キャンプ場の建設で問題が起きている話

2022年3月3日

コラム

t f B! P L

先日、何気なくネットサーフィン(死語!?)をしていてとある記事が目に留まりました。

詳しくは、下記のニュースを見て頂ければと思いますが、河口湖の富士山が見える町で、新たなキャンプ場を建設しようとして問題になっているのです。


富士河口湖町のキャンプ場の計画に住民が反発 住民は反対署名を町に提出 山梨

https://www.uty.co.jp/news/20220225/11439/


ニュースによると、富士河口湖町の高台に、東京都内の会社がキャンプ場を作るため1月から木の伐採を始めたようです。問題は、この敷地が、県の土砂災害特別警戒区域に指定されており、その下には民家が広がっているということです。

土砂災害特別警戒区域は、住宅など建築物の建設が規制されているのですが、ではなぜキャンプ場の建設ができるのでしょうか。


先ず、キャンプ場は、建築物に該当せず規制の対象外となるということです。恐らく管理棟などは建設されるでしょうが、人が恒久的に駐在するような建物ではないため、建築基準法上の建築物とはみなされないようです。


一方、富士河口湖町には、1000平方メートルを超える開発に対して町長の同意を求める条例があります。しかし、今回のキャンプ場は1000平方メートル未満ということで、この規制も対象外となっているとのこと。

結果として、県や町はキャンプ場の建設は法律的に問題はないという見解だと言うのです。


私は、このニュースを見て、「ついにキャンプ場まで来たか」と思ってしまいました。



2021年7月3日に起きた熱海の「伊豆山土砂災害」は、死者26名、行方不明者1名を出した大災害でした。原因は、明らかに不法投棄による盛り土ですが、地権者が変わっていることもあり、責任の追及がなかなか進んでいません。

不法投棄した当時の土地所有者の無責任さは決して許されるものではありませんが、十分に調査・指導しなかった行政にも責任があります。


実は、これに似た話は枚挙にいとまが無く、不法投棄だけでなく、メガソーラー発電などでも多くの問題を引き起こしています。

奈良県平群町のメガソーラ問題では、山地を皆伐(全ての木を切ること)し、摩崖仏(まがいぶつ)をはぎ取るなど問題が噴出、地元住民の反対にも係わらず、巧妙な建設計画によって行政手続きを行い、工事を強行しました。結果的には、奈良県知事が工事差し止めを指示するという事態に至りましたが、現在も地元との係争が続いています。


奈良県が止めたメガソーラー計画の現場から見えてきたもの

https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20210827-00255241


平群町のこの辺りは、私も子供の頃に歩いたことがあるのですが、まさかこんな田舎がメガソーラーの問題に晒されるなど思ってもみませんでした。


また、埼玉県小川町で計画されていたメガソーラーについては、山口壮環境相が「抜本的な見直し」を求めるようにと表明、萩生田光一経済産業相が計画見直しを事業者に勧告するという異例の事態に発展しています。

このメガソーラーは、里山に広がる86ヘクタールの土地を造成し、総出力3万9600キロワットの太陽光パネル設置を計画していました。事業者の「小川エナジー合同会社」(埼玉県寄居町、代表社員:株式会社サンシャインエナジー、職務執行者:加藤隆洋氏)は、伊豆山土砂災害の10倍以上にあたる約72万立方メートルの盛り土を行おうとしており、真の目的は残土処理ではないかとも囁かれています。


埼玉・小川町メガソーラー、大量盛り土への大懸念

https://toyokeizai.net/articles/-/514397


メガソーラー予定地の里山には、絶滅が危惧されるミゾゴイやサシバの繁殖が確認されており、環境保護の面からも見直しが必要でしょう。



富士河口湖町のキャンプ場建設の話に戻りますが、この問題が残土処理やメガソーラ問題と同じ匂いがするのは私だけでは無いはずです。

キャンプ場建設にあたっては、私たちキャンパーが快適にキャンプができるように整地することになります。当然、場内と周囲は皆伐され、傾斜地は削られ、窪地は埋められます。木が切られると、木の根による土砂保持力が無くなり、雨などによる土砂流出が起こります。更には、枯葉や草などによる保水力も失われるため、豪雨に弱くなり、土石流の危険性が増します。

キャンプ場には、宅地のような規制が無いので、用水路の整備や擁壁の建設などは必要とされず、土砂崩れ対策が行われるかどうかは、キャンプ場オーナーの良心次第です。このキャンプ場を建設しようとしているのは、東京の会社だということですが、そんな良心があるとは思えません。大方、昨今のキャンプブームに乗って、安い土地を買い上げて一儲けしようと考えたのでしょう。

行政も、キャンプ場だから大丈夫だろうというような甘い判断をせず、しっかりと企業の活動を監視・制限すべきです。今回のケースで言えば、1000平方メートル以下だからと放置すれば、この近所に第2、第3の1000平方メートル以下のキャンプ場が乱立し、大災害に繋がることだって考えられます。「そんなバカな」と思うかもしれませんが、敷地面積が規制対象ギリギリの施設を乱立させる方法は、既にメガソーラで行われており、大問題になっています。


本栖湖の洪庵キャンプ場から見た富士山。


最近、新しいキャンプ場が増えてきていますが、その多くは、過疎化が進む町や村を活性化したい、不法投棄を無くすために空き地をキャンプ場にしたいなど、地元と環境のことを思って始められています。

一方で、グランピングを始め、キャンプブームを利用しようという動きがあることも事実です。山を削り、森を皆伐して造られたキャンプ場は、確かに便利で快適かも知れませんが、それは最早「自然」では無く「人造」と言うべきでしょう。

私は、自然と触れ合えるキャンプが大好きですが、自然破壊をしてまでキャンプをしたいとは思いません。

富士河口湖町のような、利益至上主義のキャンプ場開発が全国に広がらないことを願っています。



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