キャンプにナイフは必要?初めてのナイフの選び方(前編)

2019年4月11日

キャンプtips ナイフ沼

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キャンプにナイフは必要か?
確かに、アウトドア雑誌などでは、度々ナイフに関する特集記事が組まれており、ナイフはキャンプの必需品のように語られることもあります。

今回は、キャンプとナイフの関係について掘り下げてみたいと思います。

 

料理に使うのであればナイフより包丁

まず、いきなりですが、普通のキャンプにナイフは不要です。こちらでも書きましたが、キャンプで料理をするためにナイフを買うのはやめておきましょう。普段使っている包丁を使うのが一番使いやすいですし、慣れている刃物を使うことは怪我の防止にもつながります。キャンプだからと言って、ナイフを買わなくても、ご自宅にある包丁を段ボールで巻いてガムテープで止めるだけで立派な鞘(シース)になりますので、持ち運びも何の問題もなく安全に使えます。

私が、料理目的にナイフを勧めない理由がもう一つあります。そもそも、ナイフは汎用性を考えて作られた刃物ですので、料理に特化した包丁と比べると、野菜や肉を切る場面では明らかに劣ります。キャンプ・ナイフで検索すると一番に出てくるオピネルというナイフがありますが、これでネギを刻んだら、自分の腕が落ちたのかと思うぐらい、全部つながったネギが出来上がります(私の経験談です)。
なぜ、こんなことになるかと言うと、ブレード(刃)とハンドル(柄)の形状の違いによるからです。ブレードの形状は、ナイフによっても様々な形状がありますが、ここでは、オピネルと三徳包丁で比較してみます。

上段 三徳包丁  中断 ペティナイフ  下段 オピネル No.12
上段 三徳包丁
中断 ペティナイフ
下段 オピネル No.12

一般的な包丁として最も普及している三徳包丁は、ブレードが刃元から刃先まで緩やかなカーブを描いています。オピネルは、刃のつけ根から3/4ぐらいまでが直線で、そこから急激に反り返ってポイント(刃先)に達します。この一見僅かな違いが、様々な食材(特に野菜類)を切った時に大きな差として現れます。

例えば、ネギを押し切りする時の切断メカニズムですが、三徳包丁は緩やかなカーブによって、手首の切る動作に従って食材にまんべんなく刃が当たりキレイに切れます。オピネルは、3/4の直刀部分で切ることになりますが、まな板と刃が平行になるように正確に切る必要があり、三徳包丁と同じ感覚で切ると刃がまな板と平行になっていない部分ができ、刃とまな板の隙間部分でネギがつながった状態になってしまいます。また、先の急激に反り返っている部分が有効活用できないため、幅の大きな食材も切りにくくなります。

もう一つの、ハンドルの形状ですが、三徳包丁は、刃元とハンドルに距離がありますが、オピネルは一直線になっているのが分ると思います。三徳包丁は、この刃とハンドルとの距離があるため、まな板の上で押切りしやすい形状となっています。逆にオピネルは刃とハンドルの間に隙間が無いため、包丁のように押し切りすると指がまな板にあたってしまってうまく切れません。

以上のことから、包丁に比べるとナイフが料理に向かないことがお分かりいただけたかと思います。もちろん、できなくは無いですが、包丁に比べると圧倒的に使い勝手が悪いので、がっかりすることになります。オピネルは、No.2(刃長約3.5cm)からNo.12(刃長約12cm)まであるので、No.12だと長さはペティナイフか小型の三徳包丁ぐらいに相当するため、包丁の代わりとして使えるように思えますが、上記の理由により期待外れな結果となります(まさに私がそうでしたorz)。

じゃあ、キャンプにナイフは不要?と思われるかもしれませんが、私はナイフをもつことをオススメします。
なぜかというと、キャンプが楽しくなるから!です!

ナイフでキャンプを楽しもう!


「いや、ナイフなんて興味ないし」と言う方も、1本持ってみればその利便性と楽しさが分かってもらえるかと思います。まず、キャンプでナイフが活躍する場面を考えてみましょう。
  • 真空パックや菓子袋などのパッケージ類を切る
  • テーブルの上で、チーズやソーセージを切る
  • 不要になった紙パックや段ボールを解体する
  • 荷造り紐を切る
  • リンゴの皮をむく
  • 箸を忘れた時に落ちている小枝を削って箸を作る
  • マシュマロを焚火であぶるための長い棒を作る
  • 釣った魚を捌く
  • 新品のキャンプグッズについている商品タグを切る
  • キャンプ気分に浸るために、無理して料理に使う
若干強引?ですが、意外と使う場面があると思います。
せっかく自然に囲まれた場所でキャンプするわけですから、アウトドア感をより楽しむアイテムとして、ナイフを使うことをお勧めします。冒頭でも書いた通り、料理をするだけなら、料理に特化した包丁を使う方が便利な訳ですが、ナイフの不得意な部分、使い難い場面でもあえてナイフを使いながら、その不便さも含めて楽しんでいただければと思います。

更に、ブッシュクラフトのまねごとをするなら、更にナイフの利用シーンは増えます。
ブッシュクラフトとは、必要最小限の装備で自然の中で生活するスタイルのことで、北欧が起源と言われています。詳細は省きますが、ナイフとファイヤースチール(火打石)で火を熾して、シェルター(寝床)なども倒木や落ち葉を利用して作成し、森や山の中で過ごすイメージです。
本格的なブッシュクラフトは別にして、キャンプで実践できるレベルで考えると、以下のような場面があります。
  • 倒木を切ったり、枝を払ったりする(チョッピング)
  • 木の枝に切り込み(ノッチ)を入れて、焚火ハンガーや、イス・テーブルなどを作る
  • 木材を切る・割る(バトニング)
  • フェザースティックを作る
  • ファイヤースチールをナイフのスパイン(峰)で擦って火をつける
倒木を切ったり、枝を払ったりというのは、キャンプ場によっては、場内にある倒木・伐採木を自由に薪として使っていいですよという場合があり、そんな時は、小枝を払ったり、細めの枝などを切る時などにナイフが役に立ちます。
また、長さ1mぐらいで太さが5cmを超える程度の枝であれば、切り込みを入れてクッカーなどを吊るすハンガーが作れたりします。こういったことをするだけで、自然との距離が一気に縮まり、より自然を楽しむことができます。

ナイフのバトニングで薪を割るのはお勧めできない理由

バトニング

余談ですが、最近バトニングがネットでも話題になっていますが、薪をバトニングで割るのは私はお勧めしません。バトニングとは、ナイフのスパイン(ブレードの峰)を叩いて木材を切ったり割ったりするテクニックのことですが、このテクニックを使って薪を割るのが流行っています。
確かに「ブッシュクラフトの教科書 デイブ・カンタベリー著」でも、バトニングで木材を割る方法が紹介されていますが、同書では斧も紹介されており、薪割のテクニックは斧の項目で紹介されています。そして、その項目では「斧でできる作業にナイフを使うのは厳禁、と心得よう」と書かれています。
ナイフを使って、バトニングで薪を割る場合、ナイフのブレードを薪に当てて、スパインを別の薪で叩いて割ることになりますが、木の種類によっては刃がかけたりブレードが曲がったり、最悪は刃が折れたりします。
杉や松などの針葉樹は、木目が直線で割れやすいので、木目に沿ってバトニングしていけば簡単に割れますが、広葉樹(特にカエデやケヤキ)は、木質が固いだけでなく、繊維も複雑に絡み合っているため、ちょっとぐらいのバトニングではビクともしません。バトニングと言えばバークリバー社のブラボーと言われるぐらい有名なナイフがあるのですが、これを使っても固い広葉樹には刃が食い込んでいかず、無理やりバトニングすると薪に食い込んだまま抜けなくなったりします(バトニングしてもそれ以上進まず、抜くにも抜けないという最悪の状態。こうなると、上からくさびなどを打ち込んで無理やり薪を割ることになります)。
つまり何が言いたいかと言うと、薪割はそんな簡単じゃないということで、薪を割りたければ斧を使いましょうということです。バトニングはあくまで最後の手段で、薪割には斧を使うのがベターです。

そんなことは分かっている!それでもバトニングがしたい!という方は、こちらの沼にハマってください(苦笑)

ナイフの種類

バトニングの話が長くなってしまいましたが、そろそろ、キャンプとナイフの関係という本題に入りましょう。

まず、ナイフは大きく分けると、フォールディングナイフ、シースナイフ、マルチツールナイフの3種類に分けられます。

フォールディングナイフ


フォールディングナイフとは、ブレードを折り畳んでグリップの中に収納できるナイフのことです。先にも書いたオピネルなどが有名ですが、ナイフメーカー各社が様々なフォールディングナイフを出しています。

シースナイフ


シースナイフとは、ブレードとハンドルが固定式でシース(鞘)に収めて使うタイプのナイフです。フォールディング(折り畳み)に対してフィクスドブレードと言われることもあります。最もポピュラーで、構造が単純なため丈夫です。

マルチツールナイフ


マルチツールナイフとは、ナイフだけでなく、ハサミや缶切り、栓抜きなど様々な機能が入ったナイフのことです。ビクトリノックスとレザーマンが有名です。

さて、以上の3タイプの中で、まず最初に買うのであれば、フォールディングナイフとシースナイフを1本づつ買ってください。なぜかというと、用途が異なるからです。
ナイフは、汎用的に作られた刃物ではありますが、ブレードの形状や刃の構造に様々な特徴があり、ブレードの長さによっても使い勝手が大きく違ってくるからです。

フォールディングナイフを選ぼう

フォールディングナイフは、構造上折り畳めるため、ナイフがコンパクトになります。そのため、常時ポケットに入れておいて、必要に応じてさっと出して使うことができ、とても便利です。実生活でも、ちょっとはさみで切りたいとか、段ボールを開封するのにカッターが欲しいといった場面がありますが、そんな時でも、コンパクトなフォールディングナイフをポケットに入れていれば、さっと出して使うことができますので、1本あるととても便利です。


ここでポイントになってくるのが、ブレードの長さです。フォールディングナイフは、ブレードを折り畳んでグリップ内に収納するため、必ずブレードよりグリップが大きくなります。当然、ブレードが長くなればなるほど、グリップも大きくなり、結果としてコンパクトではなくなってしまいます。ポケットに入れて持ち運ぶことを考えると、折り畳んだ状態で全長10cm未満(できれば自分の手のひら内に収まるサイズ)が目安になります。一方で、ナイフの使い勝手としては、リンゴの皮むき・カットぐらいまでが無理なくできるサイズとして、ブレードの長さが6~8cm程度は欲しいところです。

オピネルのロック機構。ブレードつけ根のリングを回してロックする。

また、折り畳みナイフは、ブレードのロック機構があるものと無いものがありますが、これはブレードが使用中に閉じてしまって怪我をするのを避けるための機構で、当然ある方が安全なナイフですので、できるだけロック機構があるものが良いです。ロック機構にもブレードを全開した時に自動的にロックされるものと、手動でレバーなどを回してロックするものがあり、自動ロックの構造からロックバック、ライナーロック、ボルトアクションなどの種類があります。

フォールディングナイフのチェックポイント

  • 折り畳んだ状態で全長10cm未満(できれば自分の手のひら内に収まるサイズ)
  • ブレードの長さが6~8cm程度
  • ロック機構があるものを選ぶ(できれば自動ロック機構があるもの)

シースナイフを選ぼう

シースナイフは、ブレードとグリップが固定されているため、構造上フォールディングナイフより頑丈です。フォールディングナイフは、ピンでブレードをハンドルに留めているため、ブレードにかけた力がピンに集中する構造になっています。そのため、強い力をかけると、ピンが折れて最悪ブレードが飛んでいくこともあるため、あまり強い力がかけられません。しかし、シースナイフは、ブレードとグリップが一体構造になっているので、ブレードにかかった力をグリップの根本全体で受け止めるため、シースナイフよりはるかに強い力をかけることができます。

フルタング構造

このブレードにグリップを取り付ける部分のことをタングと言うのですが、タングの形状によって、更に細かく分かれています。詳細は省きますが、フルタングと言われるブレードとタングが一体で太さの変わらない物が一番強度が高く、ブレード幅よりもタングが細くなっている方が強度が低いです(ナロータング)。とは言え、バトニングで薪をガツガツ割らない限り、ナロータングのナイフでも十分な強度があります(と言うか、既に書いた通りナイフで薪をバトニングするのはお勧めしません)。
このように、フォールディングナイフより強度の高いシースナイフですが、ブレードの形状と厚みによって、更には鋼材によっても強度は当然異なってきますので、総合的に考える必要があります。

様々なブレードの長さのナイフ。
左端の88mmと右端の165mmでは2倍近い差がある。

ここでポイントとなるのが、フォールディングナイフと被らない機能性のナイフを選択するということです。一番はやはりブレードの長さです。フォールディングナイフが6~8cmであれば、それよりも長いものが良いですし、ちょっとした包丁の代わりになるサイズで考えると、10~12cm程度がベストです。15cmを超えてくると、重くて取り回しが大変になりますし、フェザースティックを作るような細かい作業には向きません(やれなくはないですが、キレイにできないですし、疲れます)。18cmを超えると、もはやナイフではなく鉈になりますので、別の用途になってきます。
次に、ブレードの厚みですが、これも分厚ければ良いというわけではありません。確かに、厚ければそれだけブレード全体のねじり耐性が高くなり、少々こじるような動作をしても折れたり曲がったりすることはありませんし、エッジ(刃)の付け方にもよりますが一般的には刃こぼれしにくくなります。

モーラ コンパニオンヘビーデューティーとケイバー ベッカーBK2

左が3.2mm、右が7mm弱。
これだけ厚さが違うと、切れ味や使い勝手も全く異なる。

しかし、ブレードが厚ければ、繊細な作業が困難になり、重量も増加するのでより力が必要になります。とは言え、本当に細かい作業はフォールディングナイフに任せて、大まかな作業はシースナイフで行うということを考えると、耐久性重視で、それなりの厚みが欲しくなります。結局どれぐらいが良いかと言うと、簡単な枝払いぐらいまでができる強度は欲しいところですので、鉈よりは薄目でと考えると、4mm程度のブレード厚が適切と言えます。参考までに、一般的な両刃鉈でだいたい刃厚が5~6mm程度の物が多いです。
あとは、ブレードの耐久性と切れ味です。シースナイフは、鉈代わりに枝を払ったり、ガシガシ木材を削ったりとハードに扱う場面が想定されるので、多少切れ味を犠牲にしても、より耐久性(耐摩耗性)が高く切れ味が持続する方が実用的です。また、水に濡れたり、トマトのような酸味のある食材を切ったりすることを考えると、錆に強いステンレスが良いです。

シースナイフのチェックポイント

  • ブレードの長さが10~12cm程度
  • ブレード厚が4mm程度
  • 鋼材は切れ味よりも耐摩耗性・耐食性の高いステンレス

さて、本当は、私のおススメの製品を紹介するつもりでしたが、あまりにも説明が長くなりすぎたので、後編に続きます。

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