アウトドアショップのプライベートブランドとAmazon・楽天との関係(3)

コラム

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ここ数年、アウトドアショップがプライベートブランド(PB)を積極的に展開しています。PBとは、小売業が主業務の会社が、商品企画・製造(実際には外注)している商品のことで、イオンのトップバリューなどが有名です。
今回は、ちょっとビジネスっぽい記事になりますが、アウトドアショップのPBが盛んになった理由と、今後の展開についての考察を3回シリーズでお伝えしていきます。


第一回はこちら

第二回はこちら

最終回の今回は、アウトドアショップのアマゾンや楽天に対する戦略と、プライベートブランドの今後の展開について、大手メーカに対する考察も踏まえて考えていきます。



アマゾンに出店するアウトドアショップ

2020年1月現在では、WILD-1やナチュラムは、WILD-1オンラインストア、ナチュラムアマゾン店という形で出店しています。これは、ユーザー管理から受注・支払い管理までをアマゾンが行い、商品の発送は各小売業者が行っています。アマゾンのサービス名で言うと、マーケットプレイスというやり方です。
一方で、アマゾンにはFBA(フルフィルメント by Amazon)というサービスがあります。これは、商品をアマゾンの倉庫に預けてしまえば、商品の保管、注文商品のピッキング、梱包、出荷まで全てアマゾンがやってくれるというサービスです。ユーザ側メリットとしては、Amazonプライム対象となるので、プライム会員は送料無料、一般会員でも2000円以上の買い上げで無料となります。
実は、WILD-1オンラインストアを注意深く見てみると、2種類の発送方法があることに気が付きます。
こちらは、WILD-1オンラインストアが販売・発送を行う商品です。


マーケットプレイス方式で販売しています。

こちらは、WILD-1オンラインストアが販売し、アマゾンが配送する商品です。


つまりは、この商品はFBAを利用しているということになります。おそらく、WILD-1は、マーケットプレイス方式とFBAを商品によって使い分け、そのメリット・デメリットを見極めている所ではないかと思います。そして、楽天も含めて、テンマクデザインとクオルツというPBを流通させていく上で、最も売上と利益が出るECプラットフォームを選択していこうとしているのでしょう。

アマゾンが提供するマーケティングデータ

アマゾンの強みは、スケールメリットを活かしたコストダウンだけではありません。アマゾンには、販売されている商品データと顧客データが日々溜まってきています。いわゆるビッグデータです。
アマゾンは、このビッグデータを、出品している店舗オーナーに様々な形で提供しています。毎週の売上ランキング、購買層の年齢や性別など、かなり詳細なレポートが得られる強力なマーケティングツールが用意されており、オーナーは、これを使ってどのような商品を提供すれば良いか考えることができます。

楽天とアマゾンの違い

さて、ここで楽天も取り上げてみたいと思います。楽天とアマゾンの最大の違いは、楽天はECモールサイト、アマゾンは物流会社であるという点です。
楽天は、1996年の創業当初、織田信長の楽市楽座にヒントを得て、インターネット上の楽市楽座、つまりはモール(商店街)をネット上に作成し、小売店に店子として入ってもらうというビジネスモデルでスタートしました。そのため、ECのインフラを店舗オーナーに提供し、会員管理と商品の販売・売上管理を楽天が行い、商品が売れた後の発送業務などは店舗オーナー側の責任となっています。
一方のアマゾンは、2000年にAmazon.co.jpとして書籍販売のECサイトをオープンします。その後、2001年には早くも楽天同様のAmazonマーケットプレイスを開始。更には、
前述のフルフィルメント by Amazon(FBA)を2008年から開始します。このFBAを利用すれば、商品をアマゾンに預けるだけで、会員管理、在庫管理、販売・配送・売上管理と全ての業務を行ってくれます。アマゾンは単なるECサイトでは無く、物流も含めたフルフィルメントサービス会社であるからこそ実現できているわけです。

フルフィルメントを目指す楽天が打ち出した送料無料という一手

最近、楽天が店舗毎で一度に3,980円(税込)以上の買い物をした場合、送料無料となるサービスを3月18日から開始すると発表して物議を醸しだしています。アマゾンに取引量などで楽天が負けているのは、送料が原因だと三木谷社長は主張しています。
三木谷社長の説明によると、出店者向けに在庫管理、出荷作業などを一括で担う総合物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」を2012年から行っており、これまでに2000億円の投資を行ってきたとのことです。つまりは、楽天もアマゾン同様に物流会社に変わろうとしていると言えます。そのための布石が、送料無料であり、これによってアマゾンとの取引量の差を埋めようという戦略です。
問題となっているのは、無料にした送料は、実質的には店舗オーナーが支払わなければならないという点です。実は、アマゾンのFBAも送料は店舗オーナーが支払わなければならず、タダと言うわけではありません。商品の大きさや重量によって全部で13種に区分けされており、配送代行手数料も、小型の257円から最大の大型サイズ区分8の1,598円まで設定されています。送料以外にも、在庫保管手数料やFBA梱包準備サービス料などが細かく設定されています。
楽天は、これまで出店者が送料を自由に決めていたため、大きな反発が起こっており、独占禁止法違反の疑いありと公正取引委員会まで出てくる状況となっています。これは、ECモールとしてスタートした楽天と、単独のECショップとしてスタートしたアマゾンの違いでもあります。スタート時点では楽天は、あくまで多数の店舗にネット上の場所を提供するだけであり、梱包・発送は全て店舗側の責任でした。そのため、当然送料は各店舗ごとに設定されていました。しかし、時代が変わり、消費者がアマゾンprimeのような送料無料サービスと比較した場合、有料の楽天を選びにくくなっているという事情から、楽天も送料無料サービスを追従することになった訳です。

アウトドアショップのPBと今後の販売戦略

物流の話ばかりになってしまいましたが、最期にアウトドアショップのPBが今後どうなっていくか考えてみます。
まず、今後は消費者の多様な嗜好性に合わせて、商品がさらに多様化していくのは間違いありません。そのため、個性的なPBはアウトドアショップにとって大きな戦力となります。また、リアル店舗を持つアウトドアショップならではの利点として、顧客に近いという点が挙げられます。リアル店舗でユーザーとしての顧客の意見を聞く場面もあるでしょうし、様々なイベントを通じて顧客と接することで、求められている商品をイメージできるでしょう。これらを、マーケティングと商品開発に活かしていくことで、エッジの効いたPBを生み出していけるというのが、アマゾンや楽天などのECプラットフォーマーとの違いと言えます。
一方で、大手メーカー商品は、コモディティ化が進み、競合ショップやECプラットフォーマーとの差別化が一層難しくなっていくでしょう。そのような商品をネット上で販売する意味は薄れ、むしろ店舗での販売を主力としていくと思います。アマゾン上のWILD-1オンラインストアの商品ラインアップを見ても、テンマクデザインとクオルツ以外のブランドは殆ど売っていません。
そして、競合ショップやECとの差別化を行うためにも、商品ラインアップに占めるPB商品の割合をアップしていく必要が出てくるでしょう。これが進むと、コールマンやスノーピークはネットで、テンマクデザインやタラスブルバのようなPBは店舗でというように、消費者の購買行動も変わってくることが考えられます。
PB商品の割合で言うと、参考になるのがワークマンです。2018年9月にスタートしたワークマンプラスの快進撃にも見られるように、その根底にはPBブランドの商品力があります。ワークマンのPB商品は、高い機能性とヘビーデューティーさを売りにしており、販売商品の実に50%以上がPBで占められています。このPBが、他のアパレルブランドとの差別化に成功しており、成果に直結していると言えます。元々商品点数の多いアウトドアショップが、どこまでPB化を進められるかという問題があるので、一概にワークマンと比較することはできませんが、PBの種類が豊富であればそれだけ差別化が図れることは間違いありません。

PB商品をネットで販売していく方法についても、今後大きく変わっていくと思われます。インターネットビジネスは日々進歩しており、会員管理やセキュリティ対策などが年々高度化し、多大なコストが必要となってきています。アマゾンなどのECプラットフォーマーは、その維持にかかる莫大なコストを、スケールメリットを利用して安価に運用しています。そのため、小売店やメーカーが、ECから物流まで全てをプラットフォーマーに委託する方が、システム運用費の面ではよりコストダウンができるようになるでしょう。
そうなった場合、リアル店舗を持たないナチュラムは、ハイランダーブランドで戦うアウトドアメーカーに業態を変えるのではと私は考えています。

メーカーもマルチブランドで生き残りを賭けてくる

では、一方でコールマンやスノーピークといったメーカーはどうなるのでしょうか。
実は、アマゾンや楽天によってメーカーも被害を受けています。所謂パクり商品です。高性能なテントや複雑なガソリンランタンなどは、製造技術も含めて様々なノウハウが必要となりますが、タープや焚火台のような構造が単純なものは、何か売れると大量のパクり商品がアマゾン等に並ぶことになります。一番良い例が、ヘリノックスのチェアワンでしょう。チェアワンは、1脚1kg未満で収納サイズも非常に小さいことから、キャンプ界で一躍注目の的となった商品です。それがために、アマゾンや楽天では、機能的には全く同じと言って良い大量のパクり商品が販売されています。ヘリノックスがなぜ意匠登録などをして自社製品を守らなかったのか疑問ですが、チェアワンのように注目度の高い商品は、似たような商品が大量に出回ることになります。その結果、メーカーの売上は圧迫され、大きな機会損失となってしまいました。

これを防ぐためには、商品をメーカー内でも別ブランドにして差別化していき、流通経路を分ける必要があります。実は、コールマンは、これに近い取り組みを始めています。これまでのキャンプギアよりも高級感を高めたコンフォートマスターシリーズは、アマゾンや楽天には流通しておらず、コールマンのオフィシャルECサイトか、アウトドアショップでしか買えなくしています。ブランド力のあるメーカーは、ECプラットフォーマーの市場をあえて捨てて、よりブランドの価値を向上させる取り組みを行っていくことになるでしょう。
実際、NIKEはアマゾンから完全に撤退してしまいました。NIKEの場合は、パクりでは無く偽造品が大量にアマゾンに出品され、大きな問題になっていました。偽造品は、正規商品の販売機会損失になるだけでなく、ブランドの信頼をも失墜させるため、メーカーとしては絶対に排除しなければなりません。NIKEもアマゾンと協議を重ね、アマゾンも偽造品対策を行っていましたが、売れれば手数料の入るアマゾンにとっては、偽造品でも手数料収入が得られるため、抜本的な対策に至らなかったようです。その結果、NIKEは2019年11月13日にアマゾンからの撤退を決定、以後は自社サイトからの直販と、各店舗への流通による販売に切り替えました。
以上のように、メーカーもアマゾンや楽天に流通させる商品とは別ブランドを作ることで、パクり対策を行いつつ、商品のコモディティ化を防ぎ、ブランド価値を守っていくことになると思います。

終わりに

私も、キャンパーの端くれとして、様々な商品を様々なチャネルで購入してきました。そんな中でも、アマゾンと楽天で購入した総額はかなりの額になります。私が良く行くアウトドアショップはWILD-1とL-Breathですが、メーカーブランドの商品は、買う前にどうしてもアマゾン等と値段を比べてしまいます。やはり、どこで購入しても品質は変わらないというのが大きく、値段勝負になってしまいます。そのため、ネットで売っていない場合は店頭で買いますが、安い商品があれば店頭では買い控えてしまいます。
しかし、テンマクデザインのようにオンリーワンの商品は、基本的に店頭で買います。当然、そういった商品は店頭でしか扱っていない場合が多く、そういう意味ではPBが上手くネットと棲み分けている好事例だと思います。それに、店頭に行けば、お目当てのPB商品以外にも、ついつい衝動買いしてしまうものですし、ネットでは分からない手触りや使い勝手などは店頭で確認して購入する場合が多いです。
今後、アマゾンと楽天は、し烈なECプラットフォーマーとしての競争を続けていくでしょうし、ここにYahooショッピングやメルカリなども加わってくる訳ですから、益々アウトドアショップは生き残りを賭けた戦いになっていくと思います。
その生き残りの施策として、PBは益々活用されていくでしょうし、そんな中から自分好みの製品が生まれてくることに期待しつつ、各社のPBを応援していきたいと思います。

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沼にハマると抜け出せなくなる性格の40代おっさん。関西出身で現在は東京都在住。嫁と小学生の娘の3人で年間30泊ほどキャンプに行って飲んだくれている。

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