きっと私はこのナイフを使いこなせない キムンカムイ

2021年4月5日

ナイフ沼

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私は、ナイフを20本ほど持っていますが、実は購入にあたってのMyルールがあります。


実用品であること


自分が使いこなせること


価格が原則3万円未満であること


これ以外に、品質やコスパについての拘りもありますが、概ねこのMyルールに従っています。

先ず、「実用品であること」ですが、ナイフは道具ですから、日常やアウトドアで使ってなんぼのものです。ナイフには、鑑賞用というコレクター要素の強い分野がありますが、これは私の範疇外です。また、カスタムナイフのような趣味性の高い物も、対象外としています。カスタムナイフとは、ナイフ職人が1本1本手作りしているナイフで、1つとして同じものが無いというようなナイフです。ですから、オーダーメードなど論外です。だって、私の性格から言って、そっちに進んでしまうと、出費がエライことになって、家庭が崩壊しますから(苦笑)。

次に、「自分が使いこなせること」ですが、ナイフを実用品として使うわけですから、自分に合わないものを持っていても意味が無いからです。私は、ジャングルのような森で藪漕ぎをするわけでは無いので、マチェットは不要ですし、猟師でもありませんから、剣鉈も必要ありません。

最後に、「価格が原則3万円未満であること」です。ナイフを実用する上では、失くすこともありますから、あまり高価な物は敬遠します。バカ高いナイフを買って、万が一失くしたりしたら、キャンプが嫌になってやめてしまうかもしれません(笑)。バークリバーは、3万円未満というルールを満たしていませんが、ブラボーのようなナイフは使い込んでみないと本当の良さは分からないので、例外的に購入したナイフです。


そんな私が、先日Myルールを破って購入してしまったナイフがあります。



キムンカムイです。


キムンカムイとは、アイヌ語で「山の神」という意味で、ヒグマのことを指します。

このナイフをデザインしたのが、北海道のハンター中條高明さん。

中條さんによると、鉈がわりにも使える頑丈さと、獲物に刃が食い込みやすい鋭い切れ味を共存させたナイフだということです。厳冬期の北海道で、素早く正確に使いこなせるよう、ブレード形状やグリップを工夫し、脂や血糊が付き難く、付いてもふき取りやすいようにミラーフィニッシュにしてあるなど、将に極限での狩猟に特化したナイフです。



私がこのナイフを知ったのは、BE-PALの「ナイフのトリセツ」という特集でした(2020年6月号)。紙面でこのナイフを見て、思わず手に取りたくなったのですが、刃長135mmmのスキナータイプとなると、私には使いこなせる気がしませんでした。スキナーは、動物の皮剥ぎ用ナイフですから、通常用途には使い難いのです。以前、BUCKのスキナーを持っていたのですが、使いこなせずお蔵入りしてしまいました。定価も税込みで5万円オーバーと、私にとっては金額的にも手の届かないナイフでしたので、その時は買うのを諦めたのです。


そんなことで、キムンカムイの存在を忘れていたのですが、先日の夜中に突然思い出してしまったのです。その日は眠りが浅く、夜中の2時頃に目が覚めてしまいました。やることが無くて暇ですから、何気にネットサーフィンしていたのですが、弟と罠猟について話をしたのを思い出し(弟は罠猟の免許を持っている)、猟について調べてみることに。罠猟の大変さや、解体の話などを読んでいるうちに、思い出してしまったのです。


キムンカムイ、今いくらやろ・・・


・・・楽天でめっちゃ安なってるやん!(それでも37,840円)


しかも、楽天ポイント4.5倍!?


思わずカートに入れたのですが・・・やっぱりこのナイフを使いこなす場面が思い浮かばないので、布団の中で暫し黙考・・・。


あかん、このままでは気になって寝られへん!


エエイ!・・・ポチッ!!


こうして、我が家にキムンカムイがやってきてしまいました(*’ω’*)



キムンカムイは、刃物の町、岐阜県関市のG・サカイが製造しています。G・サカイは、1947年創業の刃物メーカーですが、ガーバーのナイフを製造したことで世界的に有名になりました。それ以来、多くのナイフメーカーにOEM供給するようになり、代表的な物にはスパイダルコのエンデューラやデリカがあります。


ブレードに刻印されたアイヌ文様。リカッソには小さくSEKI-JAPANと入っている。


全体のフォルムは、スキナーを意識した幅広のドロップポイント。ブレードはフルフラットグラインド。



ハンドルは、親指部分がかなりえぐれたデザインで、ヒルト状になっているので、手が滑りにくく安全です。中條氏の解説によると、刃を上向きにして構えることもできるように、この形になっているとのこと。

フィンガーチョイルがあるので、細かい作業もそれなりにこなせそうです。



ポイント先端は、比較的に尖っており、刺さりも悪くありません。この辺は、完全なスキナーではなく、スキニングもこなせるナイフということでしょう。



タングは、重量配分を考慮したフルテーパードタング。鉈のような使い方を考慮して、ブレードヘビーになっています。



刃厚は最大5mmで、スパイン側が一部削られています。そのため、刃厚の割にはシュッとしたデザインに仕上がっており、カッコイイです(笑)。



綺麗に磨き上げられたミラーフィニッシュが魅力的ですが・・・



表面に僅かな線が入っています。加工時のグラインダーのすじが残っているようです。

ぱっと見は分からないのですが、前のポイント部分の写真にもあるように、光を当てるとすじが見えます。

まあ、大型のナイフですし、ファクトリー製ということを考えれば、こんなもんかもしれません。


ちなみに、ブレードのエッジ付近に入っている線は、鋼材がVG-10を420J2で挟み込んだクラッド鋼だからです。VG-10のクラッド鋼と言えば、ファルクニーベンF1でも採用されており、ブレードを製作しているのは同じく関の服部刃物ですから、服部刃物vsG・サカイなんてやってみるのも面白いかもしれません。


エッジの研ぎは、あまり良くありません。G・サカイのナイフは、どれも研ぎがイマイチなので、これについては想定内。



悪いと言っても、実用上は問題無いレベルですから、箱出しで充分に切れます。



革製のシースが付属していますが、これについては、狩猟での実用性を優先するならカイデックスの方が良いと思うのですが。


実は、ハンドルの出来がイマイチです。



全体的に削りが荒く、ブレード付け根部分には、僅かに隙間があります。本来、狩猟用と考えると、血糊がタングとハンドルの間に入るのを防ぐのが定石なのですが、これだけ隙間があると、毎回分解洗浄が必要になりそうです。

ハンドル素材もG10と、このクラスのナイフとしては安っぽいです。値段的に同クラスの、バークリバーやTOPS同様、キャンバスマイカルタを採用して欲しかったです。

ハンドル表面には、全体に市松模様の凹凸加工がされているので、充分なトラクションが確保されています。握った感じも、悪くはありませんが、もう少し厚みがあった方がホールドしやすいと感じます。

一番の問題は、フルテーパードタングなのに、ハンドルの厚みが変わらないので、バット(柄尻)にかけて上から見るとすぼまっている点です。フルテーパードタングは、バットに向けてテーパー(先細り)加工されているため、ハンドルの厚みが一定だと、ハンドル全体が先細りとなります。通常は、これを避けるため、ハンドル側を逆テーパーに削って、ハンドル全体の厚みを一定にするのですが、キムンカムイはそういった加工がされていません。本来、バットに向かって細くなるのは、ナイフを鉈のように振り抜いた時、手からすっぽ抜けて飛んでいく可能性があるためご法度なのですが、G・サカイがそれを知らないはずは無いので、これは完全に手抜きだと言わざるを得ません。



さて、このナイフ。私が愛用しているブラボー1.5と比較しても、この大きさですから、やっぱり使いこなせる自信がありません(苦笑)。

刃厚が5mmですから、バトニングも可能でしょうが、固いケヤキなどをバトニングしたら、ミラーフィニッシュにキズが付くことは確実です。フェザースティックも作れるでしょうが、このナイフを使うぐらいならもっと別の選択肢があります。

やっぱり、イノシシやシカの解体で本領発揮なのでしょうが、私にはそんな機会はありません。あとは、魚を捌くぐらいですが、このナイフの大きさからすると、50cmオーバーの真鯛でも釣らない限り、真価を発揮することは無いでしょう(苦笑)。


せめて、もう一回り小型のキムンカムイ2にしとけばよかったかなァ。



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