トップス(TOPS)のトラッカーは真のブッシュクラフトナイフ!?(前編)

ナイフ沼

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以前、「最強のバトニングナイフを考える」という記事を書きましたが、その時のトップ写真の右上にカメオ出演させていたナイフがあります。

ナイフ トップス(TOPS) トラッカーでバトニング

トップス(TOPS Knives)のトラッカー(Tom Brown J TRACKER)です。

ずんぐりとしたブレードといい、スパインのセレーションといい、まるでモンハンの剥ぎ取りナイフみたいなデザインに心を奪われた私は、勢いこのナイフを買ってしまいました(笑)。

ナイフ トップス(TOPS) トムブラウン トラッカーとスカウト
上がトラッカー、下がスカウト

こんな、見るからに色物の実用性に欠けるナイフを、今更欲しがる年齢でもないのですが、まあ欲しくなってしまったのですから仕方がありません。


まずは、TOPS Knivesがどんな会社か紹介したいと思います。

TOPS Knivesについて

TOPS Knivesは、米国アイダホ州にある1998年に、Michael J. Fuller(マイケル・フラー)によって設立された会社です。フラーは、米国陸軍のグリンベレー出身で、ベトナム戦争に従軍した経験を持ちます。彼は、ベトナム戦争時代の古くからの友人たちと、戦争中に経験したナイフに対する失望-強度と耐久性の問題を解決するために、新たなナイフを製作することを決意します。
TOPSのナイフは、軍事、警察、アウトドア専門家、マーシャルアーツなどの経験者の意見を反映してデザインされています。TOPSのWEBサイトによれば、NAVY SEALSやレンジャー、SWAT、ネイティブアメリカンの武器エキスパートなど、ハードコアなナイフの使い方を熟知したユーザーの協力を得ているとのことです。
確かに、TOPSの商品ラインアップを見てみると、切り出しのような小さなナイフから、軍用タクティカルナイフ、マチェットまで様々なナイフ・刃物があります。鉈みたいな物もありますし、どうやって使うのか分からない形の物まで、かなりのバリエーションがあります。そんな中でも、Tom Brown J TRACKERは、ひと際変わったナイフと言えます。実は、このナイフの生い立ちを追っていくと、面白い経緯を辿っていることが分かりました。

トム・ブラウン・Jrとトラッカー

Tom Brown J TRACKERは、トム・ブラウン・Jrが考案したナイフと言うことになっています(なぜ「なっていると言うことに」なっているかは後述します)。
トム・ブラウン・Jrは、7歳の時にアパッチ族の古老ストーキング・ウルフ(グランドファーザー)と出会い、10年間サバイバルやトラッキング(探索)の技術を学びます。その後、さらに10年に渡ってアメリカ国内を放浪し、原野の中で生き延びる技術を磨きます。
そうしてネイティブアメリカンの技術を身に付けた彼は、27歳の時、行方不明者のトラッキング(追跡)を依頼され、見事に探し出したことで一躍有名になりました。現在、彼はトラッカースクールを開催しており、ストーキング・ウルフから教わった技術を多くの人々に教えています。
ストーキング・ウルフについて少し補足しておくと、彼はアパッチ族のネイティブアメリカンで、1870年代の生まれだそうです。ストーキング・ウルフは、自分の村でアパッチ族の伝統的な技術を学んだ後、精霊の啓示により63年間ものあいだ、南北アメリカを放浪することになります。彼は、全て徒歩で旅をして、あらゆる部族や自然の中で生活を営む人々から、多くのことを学びます。ストーキング・ウルフは、仕事をしたことも、車を運転したことも、税金を払ったことも、現代社会に参加したこともなく、ひたすら自然の中で生きてきました。そうすることで、トラッキング(追跡する)、ストーキング(忍び寄る)、アウェアネス(気付く)というスキルを高めていきます。その結果、警戒心の強いことで有名な狼(ウルフ)にも、忍び寄ることが出来るようにまでなりました。これが、ストーキング・ウルフと呼ばれる所以です。
さて、そんなグランドファーザーに教えを受けたトム・ブラウン・Jrは、行方不明者の発見を契機に、トラッカーとして、誘拐、失踪者、逃亡者などの事件解決に協力するようになります。その経験を基に、彼は1978年にThe Trackerという本を発売するに至り、その本の中のエピソードから「ハンテッド」という映画が作られます。そして、この映画の中で、今回の主題であるトラッカー(ナイフ)が出てくるのです。

数奇な運命を辿るトラッカー

そもそもトラッカー(以降ナイフのこと)の誕生は、トム・ブラウン・Jr.が、あるジャーナリストと対談したことに端を発します。ジャーナリストに、サバイバルに最適なナイフは何かと聞かれた時、トムはしばらく考えた後、「完璧なサバイバルナイフは存在しない」と答えました。「なぜ?」と聞かれたトムは、「私がデザインしていないからだ」と答えました。
ジャーナリストは記事の中で「トムがデザインしたナイフが、どんなナイフになるのかぜひ見てみたい」と述べました。その記事を読んだトムは、理想のサバイバルナイフを制作すること決意します。
それから七年の歳月と幾つもの試作品を経て、トラッカーの基本的なデザインが完成しました。トムは、トラッカーの製造をナイフスミスであるエド・ロンビに依頼しますが、諸般の事情により断念します。その後、デイヴ・ベックに依頼し、幾つかの改良を加えた後、トラッカーが完成します。このトラッカーは10年ほど製造されますが、デイヴ・ベックもトラッカーの製造を終了します。
そんなトラッカーに脚光を浴びせることになったのが、映画「ハンテッド」です。劇中では、ベニチオ・デル・トロ扮する敵役がトラッカーを使い、その独特なデザインから、多くの映画ファンやナイフマニアから注目されることになります。ランボーで、スタローンが使っていたナイフが有名になったのと同じ理屈です。
トラッカーが有名になったことで、このナイフを製造・販売できるメーカーとしてTOPSに白羽の矢が立ち、今ではTOPSを代表するナイフにまでなりました。

オリジナルのトラッカーはどっち?

さて、冒頭で「トム・ブラウン・Jrが考案したナイフと言うことになっています」と書いたのは、デイヴ・ベックが改良を加えたトラッカーは、登録商標の「TRACKER」をブレードに刻印して少数ながら販売されていたからです。デビッド・R・ベック・ナイフスミスLLCのWEBサイトには、「アイデアの対立とマーケティングの困難により最初のベンチャーを断念した」とあります。恐らく、何かの問題が発生し、トム・ブラウン・Jrと上手くいかなかったのでしょう。ところが、更に話をややこしくしたのが、件の「ハンテッド」です。この映画で使われたナイフは、デイヴ・ベックがかつて制作した中の1本で、モデルCと呼ばれるTRACKERだったのです。
映画により有名になったのは「TRACKER モデルC」ですが、多くのバイヤーが求めた結果、前述の通りTOPSが製造・販売することになり、その結果「Tom Brown J TRACKER」がトラッカーになった訳です。デイヴ・ベックは、トラッカーの商標を取り戻そうと試みますが、費用がかかりすぎるため断念します。その後、デイヴ・ベックのトラッカーはWSK(Wilderness Survival Knife)という名称で販売されることになり、今でも彼の手によって細々と制作されています。

ナイフ デイヴ・ベックのオリジナルのトラッカー
デイヴ・ベックの手によるオリジナルのトラッカー

私の想像ですが、最終的にトラッカーが「Tom Brown J TRACKER」になったのは、映画によって有名になったトラッカーの需要を、ナイフスミスであるデイヴ・ベックでは満たすことができず、大量生産が可能なTOPSにTRACKERの登録商標が移ったのだと思います。トム・ブラウン・Jrは、映画ハンテッドに監修としても参加しているので、プロデューサーやナイフバイヤーなどを通じて、TOPSに製造許可を与えるように示唆されたのでしょう。

このように、紆余曲折を経て現在に至ったTom Brown J TRACKER。

前置きが長すぎたので、後編に続きます(笑)

後編はこちら

参考文献
TOPS Knives
https://www.topsknives.com/

Tom Brown J TRACKERマニュアル
http://trackertrail.com/trackerknife/TrackerKnifeManual.pdf

トラッカー マニュアル 対訳 その1
https://blog.goo.ne.jp/kennyseed/e/878e2e9164ef91835808abf00e8825bb

Tom Brown Jr.'s Tracker School
https://www.trackerschool.com/default.aspx

デビッド・R・ベック、ナイフスミスLLC
http://www.drbeckknives.com/WSK-KNIVES.html

オリジナルBECK "WSK"(WILDERNESS SURVIVAL KNIVES)
https://www.arizonacustomknives.com/knives-by-maker/beck-dave.html

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沼にハマると抜け出せなくなる性格の40代おっさん。関西出身で現在は東京都在住。嫁と娘の3人家族で年間30泊ほどキャンプに行って飲んだくれている。

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