第2次キャンプブームが定着してきたと思う理由

2021年2月18日

コラム

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近年、キャンプブームと言われて久しいですが、更に変化が起きていると感じるようになりました。キャンプ中に、周りの人々を何気に見ていると、「これは、どうも一過性の流行ではなく定着してきたな」と思われることが散見されるようになってきたからです。

第2次キャンプブームが定着してきたと思う理由

ネット上のニュースなどを見ていると、キャンプ場がリニューアルされたり、クラウドファンディングを利用して遊休農地をキャンプ場に変えるなど、新たなキャンプ場が全国で整備さています。特に、去年は「ソロキャンプ」が流行語大賞に選ばれるなど、大きなムーブメントになっていますので、キャンプ場ニーズも増加傾向にあります。
これに拍車をかけたのが、去年からの「新型コロナ」です。「3密」を避けることができるレジャーとしてキャンプが注目され、多くの方がキャンプ場に来るようになりました。勿論、にわかキャンパーも増えましたが、一方で本格的なキャンパーも増えたと感じます。そう感じる一番の理由は、真冬の極寒の時期でもキャンプ場がいっぱいだからです。

多くのキャンパー憧れの地でもある、「ふもとっぱら」ですが、年末からずっと週末は予約で埋まっており、2月に入ってもこの状況は続いています。ふもとっぱらのWEBサイトではライブカメラで混雑状況が判るのですが、見ていると真冬とは思えないぐらいテントが並んでいます。

2021年1月10日のふもとっぱらライブカメラ。
出典:ふもとっぱら


2018年同時期のふもとっぱら。2021年現在と比べて随分空いている。

3年前は、夏場はともかく冬場は結構空いていましたし、そもそも予約も必要無いぐらいでしたが、今はそうはいきません(笑)。
私が先日行った、西湖の「キャンプビレッジノーム」も、湖畔のフリーサイトは満杯で、厳冬のキャンプ場とは思えないほどの賑わいでした。


冬場は西湖で最もポピュラーな「自由キャンプ場」が休業しており、西湖から本栖湖周辺のキャンプ場も、2021年1月からの新型コロナによる緊急事態宣言発出に合わせて、一部休業しているという悪条件が重なっているとは言え、このキャンパーの多さは驚きです。

1月の河口湖周辺は、最低気温がマイナス5℃程度、時にはマイナス10℃以下になることもあるため、服装からテントまで、それなりの装備が必要となります。普通の人は、真冬にキャンプをしようという発想自体がありませんが、そんな極寒の中でもキャンプを楽しもうという人が増えたというのは、このブームが一過性でなく、定着してきた証左だと思います。
上記のキャンプビレッジノームの写真を観たら、分かる人には分かると思いますが、ちょっと見渡しただけでも、ゼインアーツにヨカ、ムラコなど、所謂ガレージブランドのテントが並んでいます。この手のギアは、価格も入手のハードルも高めですから、それなりに拘りがないと買わないですし、そういったハードルを越えて使っている訳ですから、キャンプに対する本気度が伺えます。

第1次キャンプブーム

ここで少し、過去のキャンプブームを振り返ってみたいと思います。所謂、第1次キャンプブームは、1990年代に起こり、ピーク時の1996年にはキャンプ人口は約1,580万人に達しました。様々な理由が挙げられていますが、私は、当時の自家用車の普及、特にRV(Recreational Vehicle)と言われる車種が流行したのが大きな要因だと考えています。ランクル(トヨタ)、パジェロ(三菱)を頂点に、比較的低価格なRVR(三菱)、RVのアイコンとも言えるバカでかいバンパーガードが印象的な(笑)シビックシャトルビークル(ホンダ)や、スプリンターカリブ(トヨタ)など、多数のモデルがRVブームをけん引していました。私の高校の先輩も、大学生時代にRVRに乗っていて、後部座席に座ると「狭!」っと思ったのを覚えています(笑)。
RVが流行したのには理由がありました。この当時は、「私をスキーに連れてって」という映画が流行ったように、スキーブームが来ていました。スキー人口は、1989年に1,000万人を突破し、ピークの1998年には1,800万人に達しました。当時は、自家用車でスキー場へデート感覚で行くのが流行っており、それがスキー人口を押し上げたのです。因みに、ウィンタースポーツは愚か、スポーツ全般に興味の無い私には無縁の世界でした(苦笑)。スキー場へ行くには、雪の積もった悪路を走る場合もあるので、RVのイメージがハマり、スキー=RVということになった訳です。
さて、スキーに彼女を連れていくためにRVを手に入れた若者達ですが、スキーは冬しか行けません。当然、夏場はRVを持て余すことになる訳ですが、ここで出てくる選択肢がキャンプです。夏はキャンプ、冬はスキーとなれば、苦労して貯めたバイト代をはたいて買ったRVが1年を通してフル活用できますから、キャンプをしない手はありません。こうして、スキー=RV=キャンプが1本の線で繋がり、若者達がウハウハな青春を過ごしたことは、スキー人口とキャンプ人口が重なることからも、想像に難くありません。勿論、私はその中には含まれていませんが(+_+)。
では、第1次キャンプブームは何故衰退したのでしょうか。一つにはスキーと共に、RVブームが消沈していったことが挙げられますが、それよりもキャンプのスタイルが文化として確立していなかったことが大きな理由だと思います。要するに、キャンプは所詮BBQの延長に過ぎず、アウトドアで「飲んで・食べて・騒いで終了!」というノリだったのだと思います。1990年代は、既にコールマンやスノーピーク、ロゴス、キャプテンスタッグ、ユニフレームなど、今でもメジャーなアウトドアメーカーが存在していましたが、キャンプギアに現在のような多様性は無く、どちらかと言えば画一的な商品ラインアップでした。それに拍車をかけたのが、所謂マニュアル人間です。当時は、インターネット黎明期ですから、情報源は雑誌に限られていました(※1)。ですから、雑誌から得た知識で、そのままマニュアル通りに実行するのが、ある意味当たり前の時代でもありました。
余談ですが、80年代から90年代前半というのは、所謂バブル時代で、ブランド志向・横並び志向が強い時代でした。「〇〇知らないなんて遅れてるぅ~」なんて言われて、猫も杓子も右へ倣えとばかりに、流行を追いかけることが目的となっていた時代です。当然、流行に後れないためには、最新ブームのマニュアルが重宝され、多くの情報誌によってマニュアル化された内容を忠実に履行することが重視され、結果として流行を追う人ほどマニュアル人間化していくという笑えない時代でもありました。マニュアル化された遊びでは、飽きるのは時間の問題ですから、一過性のブームとして過ぎ去ってしまったのです(※2)。

※1 勿論BE-PALなどは、カヌーや釣りなど多様なアウトドアライフを提案していましたが、キャンプを文化として定着させるまでには至りませんでした。

※2 これに危機感を覚えたスノーピークは、「人生に、野遊びを。」をキーワードに、アウトドアを文化として根付かせるため、提案型の企業体質に変わっていきます。


第2次キャンプブーム

さて、最近第2次キャンプブームと言われるのは、どういった状況でしょうか。オートキャンプ白書2020年によると、キャンプ人口は2013年頃から漸増しています。


2019年度のキャンプ人口で約860万人ですから、ピークの約1,580万人の半分強に過ぎませんが、2013年からの7年で約1.2倍ほどの伸びを示しています。正直7年で1.2倍というのはブームと呼ぶには少し大げさな気もしますが、体感的には年々利用者の増加を感じるので、堅調に推移していると言えるでしょう。

面白いデータをもう一つご紹介します。
2020年10月26日の読売新聞オンラインの記事です。

大阪税関によると、昨年の全国のテント輸入量は、前年の約1.3倍の1万266トンと24年ぶりに過去最高を更新し、輸入額も1.4倍近い118億円と23年ぶりに過去最高となった。今年1~8月の輸入量は前年同期比4.4%増の8528トン、輸入額は2.7%増の93億円と、昨年を上回る水準となっている。

この記事で注目すべき点が、2019年のテント輸入量が24年ぶりに過去最高を更新したということです。24年前と言うと、1995年と丁度第1次キャンプブームのピーク時期にあたります。輸入額も23年ぶりに過去最高となっているので、少なくともテントの需要は第1次キャンプブームの頃と同等レベルに達していることになります。
現在、日本で流通している殆どのテントは中国やベトナムなど海外で製造されていますので、スノーピークやオガワのテントであっても輸入製品ということになります。ですから、輸入量や輸入額というのは、ほぼ国内流通量とイコールになります。このテントの流通量が過去最高を記録したと言うのは、テントの大型化・高額化、ソロキャンプブームによる流通量全体の増加など、様々な要因が挙げられますが、少なくともそれだけ需要が増加している証左と言えます。
逆に、キャンプ人口がピークの半分強と言うことから考えると、1人あたりのテント量は2倍近くになっていることになります。と言うことは、1人(あるいは1家族)あたり、複数のテントを持っているということが想定されます。これだけテント需要が旺盛ということは、キャンパーの多様化と深化(沼化)が進んでいると言え、第2次キャンプブームが1次に比べて質が変わってきていると言えるでしょう。
因みに、私は2021年2月現在、4張持っています(笑)。


私のブログでも、これまで色々とお伝えしてきた通り、にわかキャンパーが増えたことで、騒音、ゴミ、直火など様々な問題が起きています。それによって、直火禁止のキャンプ場が増えたり、閉鎖されるキャンプ場が出たりと、ベテランキャンパーにとっては不愉快な事も発生しています。ただ、こういった問題は、第1次キャンプブームの時も問題になっており、キャンプ人口が増えるとそれに応じて一定量このような問題が発生するのは、ある意味必然でした。
第1次のブームが終息してしまった原因は、マニュアル人間による画一化により文化として定着しなかったことにありますが、一方でマナーの悪い利用者によりキャンプ場が荒れたことも原因と言われています。今回のブームを一過性の物で終わらせず、文化として定着させるためには、キャンパー1人ひとりの心がけが重要だと思います。

まあ、むしろブームが過ぎて、静かで広々としたキャンプ場がいつでも使えるようになる方が、私は有難いのですが・・・アレ!?


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