CB缶やOD缶に互換性はある?

2022年4月26日

キャンプtips バーナー

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以前、スノーピークのHOME&CAMPバーナーを購入した時の事。カウンターで支払いを済ませ、商品を受け取ろうとした時に、店員さんから一言「ガスは、スノーピーク純正のギガパワーしか使用できませんので」と言われ一瞬ドキッとしました。


スノーピークのHOME&CAMPバーナー


HOME&CAMPバーナーは、CB缶(カセットボンベ)が使えるガスコンロです。大きく安定したゴトクが、コンパクトかつスタイリッシュに収納できるため、家でもキャンプでも使える便利なコンロです。

CB缶は、コンビニでも売っているガスボンベで、入手の容易さから、多くのキャンパーに親しまれています。このCB缶は、所謂カセットコンロと言われる製品で使用可能とされており、家庭用からアウトドア向けまで、幅広く普及しています。

では、アウトドア店の店員さんは何故スノーピーク純正しか使えないと言ったのでしょうか。


先ずは、核心に迫る前に、CB缶とOD缶の規格についてお話しましょう。


CB缶(カセットボンベ)の規格

CB缶(カセットボンベ)


カセットボンベとそれを使用するカセットコンロは、岩谷産業が1969年に発売した卓上カセットコンロ「イワタニホースノン・カセットフー」に端を発します。ガスホース不要で、簡便なガスコンロは、瞬く間に人気となり、岩谷産業以外の会社からも同等品が販売されるようになりました。その後、1991年には、カセットこんろ(JIS S2147)カセットこんろ用燃料容器(JIS S2148)が日本工業規格として制定されました。

ところが、当初のJIS規格では、缶の形状や寸法があいまいで、十分な統一がされておらず、完全な互換性は保証されていませんでした。これが問題となったのが、1995年の「阪神・淡路大震災」です。

明石海峡沖でマグニチュード7.3を記録した阪神・淡路大震災は、神戸市を中心に深度7の揺れを引き起こし、ビルや高速道路、架線などの多くが倒壊しました。当時学生だった私は、大阪市の実家で生活しており、屋根瓦が落ちるなどの被害に遭いました。その後、ボランティア活動に参加しましたが、あの時の凄惨な状態は忘れることができません。

この時、全国から様々な救援物資が届いたのですが、その中にカセットコンロがありました。被災日は1月17日と、冬の最中ということもあり、カセットコンロのような調理器具は現場で必要とされていました。ところが、コンロとボンベがメーカーによって微妙に互換性が無く、被災地では使えないコンロとボンベが山積みとなりました。

これを重く見た業界関係者は、カセットこんろとカセットボンベの規格統一を行うこととなり、1998年にJIS規格が改定され、ガス缶の形状が統一されました。そのため、これ以降は、メーカーを問わず、カセットコンロとボンベを使用することができるようになりました。


OD缶(アウトドア缶)の規格

OD缶


OD缶の規格は、結構複雑です。欧州のアウトドアメーカーは、缶自体は欧州規格EN417によって規定されており、バルブ自体はドイツに本社を置くリンダル社のLindal B188バルブを採用することで事実上各社統一されています。

日本のアウトドアメーカーのバーナーも、この流れに準ずる形で設計・製造されているので、事実上、EN417とLindal B188バルブ(以下Lindalバルブ)に準拠しています。


さて、ではCB缶もOD缶も規格は事実上統一されているので、互換性は有ると言えるのでしょうか。実は、話はそう簡単ではありません。


PSLPGとJIA

日本で販売されているバーナーなどのガス器具は、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」という法律があり、経済産業省が所管しています。高圧で可燃性の液化石油ガス(LPガス)を扱う器具は、安全性を保障する必要がるので、国の基準に適合した製品でないと販売してはいけない事になっています。


PSLPGマーク


PSLPGに適合したポータブルコンロ・ガスバーナー類は、ひし形のPSLPGマークが製品やパッケージに入っています。このマークが入っていない製品は、日本政府による安全性が確認されていない製品となります。

近年は、アマゾンや楽天などで、海外製の直輸入品を購入できるようになりましたが、中には粗悪品も存在するので、注意が必要です。実際、焚火やバーベキューなどの火起こしで使うガストーチで、CB缶との接合部からガスが漏れて引火する事故が年々増加しています。


一方、JIA(一般財団法人日本ガス機器検査協会)は、ガス機器、ガス報知器などの製品に関する業界団体で、JIA独自基準で製品の安全性をテストしています。このJIAのテストに合格した製品は、安全性を認定した証拠としてJIAマークを製品に付けることができます。


JIA認証マーク
ドンキで売っている激安CB缶。製造は大陸製缶という韓国のメーカーだが、日本国内で販売するにあたってJIAの認定を受けている。


注意点としては、PSLPGはガス器具類(カセットコンロ、ガスバーナー)の安全性を保障するマークですので、ガス缶(CB缶・OD缶)は適用外ということです。JIAは両方カバーしているので、JIAに製品を提出して検査・合格した物は、ガス器具・ガス缶問わずJIAマークが入っています。


PL法と生産物賠償責任保険について

よく間違われているのが、PL法(製造物責任法)と生産物賠償責任保険(PL保険)です。

PL法は、製品の欠陥によって、身体又は財産に被害を被った場合に、製造業者等に対して損害賠償を求めることができるとする法律です。以前は、企業が粗悪品を製造し消費者に損害を与えても、損害賠償を請求するためには、加害者(企業)の過失を証明しなければならず、泣き寝入りなるケースが横行していました。

これに対抗するために造られたのがPL法で、製品の欠陥を証明するだけで、被害者は損害賠償を請求できるようになりました。

一方、企業側は、PL法によって消費者から訴訟されるリスクが高まったため、もしも損害賠償責任が発生した場合に備えて、企業側が加入する保険です。今回のガス缶の例で言うと、ガス缶に製造上の欠陥が生じ、それによって火災になった場合、消費者がガス缶製造会社に求めた被害額を保険で肩代わりしてくれるということになります。


生産物賠償責任保険とプリントされたEPIのOD缶


EPIのOD缶などには、「生産物賠償責任保険」とプリントされていますが、これは、そういった保険に入っているので、万が一のことがあったらその保険で補償しますということを意味しています。PL保険は、企業側を守る保険ですから、この保険に加入していなくてもPL法上の責任と義務は発生します。ですから、生産物賠償責任保険とプリントされていない製品は、万が一の保証が受けられないという意味ではありません。

注意点としては、PL法はあくまで製品に過失があった場合に企業責任を問える法律ですから、ユーザー側が間違った使い方をして損害を被った場合は、保証対象外だということです。鉄板焼きで、CB缶の上まで鉄板で覆ってしまうような使い方をして、輻射熱でボンベが破裂しても、企業の責任は問えません。


そもそも、ガスボンベの製造メーカーは?

ガスボンベは、高圧で液体状のガスを缶に充填する必要があるため、かなり特殊な製造技術が必要になります。そのため、バーナーを販売している各メーカーも、ガス缶は製造を委託しています。下記は、主なメーカーと委託先です。


・東邦金属
EPI、SOTO、ユニフレーム、コールマン、キャプテンスタッグ

・NKK
PRIMUS

・太陽
スノーピーク


多くのアウトドアメーカーは、東邦金属工業株式会社に製造を委託しています。また、PRIMUSのブランドを展開しているイワタニは、NKKに委託していますが、これはイワタニ産業の子会社です。

スノーピークのみ、太陽という韓国企業に委託しています。これは、スノーピークの各種ガス器具の製造が、韓国であることと関係があると思います(詳細不明)。


さて、委託先を見ると、殆どが東邦金属ですから、SOTOでコールマンのボンベを使っても、ユニフレームでキャプテンスタッグのボンベを使っても問題無さそうに思えます。

CB缶は、JIS規格で統一されているので、同じ東邦金属で作られたものであれば、ラベルが違うだけということになります。

OD缶も、欧州規格に従って同じ会社が製造しているわけですから、違いが出るとは考えにくいというのが実情です。


CB缶やOD缶の互換性は?

結局、CB缶やOD缶に互換性はあるのかと言うと、「あるけれど、表向きはメーカーが認めていない」というのが答えです。


各社から販売されているCB缶とOD缶


冒頭のスノーピークの話で言えば、HOME&CAMPバーナーは、PSLPGとJIAの両方の認定を受けていますので、カセットボンベ対応ガス器具としては、十分な安全性が保障された製品ということになります。使用するCB缶については、サードパーティー製でも、JIS規格に従って作られているなら、事実上の互換性があります。特に、JIAの認定を受けているCB缶なら、安全性も担保されていますから、理論上100%の互換性があると言えます。


OD缶についても、メーカーは公証していませんが、事実上EN417とLindal B188バルブに準拠していますから、互換性があると言えます。PSLPG認定を受けているバーナーであれば、安全性は担保されていますし、OD缶側もLindal B188バルブを使用している限り、互換性も含めて安全性に問題はありません。当然、OD缶にJIA認証マークが入っていれば、安全性も担保されています。


生産物賠償責任保険とJIS認証マークが入ったSOTOのOD缶


そもそも、各メーカーがEN417とLindal B188に準拠している理由は、互換性がある方が売れるからです。実は、1980年代にはCamping gaz(キャンピングガス)というフランスのアウトドアメーカーが、バーナーやランタンを販売しており、日本でもかなり売られていました。キャンピングガスは、ガス缶の口金が独自形状だったため、他のメーカーと互換性がありませんでした。私も、昔はガスバーナーとランタンをキャンピングガスで統一していましたが、互換性が無いため人気が無く、次第に他のメーカーに押される形で、日本市場から消えてしまいました。

この教訓があるからこそ、各メーカーはEN417とLindal B188バルブに準拠したガス器具を作っているのです。


以上、基本的には、メーカーは公証していませんが、CB缶・OD缶共に互換性はあることになります。


ただ、1つだけ考慮する必要があるのが、対応ガス缶の成分です。

CB缶に使われているガスは、ブタンガス以外に、イソブタンがあります。加えて、OD缶の場合は、プロパンが入っている製品があります。この3種類のガスは、気化温度(沸点)が異なり、ブタン-0.5℃、イソブタン-11.7℃、プロパン-42℃となっています。常温では、沸点が低いガスほど高圧になりますので、ブタンしか使われていない一般的なCB缶に比べ、イソブタンが含まれるパワーガスなどは圧力が高くなります。また、イソブタンやプロパンは、火力もブタンより高いため、ガス器具自体がより高温になります。

そのため、ブタンガス100%のボンベにしか対応していないバーナーで、高圧・高火力なプロパン入りのガス缶を使うと、爆発や炎上はしないまでも、長時間の使用による故障や劣化は考えられますので、多少注意が必要でしょう。

尤も、ガス缶に互換性を求めるのは、そもそも、各メーカーが出している物より安い物で代用したいためですから、わざわざイソブタンやプロパンの入った高いガス缶を買うことは無いでしょう。


迷うのが、イソブタンやプロパンに対応した高火力バーナーで、純正以外のガス缶を使う場合です。例えば、SOTOのOD缶のパワーガスSOD-725Tは、ブタン・イソブタン・プロパンの3種類が入っていますが、EPIのパワープラスは、ブタンとプロパンだけです。この場合、SOTOのバーナーでEPIのOD缶は使えるのでしょうか?

ここからは私の推測になりますが、基本的には問題無いと思っています。メーカー側はPL法の問題もあって、極力条件を絞ろうとしますが、多少のガスの成分が違うだけで重大事故になるようならば、そもそも独自規格にすべきです。

一般的に、安全性が優先されるガス器具などの工業製品は、長時間や長期に渡っての使用を考慮し、堅牢性や耐久性について十分に余力を持った設計になっています。ですから、多少ガス成分の異なるボンベを使用したぐらいで壊れるということは無いでしょう。



さて、実質的には、CB缶やOD缶に互換性があるのに、なぜ各メーカーは、自社製のガス缶以外は使用しないようにアナウンスしているのでしょうか。実は、それは企業サイドを守るための一種の口実なのです。

バーナーとガス缶共に自社製品を使っていれば、何か起こっても自社の責任ということがはっきりしますが、バーナーとガス缶のメーカーが異なると、何か事故が起こった場合、責任のなすりあいになることは想像に難くありません。一方、製品保証という点では、他社製品が使われた場合、どのような問題が起こるか想定が難しくなります。メーカーにとっては、他社製品との組み合わせも全て調査しなければならなくなると、それなりに手間とコストがかかりますので、自社製品のみしか使えないと公証しておく方が都合が良いのです。

どうしても、他社製品を使われるのが嫌であれば、キャンピングガスのように他社との互換性を無くしてしまえば良いだけなのですが、それをやらずに消費者に責任を押し付けるのは、メーカーのエゴというものです。


以上、CB缶やOD缶に互換性があることはお分かり頂けたと思いますが、他社のガス缶を使って事故に遭った場合どうなるかというと、それでもPL法は効いていますので、法律上は問題無く保証を受けられますので安心してください。



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