヘッドに刻印されているPetromaxのロゴ。左肩にORIGINALの刻印。

現在発売されているHK500は、中国で製造されています。そのため、ボディなどの刻印はoriginal petromaxとだけ刻印されています。ガラス製のホヤだけは、カールツァイスのガラス硝材の製造元でも有名なSCHOTT製ですので、Made in Germanyのプリントが入っています。

SCHOTT製のホヤ。これだけはMade in Germany。

反対側はPetoromaxのロゴがプリントされている。

ボディ色が、ブラスとニッケルがあるのですが、私はブラスを選びました。ボディ全体は錆止めコーティングされているようですが、このコーティングの質が良くありません。私の個体は、ヘッド部分に指紋のような汚れがあり、これがピカールで磨いてもとれないため、おそらくコーティング工程でつけられた汚れと思われます(泣)。
また、使い込んでくると悪い意味で色が変わってきます。私の持っている別のオール真鍮製のランプは、ヘッド部分が熱で金色が濃くなってきていますが、HK500はむしろ薄くなってきています。真鍮とはいえ、あまり良い質の材料を使っていないと思われます。
うーん、流石は中華製、品質はイマイチです。

工業国ドイツが最強ランタンを生み出したわけ

さて、中華製による品質面は別として、圧倒的な光量を誇るHK500は、そのスペックだけでなく、レトロなデザインも良く、金色に輝くボディが所有欲を満たしてくれます。
様々なトラブルや、手のかかるプレヒートも、500CPを生み出すためには必要なことと思えば納得できます。
流石は、工業国としてヨーロッパのトップを誇るドイツ製(オリジナル)と言えるランタン、とここで、あることを思い出しました。
第二次世界大戦中、ドイツは、他国の追随を許さないほどの高スペックな戦車を開発しました。その名も、「ティーガーI」。

出典:ウィキペディア

88mm対空砲を流用した主砲を搭載し、車体前面装甲100mm、総重量57tを誇る重戦車です。火力と防御力を重視し、世界屈指のスペックを実現するために、ドイツの技術の粋を注ぎ込んだ戦車で、構造もとても複雑な戦車でした。例えば、アメリカやソ連が砲塔を鋳造することで製造時間を短縮したのに対し、ティーガーIの円筒形砲塔は、鋼板を曲げ加工して複数枚を組み合わせて溶接するという手の込んだものでした。おかげで、当時の他の戦車に比べて製造には2倍以上の時間がかかったそうです。
ティーガーIは、スペックこそ当時としては世界最強の戦車でしたが、重量が重く、複雑な構造のため、様々なトラブルや故障に悩まされ、運用はとても大変でした。
やっぱり、国民性なんでしょうね、HK500もそこまで明るくなくてもいいのに、世界最強を目指して(?)複雑な構造にしてしまい、結果としてとても手のかかるランタンになってしまいました。

さて、ランタンと言えばコールマンですが、コールマンにもケロシンランタンがあります。その性格は、ペトロマックスの正反対ともいえる物で、戦車に例えると、とあるアニメのセリフにもあるとおり、
「丈夫で壊れにくいし、おまけに居住性も高い!バカでも乗れるくらい操縦が簡単で、バカでも扱えるマニュアルつきよ!」
と言えるランタンです。

続く











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沼にハマると抜け出せなくなる性格の40代おっさん。関西出身で現在は東京都在住。嫁と娘の3人家族で年間30泊ほどキャンプに行って飲んだくれている。

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