アウトドア術を災害に生かすために

キャンプtips コラム

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2019年9月9日から10日にかけて関東を襲った台風15号は、各地に大きな被害を及ぼしました。特に千葉県は全域で被害が発生しており、1週間以上たった今でも多くの地域で停電が続いております。また、停電だけでなく、多くの家屋で屋根が飛ばされるなどの被害が出ており、倒壊にまで至った家屋も少なくありません。現時点では、全容がまだはっきり分かりませんが、激甚災害指定がなされても良さそうな規模の災害だと思います。
今回は、災害をテーマに、アウトドアのテクニックやキャンプギアがどれぐらい役立つかを考えてみました。

災害で困ること

私も人生で家屋に被害が出る災害を2回経験しています。1回目は、阪神淡路大震災で、当時私が住んでいた木造平屋の屋根瓦が半分ぐらい落ちました。2回目は去年の大阪に上陸した台風21号で、この時も実家のトタン屋根を半分飛ばされてしまい、家の中が浸水してしまいました。東京在住の私は、とるものもとりあえず帰阪し、後片付けに追われて大変でした。台風21号については、タンカーが関西空港の連絡橋にぶつかって、橋が破壊された映像を覚えている方も多いと思いますが、14名の方が無くなるという大きな被害をもたらしました。

さて、今回の台風15号でクローズアップされている停電ですが、言うまでもありませんが、現代社会は極端とも言えるぐらいに電気に頼っているため、停電になると何もできなくなります。一番困るのが、テレビでも言われている断水です。水道は、地域差もありますが、基本的には2階までの高さに給水可能なように加圧されていますが、3階以上の建物では圧力が足りないため、ポンプなどで加圧する必要があります。このポンプは電動ですので、停電になると多くのマンションなどの高層建築物で断水します。

次に困るのが、トイレです。今は基本的には水洗トイレですので、地震などで下水管が壊れていない限り使えるのですが、断水すると流すことができずに困ります。

3番目は、衣類と冷暖房です。今回の台風のように屋根が吹き飛ばされてしまうと、衣類も濡れてしまい着られない状態になった方もいらっしゃると思います。私の実家の屋根が吹き飛んだ時は、クローゼットが浸水して多数の衣類がダメになりました。
また、冷暖房については電気がなければ使うことが出来ません。

4番目が食料です。腹が減っては戦はできず。すぐに餓死はしませんが、糖分の欠乏は脳の思考力・判断力を鈍らせるため、危険な環境下では問題になります。テレビでも、冷蔵庫が使えなくなって中の物がだめになった話が報道されていますが、常温で長期備蓄できる食糧が無いと苦労することになります。

サバイバルで重要な3つの3を考える

ここで「究極のサバイバルテクニック(ベア・グリルス著)」という本を紐解いてみます。この本は、元SAS隊員の著者が世界中で経験した体験を踏まえて書かれており、様々なテクニックがジャングル、雪山などの事例ごとに紹介されています。内容的には、いささか極端な事例が多く、日本ではあまり経験しそうにありませんが、ユーモアたっぷりに昆虫の食べ方などが紹介されているので、読み物としても面白いのでおおススメです。そんな本書の中で、サバイバルで重要な3つの3というのが紹介されています。

3時間 極端な暑さ寒さの中では3時間しか生きられない。
3日  水なしでは3日しか生きられない。
3週間 食べ物がなければ3週間しか生きられない。

このことから、体温、水分、食糧の順に人が生きるためには対策が必要となることが分かります。では、今回の本題である、アウトドア術を災害時のサバイバルに生かすことを具体的に考えてみましょう。



体温の維持について

サバイバルの本では、体温維持については寒い時の対策は取り上げられていますが、暑い時の対策はあまり取り上げられていません。基本的には暑さは対処の仕方が限られていることが要因ですが、今回の台風15号ではエアコンが使えなくて熱中症で亡くなった方もいらっしゃいますので、日本では、かなり重要なポイントになります。
キャンプでの熱中症の対策としては、下記の点が挙げられます。

  1. タープなどで直射日光を避ける
  2. 風通しの良い場所や林間などにサイトを建てる
  3. サイト周りに打ち水をする
  4. 濡れタオルや冷却剤などを活用する

テントやタープについては後述しますので、ここでは4番目の方法についてご紹介します。まず、体温を下げるに当たっては、首筋、わきの下、内股などの太い血管が通っている場所を冷やすのが良いです。また、手には毛細血管が多く通っているため、手を水につけるなどして冷やすのも効果的です。冷やす方法ですが、水の気化熱を使うのが効果的です。水分は気化する時に熱を奪うので、タオルを濡らしてぐるぐる回すだけでかなり温度を下げることができます。あまりにも暑い時は、着ているTシャツなどをあえて濡らすと、乾く時に熱が奪われて体温を下げることが出来ます。ただ、この方法は、特に湿度が低くて乾きやすい場合は、急激に体温を奪われ体調を崩すことがあるため、注意が必要です。濡らし方も、Tシャツ全体を濡らすのではなく、首回りや背中など一部を濡らすのがベターです。あとは、ヒヤロンなどの冷却剤を使用する方法も効果的ですが、あまり多く備蓄できないと思いますので、限定的な使い方になると思います。
暑い時は、とにかく通気性の良い日陰でじっとしているのが一番です。気温が35度以上の高温の場合でも、風がある方が汗などが乾燥し、気化熱で体温が下がります。






さて、逆に寒い場合の対処法ですが、これはまず衣服をしっかり着込むことです。冬場に台風が来ることはまず無いので、地震対策をメインとして考えると、自宅が倒壊した場合に備えて、1着はフル装備を車などに積んでおくとベターです。
次に重要なのが暖房ですが、停電などを考慮すると、エアコンや石油ファンヒーターが使えなくなった場合を想定する必要があります。私は、メインランタンとして加圧式灯油ランタンを使っており、ストーブも武井バーナーのパープルストーブを使用しています。加圧式灯油ランタンは、かなり熱くなるので、光源としてだけでなく暖房にもなります。パープルストーブは、物凄い熱量があるのでとても暖かいのですが、取り扱いが面倒なのと、火災の危険性を考慮すると自宅内での使用は憚られます。そのため、昔ながらの石油ストーブがベターです。特に小型の物は、カロリーは低いですが、冬キャンプには必須アイテムとなりますので、1台常備しておいて損はありません。私は、石油ストーブのトヨトミレインボーを所持しており、キャンプスタイルに合わせて使い分けしています。
灯油ですが、私は自宅に常時10リットルほどの灯油を常備しています。災害用を考慮すると20リットルは欲しい所ですが、置き場に困るので今は10リットルとしています。これでも、トヨトミレインボーであれば、最大出力で40時間分はありますので、2~3日は使えます。あとは、薪は大量にストックしているので、昼間は庭で薪ストーブを使って暖を取るつもりです(笑)。



水の確保

まず、何といっても必要なのが飲料水です。だいたい大人で、1日2リットルの水分が必要とされています(食物由来の水分を含む)。そのため、2リットルのペットボトルであれば、1日に1人につき1本必要となるため、6本ケースで保管する場合は家族の人数で割れば何日分に相当するかが判ります。私は3人家族ですので、1ケースで2日分となります。だいたい激甚災害の場合、支援物資や自衛隊の給水活動などが始まるまで、最大で5日程度と想定されるため、最初の5日間をしのげれば何とかなると考えらえます。そのため、私は4ケース(6日分)を常に備蓄しています。備蓄している水は、普通にスーパーで売られている天然水です。災害用の物は消費期限が長いですが、コストがかかるので、普通の天然水を時期をずらして購入し、消費期限が近付いたものからキャンプに持って行って使うことでローテーションしています。
飲料水以外に必要なのが、手を洗ったり、水洗トイレを流したりするための生活用水です。これが意外と盲点で、震災の時などに苦労します。特にトイレは、下水管が壊れていなければ使用できるので、マンションなどで停電で断水している場合でも、生活用水さえあれば使うことが出来ます。私の心掛けているのは、常に風呂の水をはっておくことです。通常のユニットバスであれば、満タンで300リットル程度の容量があるため、8分目ぐらいまで貯めておけば、240リットルはあります。最近のトイレであれば、だいたい1回5リットル程度で流すことが出来るので、240リットルあれば48回流せる計算になります。
また、更にお風呂の水は、ろ過すれば飲料水としても使えますので、緊急事態に備えてアウトドア向けの浄水器を常備しておくという手もあります。ろ過機が無い場合は、バケツの上にザルを置いてその上にバスタオル等をかけ、それでろ過することでも簡易的にはろ過できます。この場合は、雑菌はろ過では取り除けないため、煮沸するか、塩素系漂白剤で消毒する必要があります。塩素系漂白剤を使う場合は、石鹸などの界面活性剤や香料の入っていない漂白剤を使います。希釈方法としては、5~6%の次亜塩素酸ナトリウムが入った漂白剤であれば、水2リットルに対し4~5滴となります。あとは、ペットボトルのキャップを閉めて上下にひっくり返すようにして10回以上混ぜて、30分ほど放置すれば飲料水として使えます(※この方法は、有機物と次亜塩素酸ナトリウムが反応してトリハロメタンが発生する可能性があるため、最後の手段としてください)。



さて、最初の5日間を無事に乗り切れば、その後は給水車などによる給水を受けることになります。この時には、ペットボトルでは効率が悪いので、飲料水用のポリタンクがあるとベターです。私はキャンプでは毎回、12リットルのウォータータンクを使用しています。また、16リットルの折り畳みウォータータンクと、24リットルの大型タンクも持っているので、いざという時にはこれらを使用するつもりです。キャンプでは、オシャレなウォータージャグを使っている方も多いと思いますので、こういったキャンプギアは災害時の即戦力になります。



食糧を備蓄する

まず、長期停電の場合は、冷蔵庫は諦めましょう。キャンプ用の大きなクーラーボックスを使ったとしても容量には限りがありますし、冷凍食品を詰め込んだとしても、庫内温度を保つのは3日が限度です。ですので、食糧については、常温でどれだけ備蓄するかがキーポイントとなります。
最初の5日間プラスアルファを考えると、6日間×3食となり、それを家族分用意するとなると結構大変です。3人家族の私でも、6日間×3食×3人で合計54食とかなりの量になります。3食レトルトカレーにしてもこの物量はちょっと現実的ではありません。また、災害用の食品として、フリーズドライ食品や乾パンなどがありますが、こういった災害用品は割高ですし味もあまり良くないため、消費期限が来た時に食べるのがつらいです。アルファ米は、お湯で戻せるので、海外旅行などでは重宝しますが、それでも大量に備蓄するにはコストがかかります。
そこで、私は、日常生活を通じて消費しても無理の無い範囲で備蓄することを心掛けています。具体的には、カレーとご飯のレトルト食品を10食程度、パスタソースなどを6食程度、即席めんを10~20食程度備蓄し、消費期限を気にしながらキャンプや普段の生活の中で適宜消費しています。

納戸に本棚を設置し、缶詰などを備蓄している。
写真には写っていないが、下2段には天然水4箱を常備。

缶詰は、消費期限が長く、キャンプでも活躍するので、多めに備蓄しています。私は、その中でもスパム、コーンビーフ、サンマのかば焼きの3種類を多めに備蓄しています。スパムは、野菜炒めやホットサンドなどレパートリーの幅が広く、色々と潰しが効くので便利です。コーンビーフも色々と使えますが、おススメはポテトサラダとカレーです。特にカレーは、4人前でコーンビーフを2缶ほど入れると、味にコクが出て美味しくなります。サンマのかば焼きは、ズバリご飯に会うので、ご飯に乗せてサンマのかば焼き丼にして普段から美味しく頂いています。缶詰といえど、大量に備蓄するといつかは消費期限が来ますので、その時も無理なく食べられるものを心掛けています。
あとおススメなのが、みかんやパインアップルなどフルーツの缶詰です。缶詰は長期保存のためどれも似たような味付けになってしまいますが、フルーツの缶詰があれば味に変化が出るので、食欲がわきますし、ビタミンCも摂取できます。
その他、普通に白米やパスタがあれば、あとは水さえあればバーナーで炊けますので、それらも含めると、トータルで5日間ぐらいは食べていける計算になります(最初の1日は冷蔵庫内の食材を食べつくすことに専念すれば、さらにプラス1~2日いけます(笑))。この場合に最も重要なことが、「調理できる」という点で、バーナーとクッカーは必須アイテムとなります。地震では都市ガスが最も復旧に時間がかかりますし、停電となればIHは使えませんので、バーナーとガスボンベは重要なアイテムとなります。
私は、OD缶のバーナーとCD缶(カセットボンベ)のバーナーの両方を持っていますが、OD缶で3缶ほど、CD缶は20缶ほど備蓄しています。特にCD缶は、冬キャンプで使う簡易ヒーターの燃料となるため、冬シーズンには大量に消費するので多めにストックしています。

テントは災害時に大活躍する

自宅が倒壊するなどの大きな被害を受けた場合、自宅に住めなくなりますので、避難所に移動することになると思います。しかし、大規模災害の場合は、避難所は多くの人であふれ、プライバシーも保てないなど多くの理由でQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が低下します。2016年の熊本地震の際、多くの方が車中泊を選択したのは、余震による倒壊の恐れと、QOLの低い避難所生活を嫌ったためでした。
そんな時に、テント・タープを活用すれば、かなり改善することができます。避難所にテントを建てることは無理かもしれませんが、空き地や公園などを活用すればサイトを作ることはできると思います(トイレ問題が残りますが)。自宅に庭があれば、そこでテントを張ることで、倒壊の恐怖から逃れることが出来ます。
日本人は、避難した時に不自由を我慢する傾向が強いですが、海外(特にヨーロッパ)では逆に災害時にいかに快適に過ごすことが出来るかに焦点が当てられています。災害時に、その不幸を共有し、不自由な生活に耐えることを美徳とするよりも、それが元でストレスが溜まり、人間関係が険悪になり、病気になったりする方が、2次災害として被害を拡大してしまいますので、良くない考え方だと言えます。熊本地震の時に、アルピニストの野口健さんは、100張りのテントを用意し、テント村を地元と協力して作りました。私は、これは大変良いことだと思っています。批判は色々とあったそうですが、テント村で楽しく避難生活を送ることが出来たためQOLが改善し、緊急搬送される方はゼロだったとのことです。こういった活動は、周囲の人の気持ちの問題もあるため、難しい側面もありますが、日本は災害大国ですので、災害との付き合い方を、一人ひとりの市民が考える必要があると思います。



まとめ

以上、長文となりましたが、まとめると以下の通りです。

  • 体温維持は最重要。濡れタオルを駆使して暑さ対策
  • 寒さ対策には、昔ながらの灯油ストーブが効果的
  • 水は2Lペットボトルで5日×家族分を備蓄しよう
  • お風呂は常に水を張っておき、いざという時の生活用水に
  • 給水車が来ればウォータージャグが大活躍
  • 食糧は、日常生活を通じて消費しても無理の無い範囲で備蓄することを心掛ける
  • バーナーとクッカーは、災害時にも役立つ必須アイテム
  • テントとタープで快適な被災生活を心がけよう

それにしても、改めて考えるまでもなく、キャンプのノウハウとギアは、いざという時には強いです。特に、雪中キャンプで電源が使えないサイトだと、防寒に頭を悩ませるのですが、石油ストーブをはじめ、電源が使えないことを前提としたキャンプスタイルは、災害時に役に立ちます。
皆さんも是非、キャンプで遊びながら災害が起こったらどうするかを考えてみてください。

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沼にハマると抜け出せなくなる性格の40代おっさん。関西出身で現在は東京都在住。嫁と娘の3人家族で年間30泊ほどキャンプに行って飲んだくれている。

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