2019年度は東北・北陸地方を中心にクマ被害が急増中

2019年11月1日

キャンプtips コラム

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2019年10月28日午前3時半すぎに新潟県糸魚川市で、牛乳配達中の30代の男性がクマに頭や顔などをひっかかれ負傷する事件が発生しました。その後、31日午前7時半すぎ、魚沼市で90代女性が自宅裏でクマに襲われて負傷しています。これで、今年度に入って新潟県内で起きたクマによる人身事故は16人目ということです。過去の人身事故件数を調べると、2018年2018年度が6人、2017年度が5人、2016年度が4人と、これに比較すると今年がいかに被害者が多いかが分かります。
また、秋田県秋田市では、10月31日午後8時ごろ、男性が自宅敷地内でクマ襲われ頭蓋骨を骨折し、両目を失明するほどの重傷を負うという痛ましい事故が発生しています。

今年は、例年に比べて明らかにクマ(ツキノワグマ)が多く出没しており、多数の方が負傷されています。まずは、東北・北陸・関東のこれまで(2019/10/31現在)に報告されているクマによる人身事故件数を見てみると、以下の通りとなります。


都道府県人身事故(人)
青森県5
岩手県16
秋田県12
宮城県5
山形県4
福島県5
茨城県確認できず
栃木県2
群馬県2
埼玉県0
千葉県確認できず
神奈川県0
東京都1?
長野県1件以上
山梨県2
新潟県16

やはり、東北地方と新潟県が多いです。特に岩手県、秋田県、新潟県が多いですが、目撃情報は、各県とも例年以上の件数となっており、多数のクマが人里近くに現れていることが分かります。東北各県は、クマ出没警報を出しており、注意を呼び掛けています。特に、2016年に4名の死亡者を出した秋田県は、一部に立ち入り禁止措置をとっています。

ここで、クマの出没情報を見てみます。


図は、宮城県が発表しているクマの目撃情報ですが、仙台市内でも目撃されていることが分かります。


この図は、仙台市青葉区周辺を拡大した地図ですが、水の森公園を中心に多数目撃されています。この近辺は、宮城学院女子大学をはじめ、中学校、小学校、保育園などが点在しており、完全な市街地です。更に、北には高速道路もあり、一見するととてもクマが現れそうには見えない地域なのですが、今年はこんな市街地にまで侵入してているというのはかなり異常なことと言えると思います。


ちなみに、去年(青)、一昨年(赤)と比べると一目瞭然で、水の森公園では目撃されていません。
このことからも、今年は多くのクマが、市街地を含め人里近くに現れていることが分かります。目撃情報があるということは、クマとの接触は時間の問題であり、人身事故のリスクが高まっていると言えます。

話を、人身事故の件数に戻すと、茨城県、千葉県については、元々ツキノワグマの生息地ではないこともあり、県庁WEBサイト上にクマに関するページがありませんでした。
東京都については、都庁からは発表が無く、クマに関する注意喚起ページなどもありませんでしたが、今年の8月に奥多摩で男性がクマに襲われて怪我をしているので、最低1件は発生しています。
埼玉県については、人身事故は発生していませんが、今年7月28日夜から翌朝にかけて、秩父市の一人暮らしの女性宅にクマが侵入し、冷蔵庫の中身を冷凍食品も含めて食べられるという事件が発生しています。確たる目撃情報はありませんが、状況から見てクマの仕業とされています。
神奈川県は、人身事故はありませんが、多数の目撃情報がありますので、注意が必要です。
長野県については、県としてはクマに注意を呼び掛けるページは見つかりましたが、具体的な目撃情報のまとめなどはありませんでした。そのため、統計的な人身事故件数を確認できませんでしたが、白馬村北城で男性がクマに襲われてけがをされているニュースがありましたので、長野県内でも人身事故は発生しています。

さて、これだけ多くの事故が発生している直接の原因は、クマが夏から秋にかけて主食とするブナやコナラなどの堅果類が、今年は不作のためです。林野庁で毎年度行っているブナの結実調査によると、今年度は青森で凶作、それ以外の県(岩手、宮城、秋田、山形)は大凶作となっていますので、食糧を求めて、市街地近辺にまで出没していることは想像に難くないです。

新潟県についても、県民生活・環境部環境企画課の発表によると、ブナは凶作~不作、ミズナラは不作~並作とのことで、クマが食料を求めて市街地まで出てきていることが分かります。

ちなみに、西日本に関しては、概ねブナは凶作ですがミズナラ・コナラは並作とのことでそれほど影響はなさそうです。ただ、兵庫県は、ブナ大凶作、ミズナラ凶作、コナラ並作下のため、山奥のキャンプ場などでは注意が必要と思われます。
そもそも、関西以西はツキノワグマの生息数が少なく、九州においては絶滅が確認されています。しかし、京都府北部から兵庫県北部にかけては多数の生息が確認されており、特に兵庫県下では、900頭以上生息していると推測されていますので要注意です。

さて、堅果類の不作もさることながら、私はこれに加えて、今年の度重なる台風上陸も影響を与えていると考えています。クマは、11月下旬から12月にかけて、冬眠(冬ごもり)に入るため、特に9~10月は堅果類を大量に食べて脂肪を蓄えます。しかし、今年は台風が多かったので、木の実が生育する前に強風で落ちたり、土砂で流されたりして、クマにとっては十分な食料が確保できない状態になっていると思われます。しかも、台風の被害地域は、堅果類の凶作地域とも一致します。そのため、ただでさえ凶作で少ない食糧が、台風で更に被害に遭ったとすると、間違いなくクマは食糧不足に陥っているでしょう。その結果、食糧を求めて人里近くまで出てきており、人間と鉢合わせしたクマが驚いて危害を加えるに及んでいると思われます。
そう考えると、11月はますます危険な状態になると言えます。冬眠のための食糧が十分でない場合、クマは凶暴化しやすく、危険を冒しても食糧を求めるので、凶暴化したクマが人里に出没する可能性は高くなります。
もちろん、キャンプ場もクマのターゲットになります。一般的なキャンプ場は、木のフェンスなどで囲われている程度で、電気柵などは殆ど無いので、クマが容易に侵入できます。キャンプ場では、人間が大量の食糧を持ち込んでいますから、クマに取っては格好の餌場となるでしょう。勿論、クマは基本的には人間を恐れていますが、腹を空かしたクマは凶暴で、それによって多くの事件が起こっていることからも、食糧が足りない今年の秋のクマも同様と考えるべきです。

ここで、過去のツキノワグマ事件を少し紐解いてみます。

十和利山熊襲撃事件

この事件は、2016年5月から6月にかけて、秋田県鹿角市十和田大湯(とわだおおゆ)の十和利山(とわりやま)山麓で発生した事件で、複数のツキノワグマがタケノコ掘りに来ていた人を襲撃し、4人が死亡、3人が重傷を負いました。この事件では、クマによる食害が起こっており、ツキノワグマとしては初めてのケースだったので、関係者を非常に驚かせた事件でもありました。これまで、ツキノワグマは人を食べないと言われていたのですが、この事件がそれを見事に覆したのです。

このケースに見られるように、腹を空かしたツキノワグマは非常に凶暴で、人を殺すこともあるということが分かります。
また、実際に生還した方の話では、クマがいることは分かっていたが、まさか自分が出くわすとは思っていなかったということです。実際に、タケノコ掘りに山に入った時に、獣くさいと思ったそうで、その場で止めていればクマに遭遇することは無かったわけですから、冷静に注意して危ないと感じたら引き返す(キャンプを中止する)勇気が必要と言えるでしょう。

乗鞍岳クマ襲撃事件

これは、2009年9月19日に乗鞍岳で発生した事件で、畳平バスターミナルに集まっていた多数の観光客に対して、ツキノワグマが襲い掛かり、9人が重軽傷を負いました。バス停付近にいた観光客を次々と襲い、その後はバスターミナル内に侵入したため、逃げ込んでいた観光客はパニック状態に陥ちいりました。最終的には、建物内の土産物屋に閉じ込めることに成功し、猟友会により射殺されました。
その後の調査では、ツキノワグマは以前から畳平近辺には頻繁に出没しており、高山植物などを食べていたそうです。そんなツキノワグマが人間と遭遇して驚き、逃げる方向を間違ってバスターミナル方向に逃げてしまい、(クマが)パニック状態になってしまったのが原因と考えられています。

新潟県糸魚川市の事件や、秋田県秋田市の事件がこれに近いと思われますが、出会いがしらに人間と遭遇して、思わずパニックになったクマが人間を襲ったのだと思います。

東京都にもクマがいる

クマはいないと思われている東京都ですが、2014年9月28日に奥多摩の川苔山で男性がツキノワグマに襲われて重傷を負っています。現場は、山頂から50メートルほど下った登山道で、藪の中からいきなりクマが現れてにらみ合いになったそうです。追い払おうと、持っていたストックで叩きましたが効果なく、クマともみあいになり、眉間から鼻にかけて爪で割かれ、鼻骨粉砕骨折、左鎖骨骨折という重傷を負っています。当時は、山頂には20人ほどいたため、登山客に助けられて一命を取り留めることができました。
今年も川苔山では、8月18日に60代の男性がクマに襲われ左手に大けがを負っていますので、2014年のクマ被害がたまたまというわけでは無いのは明白です。奥多摩は、登山コースが多く、キャンプ場も多数ありますが、クマには充分に注意が必要ですし、そもそも東京都の監視や注意喚起が足りないと感じます。
まさか東京にと思われるかもしれませんが、奥多摩だけでなく、羽村市などで多摩川を渡るクマが目撃されたこともありますので、東京にもクマがいることを認識しておく必要があるでしょう。

色々とクマによる事件について書きましたが、クマは人間の生活圏に意外と近い所に生息しているので、上手く付き合っていくことを私たち一人ひとりが考えなければならいと思います。
無暗に恐れることはありませんが、正しい知識を身に付け、クマがいるということを前提とした行動を心掛けましょう。

これからの11月は、1年で一番キャンプがしやすい季節ですので、クマに注意しながら楽しんでいただければと思います。

最期に、各自治体のクマ情報のページへのリンクを掲載しておきますので、お出かけの際は予めご確認ください。

青森県

岩手県

秋田県

宮城県

山形県

福島県

栃木県

群馬県

埼玉県

神奈川県

東京都(東京都公園協会 奥多摩ビジターセンター)

山梨県

新潟県



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