キャンプにナイフは必要?初めてのナイフの選び方(後編)

2019年4月12日

キャンプtips ナイフ沼

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キャンプとナイフの関係の後編です。前編では、ナイフの種類の紹介とフォールディングナイフ・シースナイフの選ぶポイントをご紹介しましたので、後編では私なりのおススメを紹介したいと思います。


では、まずフォールディングナイフから考えていきます。フォールディングナイフで一番有名なナイフは、やはり前編でもあげたオピネルだと思います。極めてシンプルな作りですが、刃のロック機構も備えているため、作業中に誤って刃を閉じてしまって怪我をするということもありません。また、刃の鋼材はカーボンスチール(炭素鋼)とステンレスの2種類から選べ、どちらの鋼材でも値段はほとんど変わらず安価です。カーボンスチールは、切れ味が良いですが、錆びやすいです。ステンレスは、切れ味はカーボンより僅かに落ちますが、錆びに強いです。私はどちらも持っていますが、どちらかと言えばステンレスをオススメします。とにかくカーボンスチールは、錆びやすく、玉ねぎのみじん切りをしている最中に錆びてきて、切った玉ねぎに錆が移って切り口が黒くなるぐらいです。黒錆加工という方法で、刃を錆に強くする方法もありますが、そこまでするなら、ステンレスを買う方が良いと思います。
と、ここまで書いてきて何ですが、正直オピネルはオススメしません。オピネルは、ハンドルが木材で出来ており、丸い木に切れ目を入れて、そこにブレードを挟み込んだような形をしています。そのため、ハンドル(特にブレードのつけ根部分)を水で濡らすと木材が水を吸って膨張するため、ブレードの出し入れが物凄く固くなり、場合によっては、ペンチで引っ張らないと開かなくなったりします。


余談ですが、オピネルが開かなくなった時は、ブレードを下にしてハンドルの底部を薪などに打ち付けてみてください。反動で、ブレードが出てきますので、あとはブレードを強引に引っ張れば開きます。


さらに、もう一つ致命的なのが、片手で開けられないという点です。オピネルは、ブレードについているネイルマーク(くぼみ)に爪を引っ掛けて開けるため、どうしても両手で開けなければなりません。しかし、BUCK(バック)やSpyderco(スパイダルコ)といった他のメーカーのナイフは、サムスタッドやサムホールという指を引っ掛ける所があり、それを親指でフリップして開くことができるように設計されているため、片手で開くことができます。


この、片手で開けられるというのがとても重要なポイントです。ナイフが必要な場面を考えてみると、パッケージを開ける、物を縛った紐を切るなど、片手が塞がった状態が多いです。そんな時に、片手で開けられるナイフは、とても便利です。

それでは、私のオススメをご紹介します。

BUCK(バック) バンタム 284

BUCK(バック) バンタム 284
バックは、1902年創業のアメリカのナイフメーカーです。フォールディングハンター110というロックバック式フォールディングナイフが全世界でベストセラーとなり、フォールディングナイフの代名詞とまでなりました。
そんなバックのフォールディングナイフの中で、安価で使い勝手の良いのがバンタムシリーズです。
折り畳んだ状態の大きさが9.5cm、刃長6.2cmと手のひらに収まる丁度良い大きさで、片手で操作できる操作性と相まって、とても使い勝手が良いナイフです。重量も43gと、フォールディングハンター110の205gに比べて圧倒的に軽いため、ポケットに入れていても持ち重りしません。
鋼材は、420HCステンレス鋼ですが、これはバックの折り畳みナイフはフォールディングハンター110も含め殆ど420HCなので、コストパフォーマンスも考えると妥当と言えます。
尚、バンタムシリーズには、285やBLWという刃長7.9cmと一回り大きなサイズもありますので、手の大きな方はこちらもおススメです。




SPYDERCO(スパイダルコ) デリカ4FFG


スパイダルコは、ブレードにサムホールという丸い穴が空たフォールディングナイフで有名なメーカーです。バックなどのサムスタッド(ブレード上の突起)に親指をかけてフリップして開くのに比べ、サムホールの方が操作性に優れており、グローブをしていても開きやすいというのが特徴で、このサムホールはスパイダルコの特許になっています。


また、ブレードタング(ブレードのつけ根の刃が付いていない部分)が長めにとられているため、ブレードを閉じる時に指に当たっても怪我をすることがありません。一般的なフォールディングナイフは、刃長を稼ぐためにブレードタングを短くしたデザインの物が多いのですが、スパイダルコはスペック上の刃長よりも安全性を優先していることが良く分かります。
スパイダルコには、様々な種類のフォールディングナイフがありますが、中でもこのデリカが一番バランスの良いモデルです。折りたたんだ状態で10.7㎝と少し大きめですが、刃長6.5cmは、日用ユースとして荷造り紐の切断から段ボールの解体までオールマイティーに使えるちょうど良い大きさです。
ハンドルはFRN(ガラス繊維強化プラスチック)で、蜘蛛の巣のようなデザインパターンの滑り止めが施されており、高いホールド性があります。
スパイダルコは、1つのモデルに対してバリエーションが豊富なメーカーで、デリカも、刃の形で、フルフラットグラインド(FFG、直刀)、ハーフセレーション(半波刃)、フルセレーション(全波刃)などの種類がありますが、波刃は研ぐのにテクニックと道具が必要となるので、フルフラットグラインドがおススメです。また、鋼材も色々あるのですが、VG10が切れ味と錆びにくさを両立しています。海釣りなどで使用したい場合は、より錆びに強いH1、より切れ味を求めるならZDP189となります。ZDP189は、非常に硬度が高いため切れ味が良く(最強クラスです)、刃もちもよい(切れ味が落ちにくい)のが特徴ですが、価格が高いのが難点です。
※H1、ZDP189共、現在は鋼材の製造が終了しているため、流通在庫が無くなり次第、販売終了となります。

スパイダルコは、非常に実用的なナイフ作りを行っているメーカーで、デリカも実用品として考え抜かれた構造とデザインになっており、私が最もおススメするフォールディングナイフです。価格が8000円以上しますが、機能性・利便性・安全性の全ての点において高い性能を誇っており、間違いなく一生使い続けられるフォールディングナイフです。
最後になりましたが、デリカは日本の関市にある刃物メーカーのG・サカイで製造されています。







次に、シースナイフについて考えていきます。

Mora knife Companion Heavy Duty MG

シースナイフについても、定番と言われるナイフがあります。Mora knife(モーラナイフ)の Companion Heavy Duty MG(コンパニオン ヘビーデューティーMG)です(詳細レビューはこちら)。
モーラナイフは、創業125年(2019年4月現在)を迎えるスウェーデンのナイフメーカーで、日本でも非常に人気があります。コンパニオン ヘビーデューティーMGはそんなモーラを代表するナイフで、最もポピュラーなナイフです。その最大の理由は、販売価格が3,000円以下ととても安いのですが、そこそこ頑丈で良く切れるからです。刃長10.4cm、刃厚3.2mmで、重量は101gと軽量です。鋼材はカーボンスチール(炭素鋼)で、スカンジグラインドと言われる切れ味と耐久性を両立させたエッジ形状ですので、切れ味も良くとてもコストパフォーマンスが高いナイフです。ちなみに、鋼材がステンレスの物も今年から発売開始となりましたので、そちらもおススメです。モーラのステンレス鋼は、スウェーデン製の12C27というナイフ用鋼材としては中級クラス以上の鋼材を使用しており、価格もMG同様3,000円を切っているのでおススメです。通常、この価格帯の安いナイフは、3Cr13という中国製ステンレス鋼材か、良くても420系の安価な鋼材が使われているのですが、12C27は440Cというナイフ鋼材としては中級クラスの鋼材に匹敵する性能があり、そんな鋼材が使われたナイフが3,000円以下で買えるというのは、バーゲンプライスもいいところです。

※コンパニオンシリーズは、ヘビーデューティーでないノーマルのコンパニオンも出ており、刃厚がカーボンスチールが2.0mm、ステンレスが2.5mmと、ヘビーデューティーよりも薄くなっています。

ただ、だからこそ中途半端な性能と言う面もあります。確かに価格以上の性能ではありますが、ハンドルがラバープラスチックでナロータングを覆うような一体成型で、タングもかなり細いので耐久性の面ではいまいちです。刃厚も3.2mmと少し薄いので、そういった意味では、耐久性に関する全体のバランスは良いとも言えますが、バトニングやチョッピングで木を削ったり枝を払ったりするには、もう少し強度が欲しいところです。
但し、これはキャンプからその延長としてのブッシュクラフトという観点ですので、よりトレッキング・登山用途で考えると、プラスチックシースも含めて全体の耐久性と重量のバランスが良いため、コンパニオンヘビーデューティーは最適解と言えるでしょう。





では、私のおススメをご紹介します。

BARK RIVER(バークリバー) ブラボー1 CPM3V

BARK RIVER(バークリバー) ブラボー1 CPM3V
バトニングするならブラボーと言われるぐらい、ブッシュクラフト界では有名なナイフ。刃長107mm、刃厚5.5mmのフルタングと、これ以上ないぐらい頑丈なナイフです。CPM3Vというのはナイフの鋼材名で、工具鋼の一種です。工具鋼は、ドリルや工業用カッターなどに使われる鋼材で、靭性や耐衝撃性、耐摩耗性が高いのが特徴です。CPM3Vは、特に靭性が桁外れに高いため(A2の2倍)、耐衝撃性が高く、バトニングにも向いています。工具鋼ですので、ステンレスほどは耐食性が高くないという欠点がありますが、炭素鋼に比べれば圧倒的に錆に強いです。
ちなみに、ブラボーにはA2という炭素鋼を使ったモデルもありますが、炭素鋼は錆びやすく管理に気をつける必要があります。
エッジは、コンベックスグラインド(蛤刃)と言われるもので、正にハマグリを合わせた断面のように、刃の断面が膨らんでいる形状のため、刃こぼれしにくく耐久性に優れています(日本刀もコンベックスグラインドです)。
欠点は、とにかく価格が高く、他のナイフの2~3倍する点です。

※A2は、鋼材製造元のクルーシブル社のカタログ上では工具鋼に分類されているが、多くの炭素鋼と同様に水にぬらすと赤錆が浮いてくるので、本稿では炭素鋼として分類している。




FALLKNIVEN(ファルクニーベン) F1

FALLKNIVEN(ファルクニーベン) F1
ファルクニーベンは、モーラと同じくスウェーデンのナイフメーカーです。このF1は、スウェーデン空軍の要請を受けてファルクニーベンが開発したナイフです。空軍ですので、戦闘機に乗っていれば墜落することもあるわけで、脱出してパラシュート降下したら、その場で救出隊がくるまで生き延びなければなりません。F1は、そんな場面を想定した、正にサバイバルナイフとして設計されたナイフです。
刃長97mm、刃厚4.5mmでフルタングに近いラップドタングで、グリップエンドから突き出したタング部分でファイヤースチールをこすって火熾しをすることも可能です。エッジも、ブラボー1同様にコンベックスグラインドで仕上げられています。
尚、ブレード鋼は、VG10という強度と耐食性に優れた鋼材を、粘り気の高いステンレス鋼で挟み込んだ構造で、高い強度と切れ味を両立しています。
このように構造的にも優れたF1のブレードですが、実は日本の関市で生産されています。




COLD STEEL(コールドスチール) マスターハンター サンマイ三

COLD STEEL(コールドスチール) マスターハンター サンマイ三
コールドスチールは、アメリカのナイフメーカーで、フォールディングナイフから黒い炭素鋼の日本刀まで制作しているユニークなメーカーです。マスターハンターは、刃長117mm、刃厚4.7mmと、今回紹介する3本の中で刃長が一番長いナイフですが、フルタングではなくナロータングになります。ただ、ナローとはいえタング部分もそれなりの幅と大きさがあるので強度的にはフルタングに近いと言えます。エッジは、コンベックスグラインドで仕上げられています。
ファルクニーベンのF1と同様に、高い強度のVG1を粘り気の高いステンレス鋼で挟んだ構造をしており、ブレードにはVG1 SANMAI三というロゴと共にMADE IN JAPANと銘が入っています。




さて、3本の中からどれを選ぶかということになりますが、私の個人的なおススメはファルクニーベンF1となります。刃長9.7cmと選定のポイントとして挙げていた10cmに少し届きませんが、刃厚は4.5mmと申し分なくフルタング並みの強度を誇り、切れ味と強度に優れた3層構造と、理想的なシースナイフと言えます。予算が許せばバークリバーのブラボー1と言いたいところですが、価格的には2/3程度で購入できるF1に軍配が上がります。コールドスチールのマスターハンターも良いのですが、グリップエンドにタングが突き出していないという点が私として減点になっています。突き出したタングは、簡易的なハンマーの代わりにもなり、更にここを木の棒などで叩いてノミ代わりにしてポイント(刃先)で木を削ることもできます。
※F1の詳しいレビューはこちら

ちなみに、モーラにもF1同様のフルタングに近いGarberg(ガーバーグ)というモデルがありますが、販売価格が12,000円ほどするため、コンパニオンヘビーデューティーほどのコストパフォーマンスがありません(それでもF1より安いですが)。また、刃長は109mmですが刃厚が3.2mmで、ちょっと迫力が足りないです。

以上、フォールディングナイフとシースナイフを紹介しましたが、この2本のナイフをうまく使い分けていけば、キャンプの楽しみが更に広がっていきますので、ぜひ挑戦してみてください。


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