オガワのアポロンSはソロで贅沢に使いたくなるテント

2022年3月7日

topics テント

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先日、2022年の新作「クーポラ」を紹介しましたが、今回は、「アポロンS」を取り上げたいと思います。


ギリシャ神話の神の名を冠するアポロン(Apollon)は、2018年に登場したトンネル型テントです。当時は、DODのカマボコテントが火を点けたことで、トンネル型テントが大流行。そんな中、満を持して登場したアポロンは、まるで船のキールのように3本のフレームが屋根に通された、オガワらしいテントでした。

DODを始めとするトンネル型テントは、半円状のフレームだけでフライシートを支えており、ガイロープを張らないと自立さえままならないぐらいで、幕内は広いですが剛性に難点のあるテントでした。そんなトンネル型テントの欠点を、天井に3本のポールを通すことで、見事に克服したのがアポロンでした。


オガワのアポロン


2021年には、TC版が追加され、ファスナーもトリプルファスナーになるなど、ユーザーの声を聞きながら進化してきました。


そんなアポロンですが、唯一の欠点が、大きくて重いということでした。全長約6m、幅3.2mと巨大で、高さも2mを超えるテントですから、4人家族でゆったり使うには良いサイズですが、カップルや子供を含む3人家族などでは、持て余す大きさでした。

また、剛性が高いのは良いのですが、その分重く、設営にも時間がかかるのが難点でした。


そこで、よりコンパクトなアポロンが欲しいという声が多く挙がり、今回のアポロンSの登場となったのです。


手前がアポロン、奥がアポロンS
手前がアポロン、奥がアポロンS


基本SPEC

アポロンSは、デュオまたは子供がいる3人家族に丁度良い大きさにアポロンを縮小したようなテントです。


【サイズ・重量】

大きさ(cm):全長440×幅255×高さ182

収納時(cm):70x32x32

総重量:15.95kg (付属品除く、付属品:約5.01kg)

 フライ:約6.0kg、インナー:約2.0kg、ルーフフライ:約0.6kg

 ポール:約4.6kg

対応人数:2~3名


【素材】

 フライ:ポリエステル75d(耐水圧1,800mm)

 インナー:ポリエステル68d

 グランドシート:ポリエステル210d(耐水圧1,800mm)

 ポール:6061アルミ合金(φ16mm、φ14.5mm、φ13mm)


【付属品】

 張り綱1.5m×6本・3m×10本、アイアンハンマー1丁、

 スチールピン25cm×22本、収納袋


オリジナルのアポロンと比較すると、全長が75%、幅が80%、高さが89%縮小されています。全長以外にも、全体的に小さくなっているため、並べて観ると大人と子供といった感じがします。


アポロンとアポロンSをドッキングした写真
2022年Ogawa製品カタログより。


2022年のオガワのカタログには、アポロンとアポロンSを接続している写真が掲載されており、超大型幕としての利用も可能です。

個人的には、ロッジシェルターとType52Rの組み合わせの方がそそられる物があるのですが、アポロンオーナーにとっては夢の広がる提案(キャンプ沼!?)だと思います(笑)。


アポロン譲りの剛性は一級品

では、アポロンSの詳細を見ていきます。

基本構造は、アポロンと同様で、フライシートのスリーブにポールを通し、ペグダウンして立ち上げ、3本のルーフポールを通して固定する構造になっています。


オガワのアポロンS


各ポール径は、アポロンに比べて、19→16mm、17.5→14.5mm、14.5→13mmに変更されていますが、感触は殆ど変わらず、高い剛性感があります。


アポロンSのルーフ
3本のルーフを縦につなぐポール。若干細くなったとは言え、剛性は折り紙付き。


メインのポールが4本から3本に変更されているのと、ルーフも少し低くなっていることから、確実にアポロンより設営しやすくなっています。


アポロンSのサイド
全長が短くなったため、ポールが3本に減らされている。


全面メッシュパネルが採用されており通風性は抜群、パネルを跳ね上げることができるのも親譲り(笑)。


アポロンSのフラップ。オガワのロゴのアップ
出入口のフラップにはオガワのロゴがあしらわれている。


ここ数年のオガワ商品は、どんどんトリプルファスナー化されており、薪ストーブのインストールが簡単になってきています。


アポロンSに薪ストーブがインストールされている


実際には、この置き方では幕が熱で溶けるので、薪ストーブをもう少し幕から離して設置し、煙突を斜めや横方向に引く必要がありますが、煙突を出す位置をファスナーによって自由に調整できるのは、非常にありがたいスペックです。


トリプルファスナーによって、上手く煙突が外へ出されている



さて、室内に目を向けていくと、かなりコンパクトな感じがします。インナーテントを張った時のリビングは、奥行き145cmですから、カップルなら良いですが、3人で座るとかなり窮屈です。


アポロンSを正面入り口から見た写真
アポロンSのリビング。アポロンに比べると流石に狭い。


アポロンを正面入り口から見た写真
アポロンのリビング。


また、インナーテントに関しても、幅235cm×奥行130cmですから、3人家族だと小学生の小さなお子さんが限界です。


アポロンSのインナーテント
アポロンSのインナーテント。


とは言え、天井が高く、インナーも4面メッシュパネルにできるため、解放感は抜群ですから、窮屈な感じはしません。


アポロンSの反対側出入口からインナーテントを見た写真


アポロンSは、カップルだけでなくソロでもおすすめのテント

実は、アポロンSの発表を聞いた時、私たち3人家族には丁度良いのではと思っていたのですが、正直ちょっと小さすぎました。私は、ファシルを使っているのですが、娘が中学生になってからだいぶ大きくなってしまったため、ちょっと手狭に感じており、もう少し大きめのツールームテントが欲しいと考えていました。そこで、アポロンSに期待していたのですが、サイズ的にはファシルより更に小さいため、残念ながら我が家の選択肢にはなりませんでした。


一方、デュオで考えれば必要十分なリビングが確保されていますし、タープとの併用も考えれば、ベストサイズと言えるでしょう。


また、ソロであれば、更にゆとりをもってスペースを活用することが出来ますから、ギアの多い方なら、贅沢にソロで使うのもアリだと思います。


最近は、サバティカルのギリアをよく見かけるようになりましたが、ソロには少し大きすぎますし(まあ、それはそれでよいのかも知れませんが・・・)、質実剛健なアポロン譲りの剛性は、他の追従を許さないものがありますので、拘りのあるソロキャンパーにもアポロンSはおすすめできます。


アポロンSは買いか?それともT/C版を待つべき?

さて、悩ましいのは、どう考えても今後T/C(テクニカルコットン※)が出そうなことです。


アポロン T/C
アポロン T/C


※テクニカルコットン:コットンとポリエステルを混紡した素材。ポリコットンとも言う。


今回、アポロンSを見に行ったのは、GRAND Lodge流山おおたかの森店なのですが、店長さんらしき女性の方とお話したら、ここ数年T/Cがすごく流行っているとのことでした。


GRAND Lodge流山おおたかの森店
今回お世話になったGRAND Lodge流山おおたかの森店。
店長らしき方は、ロッジシェルターを使いこなす6人家族のママでした。
色々なお話ありがとうございました。

「T/Cでなければテントに非ず」と言う程のお客様が多いと、苦笑交じりでおっしゃっていたので、その要望の多さが推し量れます。元々、日本の大手テントメーカーの中ではT/Cの導入が早かったオガワですから、それも頷けるのですが、オガワに対してユーザーがそこまでT/Cを要望しているということについては驚かされます。

そうなると、早晩アポロンSにもT/C版が追加されるでしょうから、T/Cが欲しい方は待った方が良いかもしれません。


ただ、T/Cはポリエステル幕より重い、水が良くも悪くも浸み込む、という欠点があります。

私も、T/Cからフルコットンまで、様々なテントを持っていますが、T/Cやコットンは、吸湿性が高いため、時には苦労する場合があります。吸湿性が高いので、結露しないというのは大きな利点なのですが、真冬だと吸湿した幕がバッキバキに凍ってしまい、撤収がかえって大変な場合があります。

特に、雪が降っている時などは、幕にツララが張り付いてしまい、なかなか取れないなどという場合もあります。



また、撥水性が低く、汚れ落ちが悪いというのも欠点で、雨中キャンプでの撤収時には、どんなに丁寧に扱っても、泥ハネが付くのは避けられません。

こういったケースでは、速乾性に優れ、汚れ落ちの良いポリエステルの方が便利です。


テンマクデザインのサーカスコットンバージョン。
使用頻度はあまり高くないが汚が目立つ。
コットンは、汚れが落ちにくいだけでなく、色も白いため余計に汚れが目立つ。


それに、結露に強いといっても、それは幕体が水分を吸収するからであって、湿ったままで畳んでしまうとカビが生えますから、干して乾かさなければならないことに変わりはありません。


さて、アポロンSはどうかと言われると、正直悩みます。アポロンSは、間違いなく4シーズン使えるテントです。スカートもしっかりしているので、厳冬期のキャンプでも充分使えますし、インナーテントとセットで考えると、ルーフ部分は3重構造になりますので、保温性もかなり期待ができる構造となっています。

実は、雪中キャンプで考えると、アポロンT/Cはかなり良くできたテントなのです。フライとインナーがT/Cで結露を抑えつつ、雪の積もるルーフフライは撥水性に優れたポリエステルと、T/Cとポリエステルを適材適所で使っています。

ですから、フライがバッキバキに凍り付くことに目をつぶれば、薪ストーブまで使えて、撥水性・耐雪性に優れたルーフ構造と相まって、高い実力を発揮することになります。


さて、そうなると、アポロンSをどうするかということになります。実際、3シーズンをメインに使うのであれば、ポリエステルの方がベターです。雨の日は絶対キャンプしないというのであれば話は別ですが、撥水性が高く汚れに強いポリエステルは、結露するという欠点を補ってあり余ります。

一方、真冬、特に雪中キャンプであれば、やっぱり結露しないT/Cに分があります。アポロンSは小さいとは言えツールームですから、特に冬場はテント内で鍋などを食べることを考慮すると、結露しまくるポリエステルは避けたいところです。


因みに私は、夏はポリエステルのファシルかアイレ、冬場はポリコットンのクロンダイクグランデと使い分けています。やっぱり、オールマイティのテントなんてありませんので、4シーズン常にキャンプに行くようになると、必然的に季節と天候に合わせてテントを使い分けることになります。


そう考えると、とりあえず3シーズン用にアポロンSを購入して、後からT/Cが出たら、冬キャンプ用に買い足すのがベストと言えるでしょう。


キャンプ沼の極みですが(爆)



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