真田紐(さなだひも)は、木綿の縦糸と横糸を織機で織って作られた紐です。
ロープなどのように糸を撚って(よって)作るのではなく、織物のため殆ど伸びないというのが特徴です。また、非常に高密度に織られているため、高い強度を誇ります。
そのため、江戸自体には、茶道具の桐箱をくくる紐から、荷物運びまで様々な場面で用いられていました。
真田紐は、関ケ原の戦いに敗れた真田昌幸・信繁(幸村)父子が、蟄居先の九度山で生計を立てるために作っていたことから名づけられたという逸話があります。但し、元々の真田紐の産地は、三重県伊賀市ですから、幸村が流された和歌山県九度山とは距離があるため、真田紐が真田氏と関係があるかは疑問です。
それはさておき、真田紐は和製パラコードとも言える丈夫な紐ですから、アウトドアユースにもおすすめです。
左が4分幅、右が3分幅。 |
真田紐は、織物ですから様々な柄(がら)があるのも特徴。江戸時代には、家紋を入れた物もあり、武士を中心に使われていました。太さも豊富で、2分から4分あたりが最も良く使われています。(1分は3.03mm)
真田紐の使い道として、最もポピュラーなのは靴紐だと思いますが、アウトドアユースで考えると、この個性的な柄も活かしたいところです。そこで、私が思いついたのがナイフへの応用です。
日本の伝統的な打ち刃物の技術を使った和製ナイフには、柄(ハンドル)を付けず、パラコードを巻いたものがあります。こういったナイフは、パラコードを真田紐に交換することができます。
今回用意したのは、トヨクニ(豊国鍛工場)の独遊(ひとりあそび)。真田紐は、3分幅を使用しました。
真田紐は、平織りのため、パラコードと同じ結び方をすると、ガタガタになってしまい、きれいに結べません。
そこで、参考になるのが、刀の柄の結び方です。柄巻き(刀の柄の結び方)も色々あるのですが、平織りの紐を使うのが主流ですから、真田紐を結ぶのに向いています。
では、結び方をご紹介しましょう。今回参考にしたのは、柄巻きの一種「捻り巻」。
先ずは、紐の長さの真ん中に合わせてナイフを置きます。ここから結び始めていきます。
右側の紐を折り返し、ナイフ中央で直角に下向きに捻ります。この時、紐の裏側へ向けて捻ります。
更に、左に向かって捻ります。
反対側の紐も同様に、下に捻ります。
更に、右に向かって捻ります。
ここで、しっかり締め込んで、養生テープで緩まないように留めます。写真は、途中まで巻いた状態ですが、基本的には、毎回このようにテープで留めていくと、緩まずにしっかりと巻いていくことができます。
ナイフを返し、反対側を巻いていきます。
先ほどと同様、右側の紐を折り返し、ナイフ中央で直角に下向きに捻ります。この時、紐の裏側へ向けて捻ります。
更に、左に向かって捻ります。
今度は、先ほどとは逆に、左側から先に捻っていきます。
左側の紐を巻き終わったら、今度は右側から巻いていきます。
ここで、捻り巻の特徴である、菱形模様ができあがります。
独遊には、指を置くための窪みがあるため、これが影響して綺麗な菱形になっていませんが、この段階で、できるだけ綺麗な菱形になるように捻りを調整しつつ、しっかりと締め込みます。
養生テープで仮止めしたら、ナイフを裏返して反対側も同じように巻いていきます。
あとは、これを繰り返していくだけです。
最後に、紐を結んで留めます。独遊は、パラコードを通して留める穴が2つ開いているため、真田紐を折り畳んで穴に通して結びます。
余った紐は、ループにして、端を切り揃えて完成。
真田紐は、固いのでしっかりと90度の角度で折り返すのがコツです。菱形をイメージしながら、菱形がナイフの真ん中に来るように巻いていくと綺麗に巻くことができます。
言うは易しで、私も何度かやり直しながら巻きました(苦笑)。
真田紐は、木綿の糸を織り込んで作られているため、グリップが良く効きます。捻り巻きの凹凸も握りやすく、パラコードよりも手触りが良いので、とても満足しています。
唯一の欠点は、シースが大きすぎてスカスカになってしまったことでしょうか。
パラコードの結びに比べて、捻り巻は凹凸の高さが低いため、シースへの引っかかりが悪くてナイフが抜けやすくなってしまいました。
仕方が無いので、余った紐を結び付けて、シースへの引っかかりを作ってみました。
これで、様子を見ながら調整していきたいと思います。
真田紐は、強度が高いだけでなく、カラフルでデザイン性があるため、刀の柄巻きと合わせると、和式ナイフに良く映えます。
和製パラコードとして、他にも使い道がありそうなので、今後も色々試してみたいと思います。